この記事の結論
この記事で決める3つ
残す場所
店で1か所に
書く項目
最低4項目に固定
道具
紙で始めるか
目次
  1. 電話が「あの人頼み」になると、何が起きるか
  2. 最初に決めるのは、残す場所をひとつにすること
  3. 電話のメモに書く、最低4項目
  4. 紙の共有ノートか、検索できる仕組みか
  5. 1か月で習慣にする、現場での回し方
  6. 残した記録を、車検や見積につなげる
  7. よくある質問

電話が「あの人頼み」になると、何が起きるか

ベテランが1日休んだだけで、前日の電話の用件がまるごと分からなくなる。あなたの店でこれが起きているなら、直すのは人ではなく用件の残し方です。電話を受けた人の手帳と頭の中にだけ用件があり、店として1か所に集まっていない。これが属人化の中身です。

整備の現場は人手が足りません。フォーバルが2024年に行った調査では、自動車整備の事業者のうち71.8%が人手不足と答え、49.7%が後継者が決まっていないと答えています。一人に電話が集中する形は、その一人が休んだ日や辞めた後に、店の弱点になります。電話を残す仕組みは、ベテランの仕事を取り上げるためではなく、ベテランがいない時間帯でも店が回るために作ります。

もう一つ起きるのが、折り返しの抜けです。「車検の見積を出してほしい」「部品が入ったら連絡がほしい」という用件を受けた人が忙しさで忘れると、お客さんは連絡を待ち続け、やがて別の店に頼みます。電話が取れない時にお客さんがどう動くかを調べた他業種の参考データでは、つながらなかった経験のある人のうち約3割が予約そのものをやめ、約2割は電話をやめてネットで予約に切り替えています。受けた電話を取りこぼすと、整備1件ぶんの売上を逃します。

最初に決めるのは、残す場所をひとつにすること

道具を選ぶ前に、残す場所を店で1か所に決めます。ここを先に固めないと、ある人は手帳、ある人はカレンダーの隅、ある人は記憶、と散ったままになり、結局どこを見れば用件が分かるのかが定まりません。場所が散っていること自体が、属人化の原因です。

1か所と決めたら、電話のすぐそばに置きます。受けながら手が届く位置にないと、後で書こうとして忘れます。場所の候補は、まずこの3つで考えます。

候補1: 紙の共有ノート

受付の電話の横に1冊だけ置き、全員がそこに書きます。今日からゼロ円で始められて、書き方さえ決めれば抜けが減ります。弱点は、過去の用件を名前や車両で探しにくいこと。

候補2: 共有のスプレッドシート

パソコンやタブレットで開く1枚の表に、全員が行を足していきます。名前や日付で並べ替えや検索ができ、外出先からも見られます。弱点は、電話を受けながら入力する手間が紙より少し増えること。

候補3: 顧客・整備の管理システム

すでに整備や車検の管理システムを使っているなら、お客さんごとの履歴に電話の用件もぶら下げられます。車両や前回の整備と一緒に見られるのが強みです。弱点は、入力の流れが店に合うかを確かめる必要があること。

どれを選んでも、属人化はまず減ります。今すぐ手を打ちたいなら候補1の紙から始め、過去を探したい・外でも見たいという欲が出てきたら候補2か3へ移すのが、戻りにくい順番です。

電話のメモに書く、最低4項目

場所を決めたら、次は何を書くかを固定します。項目が人によって違うと、結局その人にしか分からないメモになります。残すのは次の4項目です。これより多いと忙しい日に書かれなくなり、これより少ないと次の人が動けません。

項目 書く中身 抜けると起きること
受けた日時 月日と時刻(「3/14 10:20」でよい) いつの話か分からず、折り返しの優先順位がつかない
相手 名前・電話番号・車両(ナンバーや車種) 誰からか分かっても、かけ直せない/車が特定できない
用件と折り返し 何を頼まれたか+折り返しが要るか不要か 「電話あり」だけが残り、こちらから動くべきか分からない
受けた人 対応した自分の名前 中身を確かめたい時に、誰に聞けばいいか分からない

実務で多い抜けは、名前だけ書いて電話番号が落ちる、折り返しの要否が書かれない、用件が「電話があった」で終わる、の3つです。この4項目を埋める前提で書けば、受けた本人がその場にいなくても、別の人が次の一手を打てます。ここで属人化はほどけます。

折り返しの要否は、丸を付けるだけにする。「折り返し 要 / 不要」と印刷しておき、どちらかに丸を付ける形にすると、忙しくても書き漏らしません。文章で書かせると、急いでいる日ほど飛ばされます。

