- ①損だけ見ない手数料が引かれるのは確かです。ただし判断材料は片側だけではありません。引かれる手数料と、現金管理に毎日かかっている時間を、同じ金額の物差しで並べて比べます。
- ②客単価で効く車検・整備は1台の代金が大きく、現金だと数えと釣り銭、入金の手間がそのぶん重くなります。代金が大きい商売ほど、現金をやめる得も大きくなります。
- ③全額でなくていい現金とキャッシュレスは併用できます。まず使いたいお客さんに対応できる状態にして、現金もこれまで通り受けます。一部から始めて様子を見ます。
- ④入金日を確かめる売上が口座に入るのは数日から1か月後です。仕入れの支払いが先に来る月があるので、契約前に入金の時期を必ず確かめます。
手数料が引かれるのに、なぜ入れる店が増えているのか
「カード払いだと手数料を取られる。現金のほうが店は得だ」。この感覚は半分正しく、半分だけ抜けています。手数料が売上から引かれるのは事実です。それでもキャッシュレスを入れる店が増えているのは、現金にも見えにくい手間がかかっているからです。経済産業省によると、2024年の国内のキャッシュレス決済比率は42.8%まで上がりました。お客さんの財布の中身がカードやスマホに移っている以上、現金だけで回す店は、払い方を選べないことで客を取りこぼします。
あなたの店で判断するときは、手数料という分かりやすい支出だけで決めないことです。現金を扱う手間も、人件費という形でお金が出ています。両方を並べてから、入れるかどうかを決めます。
手数料と現金管理を、同じ物差しで並べる
キャッシュレスを入れるかどうかは、引かれる手数料と、現金管理にかかる時間を、同じ金額の物差しに直して比べると見えてきます。片方だけ見ると、必ず判断を誤ります。
| 比べるもの | 現金だけのとき | キャッシュレスを入れたとき |
|---|---|---|
| 会計のたびの手間 | 釣り銭の用意、数え間違いの確認 | 端末にかざす・差し込むだけ |
| 1日の締め作業 | レジ現金を数えて帳簿と合わせる | 売上は記録に残り、数えが減る |
| 銀行への入金 | 売上を持って窓口やATMへ行く | 口座に自動で振り込まれる |
| かかる費用 | 釣り銭の準備・移動・人件費 | 代金の3%台の手数料 |
たとえばレジ締めと入金で毎日30分使っているなら、月に10時間を超えます。その人件費を金額に直し、手数料の見込み額と並べます。手数料のほうが小さければ、入れたほうが得という判断になります。逆に1日数台で現金管理がほとんど負担になっていない店なら、急いで入れる理由は薄くなります。
車検・整備は客単価が大きいから効く
同じ手数料率でも、商売の客単価によって得かどうかは変わります。自動車店の車検・整備は1台あたりの代金が数万円から十数万円と大きいのが特徴です。代金が大きいほど、現金だと数える札の枚数も、釣り銭の額も、入金で運ぶ金額も増えます。手間のほうも大きくなる、ということです。
手数料は代金に対する割合なので、客単価が大きければ1件の手数料も大きくなります。ここだけ見ると不利に思えます。一方で、高額な現金を店に置く防犯面の不安や、お客さんが「カードで払いたい」と言ったときに断ることで車検を逃す損も、客単価が大きいほど重くなります。代金が大きい商売ほど、手数料の損も現金の手間も両方が膨らみます。だからこそ、片側だけで決めずに両方を並べる必要があります。
少額の消耗品やオイル交換だけの店と、車検・板金まで扱う店では、向き不向きが変わります。自店の1台あたりの平均単価を思い浮かべて、その金額で両方を比べてみてください。
どの決済手段から入れるか
キャッシュレスといっても中身はいくつかに分かれます。自動車店の代金は1件が大きいため、入れる順番には向き不向きがあります。
- クレジットカード――まず外せません。経済産業省の集計でも、金額ベースで国内キャッシュレスの8割以上をカードが占めます。高額な車検代金を分割で払いたいお客さんにも応えられます。
- コード決済――スマホで読み取る支払いです。若い世代や、追加の部品代といった少額のときに使われます。カードに次いで足すかを考える手段です。
- 電子マネー――交通系やプリペイド型です。少額は速いものの、車検のような高額には上限で向かない場合があります。優先度は下がります。
複数の手段を1台の端末でまとめて扱えるものを選ぶと、入金の管理が1本にまとまり、事務の確認が楽になります。手段ごとに端末や入金日がばらばらだと、月末の突き合わせがかえって増えます。
入金が後になる、その間のお金をどう見るか
現金商売との一番の違いは、その場で手元に現金が入らない点です。キャッシュレスは、売上が口座に振り込まれるまでに数日から1か月の差があります。これを知らずに入れると、仕入れの支払いが先に来る月に手元のお金が薄くなります。
契約の前に、入金がいつになるかを必ず確かめます。週に1回入るものもあれば、月にまとめて1回のものもあります。入金が早いほど手元は楽ですが、そのぶん手数料がやや高い設定のこともあります。手数料率だけでなく入金日もあわせて比べて、自店のお金の回り方に合うほうを選びます。
確かめる順番
①手数料率は何%か ②入金は何日後・月に何回か ③端末の費用や月額はかかるか ④やめるときの縛りや違約金はあるか。この4つを、声をかける数社に同じ質問で聞くと、横並びで比べられます。
全額でなく、一部から始める
キャッシュレスを入れる=現金をやめる、ではありません。現金とキャッシュレスは併用できます。まずは支払いたいお客さんに応えられる状態にして、現金もこれまで通り受けます。いきなり全部を切り替える必要はありません。
最初の1〜2か月は、車検・整備の高額会計だけキャッシュレスを案内する、といった一部からの導入で様子を見ます。どのくらいの割合のお客さんが使うか、レジ締めがどれだけ減ったかを、実際の数字で確かめてから広げます。紙とExcelをやめる進め方と同じで、小さく試して手応えを確かめてから次へ進むほうが、現場にも無理がありません。
払い方を選べる店は、お客さんにとって入りやすい店です。手数料という分かりやすい支出に引きずられず、現金の手間と客単価の大きさまで含めて、自店にとって得かどうかを決めてください。
自店だと手数料と手間、どちらが大きいか相談したい
1台あたりの平均単価とレジ締めの時間から、キャッシュレスが得になる線を一緒に見積もります。自店の数字に合わせて相談を受け付けます。
相談する(準備中)お問い合わせ窓口は近日開設します。
よくある質問
- 経済産業省「2024年のキャッシュレス決済比率を算出しました」(比率42.8%・クレジットカードが金額ベースの82.9%)
https://www.meti.go.jp/press/2024/03/20250331005/20250331005.html - 経済産業省「キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会」(加盟店手数料はおおむね3%台との指摘)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/cashless/index.html