この記事の結論
この記事で決める3つ
直す順番
数え方より記録
最初に追うもの
合わない品番1か月
棚卸のやり方
定番だけ月1回
目次
  1. なぜ、毎回ちょうど合わないのか
  2. 差は、どこで生まれているか
  3. 合わない品番を1か月だけ追いかける
  4. 出庫をその場で付ける流れにする
  5. 全品を数えない、循環棚卸という手
  6. 動かない在庫と、棚卸表の保存義務
  7. 手書きで合わせてから、システムに乗せる
  8. よくある質問

なぜ、毎回ちょうど合わないのか

棚卸のたびに帳簿の数と棚の現物がずれていて、原因が分からないまま数だけ直して終わる。あなたが在庫の差で時間を取られているなら、まず疑う場所は「数え方」ではありません。数えること自体は、丁寧にやれば誰でも合わせられます。合わないのは、入庫と出庫のあいだで起きた出し入れが、記録に残っていないからです。

整備の現場では、部品はピットで動きます。作業の手を止めずに出庫を1枚ずつ付けるのは、思っているより難しい。だから記録が後回しになり、月末や年末に「棚を数えたら台帳と違う」という形で表に出ます。差を消したいなら、数え直す前に、差がどこで生まれているかを止めにいきます。

整備の仕事そのものは伸びています。日整連の令和6年度調査では、総整備売上高が6兆2,561億円と18年ぶりに6兆円を超えました。入庫が増えるほど部品の出し入れも増え、記録の抜けが差になって積み上がります。売上が動くいまのうちに、在庫の合わせ方を仕組みにしておきます。

差は、どこで生まれているか

在庫差は、多くは次の4か所のどれかで生まれます。自店でどれが多いかを見当づけるために、まず一覧で押さえます。

出どころ 起きていること 差の向き
出庫の付け忘れ 作業で使った部品を、忙しさで記録しないまま取り付けた 台帳が多い(現物が少ない)
記録しない仕入れ 現金や立替で部品商から急ぎ買った分を、入庫に載せていない 現物が多い(台帳が少ない)
戻し入れの抜け 使わずに返した部品を、在庫に戻す処理をしていない 台帳が少ない(現物が多い)
置き場所の崩れ 同じ品番が複数の棚に分かれ、数え漏らす・二度数える どちらにも振れる

4つのうち、整備工場で一番多いのは出庫の付け忘れです。ピットで部品を使った瞬間が、記録から一番遠いからです。次に多いのが、急ぎで買った部品の仕入れ漏れ。お客さんを待たせまいと走って取りに行った分ほど、記録が抜けます。あなたの店で「あるある」と感じた行が、最初に手をつける場所です。

合わない品番を1か月だけ追いかける

4つのうちどれが多いかは、推測では当たりません。年1回の棚卸を待たず、1か月だけ「合わなかった品番」を記録します。やることは少なくて済みます。

用意するのは1枚のメモだけ

棚の見やすい所に紙を1枚貼ります。「合わない、と気づいた品番」「日付」「多いか少ないか」だけを、気づいた人がその場で書きます。原因の追及はしません。事実を拾うだけです。

1か月たったら、出どころで分ける

集まったメモを、上の4つの出どころに振り分けます。台帳が多い差ばかりなら出庫の付け忘れ、現物が多い差ばかりなら仕入れ漏れか戻し入れの抜け、と見当がつきます。

一番多い1つだけを、先に止める

4つ全部を一度に直そうとすると、現場が覚えきれずに元へ戻ります。一番多い出どころを1つ選び、そこだけを止める手を打ちます。1つ止まって差が減るのを現場が見れば、次の手も入りやすくなります。

多くの工場では、この1か月で出庫の付け忘れが頭ひとつ抜けて多いと分かります。その場合に効くのが、次の出庫の付け方です。

出庫をその場で付ける流れにする

出庫の付け忘れを止める方法は、後でまとめて付けるのをやめ、部品を棚から取った場面で付け終える流れに変えることです。あとで付けようとすると、必ず忘れます。場面を記録に近づけます。

急ぎの仕入れこそ、買った人が書く。お客さんを待たせまいと走って買ってきた部品は、記録が一番抜けやすい。買いに行った本人が戻ったその場で入庫に1行書く、を決めておくと、現物が多い側の差が止まります。