紙の共有ノートか、検索できる仕組みか

4項目を残すだけなら、紙の共有ノートで十分です。費用はかからず、今日から始められます。一方で、紙のままでは効きにくくなる場面もはっきりしています。次のどれかに心当たりがあれば、検索できる共有の仕組みへ移す合図です。

移すといっても、いきなり高機能なものを入れる必要はありません。すでにある共有のスプレッドシートに4項目の列を作るだけでも、検索と並べ替えはできます。整備や車検の管理システムを使っているなら、その顧客履歴に電話の用件も足すと、車両や前回の作業と並べて見られます。道具を増やすより、いま店にある仕組みの中に電話の用件をまとめられないかを先に考えると、入力の手間が増えにくくなります。

1か月で習慣にする、現場での回し方

仕組みは、置いただけでは続きません。受けた電話を必ず残す習慣になるまで、1か月だけ区切って回します。区切ると、合わなかった時に書き方を直せます。

1週目: 全員が同じ1か所に書く

場所と4項目を決めたら、その週は「受けたら必ずここに書く」だけを徹底します。書き方の上手下手は問わず、まず全員が同じ場所に残すことを体に入れます。

2〜3週目: 朝に折り返しを確認する

朝の始業時に、前日と当日朝の記録を見て、折り返しが「要」のものを片づけます。誰の電話でも、その日の担当者がまとめて確認すれば、ベテランがいない日でも漏れません。

4週目: 続けるか、書き方を直すか決める

1か月使って、折り返しの抜けが減ったかを見ます。減っていれば続けます。書かれない項目があるなら、その項目が多すぎるか、置き場所が遠いかのどちらかなので、そこだけ直します。

習慣になる手前で多いつまずきが、ベテランが「自分は覚えているから」と書かない場面です。残すのは本人のためではなく、本人がいない時間帯のためだと、はじめに用途を共有しておくと、書く意味が伝わります。

残した記録を、車検や見積につなげる

電話の用件を残し始めると、その記録は折り返しのためだけでなく、次の商売の入口にもなります。「車検の時期を相談したい」という電話を残しておけば、満了日が近づいた時にこちらから案内でき、他店へ流れる前に声をかけられます。「見積がほしい」という用件を残せば、出した見積の返事待ちが宙に浮かずに済みます。

こうして電話の記録は、受付や見積、車検の期限管理とつながります。紙の台帳やばらばらの管理をひとつずつ仕組みに移していく流れと、電話を残す動きは根っこが同じです。最初の1か所として電話の用件を残すことから始めて、効きめを感じたら受付や請求へと広げていけば、店の業務全体が「あの人頼み」から離れていきます。

自店の電話の残し方、何から変えるか相談したい

紙の共有ノートで十分か、検索できる仕組みへ移すべきか。自店の電話の量と人数に合わせて、相談を受け付けます。

相談する(準備中)

お問い合わせ窓口は近日開設します。

よくある質問

電話の内容を残す仕組みは、何から作ればいいですか。
残す場所をひとつに決めることから始めます。担当者の手帳や個人の記憶に散っている状態が属人化の正体なので、店で1か所に集める場所を先に決めます。紙の共有ノートでも、共有のスプレッドシートでも、専用アプリでもかまいません。場所さえ決まれば、あとは書く項目を4つに絞って習慣にするだけです。
電話のメモに最低限、何を書けばいいですか。
受けた日時、相手(名前と電話番号と車両)、用件と折り返しの要否、受けた人の名前の4つです。実務では、名前だけ書いて電話番号が抜ける、折り返しが要るのか分からない、用件が「電話あり」だけ、といった抜けがよく起きます。この4つが埋まっていれば、受けた本人がいなくても次の人が動けます。
ベテランが電話に出れば早いので、わざわざ残す意味はありますか。
その人が休んだ日や辞めた後に、店から用件が消えます。整備の現場は人手不足が続いていて、一人に電話が集中する形は、その一人が抜けた瞬間に弱点になります。残す仕組みは、ベテランの仕事を奪うためではなく、ベテランがいない時間帯でも店が回るために作ります。
紙のノートとアプリ、どちらで始めるべきですか。
今すぐ始めるなら紙の共有ノートで十分です。書く項目を4つに固定して、電話のそばに置くだけで属人化は減ります。ただし、過去の用件を名前や車両で探したい、外出先のスタッフにも見せたい、車検や見積の管理ともつなげたい、という場面が出てきたら、検索できる共有の仕組みのほうが向いています。
参考(2026-06-04 取得)