全品を数えない、循環棚卸という手

出し入れの記録が残るようになっても、年に1回、棚の全部を一度に数えるやり方のままだと、棚卸の負担は重いままです。そこで、数える対象を分けます。

動きの速い定番部品――オイル、エレメント、ワイパー、バッテリー、よく出る消耗品――だけを、月に1回数えます。これを循環棚卸と呼びます。動きが速い部品は差も出やすいので、月単位で合わせておけば、年末にまとめてずれる事態を防げます。動きの遅い部品は半年に1回でかまいません。

部品の種類 数える頻度 ねらい
定番・消耗品(よく出る) 月1回 差が大きくなる前に止める
一般の補修部品 半年に1回 動きを見ながら数を直す
めったに出ない部品 年1回 動かない在庫の洗い出しを兼ねる

循環棚卸にすると、1回あたりの数える量が減るので、作業の合間や閉店後の短い時間でも回せます。全品棚卸の日に1日仕事が止まる、という負担も軽くなります。年1回の全棚卸は残しますが、月次で合わせてあれば、その日の差はわずかで済みます。

動かない在庫と、棚卸表の保存義務

在庫を合わせていくと、長く動いていない部品が必ず見つかります。半年から1年動いていない部品を、棚卸のたびに別リストへ移し、置き場所を一か所にまとめます。動かない在庫は、棚を圧迫するだけでなく、数え間違いの元にもなります。同じ品番が使う棚と動かない棚に分かれていると、出どころの4つ目「置き場所の崩れ」を自分で増やすことになります。

返品できるものは部品商に相談し、使う見込みのあるものだけを残します。処分や返品をしたら、その記録を残してください。棚卸表は国税関係書類にあたり、原則として作成した事業年度の確定申告期限の翌日から7年間の保存義務があります。減らした分も「いつ、何を、どうしたか」を書き残しておけば、後で在庫の金額を問われても説明がつきます。

手書きで合わせてから、システムに乗せる

「在庫管理システムを入れれば合うのでは」と考えたくなりますが、順番が逆です。システムを入れても、出庫をその場で付ける流れができていなければ、入力が抜けて同じように差が出ます。先に直すのは入力の習慣のほうです。

紙の出庫票でも、置き場所を決めて品番を貼り、使ったらその場で1枚書く流れができていれば、在庫は合います。台数が増えて手書きが追いつかなくなったときに、いま回っている流れをそのまま乗せられるシステムを選びます。選ぶときに確かめるのは、機能の数より次の3点です。出庫を作業の場で1操作で付けられるか、定番だけの循環棚卸ができるか、やめるときに在庫データを取り出せるか。Excelで台帳をつけている段階なら、まずその限界の見分け方から確かめてください。

自店の在庫差、どこから止めるか相談したい

出庫・仕入れ・戻し入れ・置き場所。あなたの店でどの出どころが一番多いか、合わない品番の追い方から一緒に整理します。

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お問い合わせ窓口は近日開設します。

よくある質問

棚卸のたびに在庫が合いません。まず何を直せばいいですか。
差が出る場所はだいたい4つに分かれます。出庫を付け忘れている、現金や立替で部品商から買った分を記録していない、戻し入れた部品を在庫に戻していない、棚の置き場所が決まっておらず数え漏らしている、のどれかです。年に1回の棚卸を待たず、合わなかった品番を1か月だけ追いかけると、自店でどれが一番多いかが見えます。一番多い出どころを1つ止めるだけで、差はかなり減ります。
棚卸の手間を増やさずに在庫を合わせられますか。
在庫が合わないのは数え方ではなく、日々の出し入れが記録に残っていないことが原因です。出庫を作業の場でその都度付ける流れにすれば、棚卸は答え合わせになり、かえって速く終わります。全品を一度に数えるのをやめ、動きの速い定番部品だけを月1回数える循環棚卸に切り替えると、年1回の全棚卸の負担も下げられます。
在庫管理システムを入れないと在庫は合いませんか。
システムを入れても、出庫をその都度付ける流れができていなければ差は出ます。先に直すのは入力の習慣のほうです。紙の出庫票でも、置き場所を決めて品番を貼り、使ったらその場で1枚書く流れができていれば在庫は合います。台数が増えて手書きが追いつかなくなったとき、同じ流れをそのまま乗せられるかでシステムを選びます。
売れ残った部品(デッドストック)はどう扱えばいいですか。
半年から1年動いていない部品を棚卸のときに別リストにして、置き場所を一か所にまとめます。返品できるものは部品商に相談し、使う見込みがあるものだけ残します。動かない在庫は、置き場所を取るだけでなく数え間違いの元にもなります。棚卸表は国税関係書類として原則7年の保存義務があるので、処分した分は記録に残しておきます。
参考(2026-01-28 取得)