- 足すものいまの請求書を作り直す必要はありません。①登録番号(Tで始まる13桁)②適用税率③税率ごとの消費税額――この3つを足せば、整備の請求書はおおむねインボイスの形になります。
- 端数1円未満の端数は、1枚につき税率ごとに1回だけ処理します。点検・部品・工賃を1行ずつ切り捨てて足す書き方は、いまは認められません。
- 迷う所登録のない外注先への支払い、個人からの下取り車。この2つだけは扱いが変わるので、先に決めておくと月末に慌てません。
いまの請求書、どこが足りていないか
「インボイス対応」と聞くと、請求書をゼロから作り直す話に身構えます。実際は、あなたの店がこれまで使ってきた車検・整備の請求書に3つの欄を足せばおおむね足ります。国税庁が示す適格請求書の記載事項は、これまでの請求書に次の3点を加えたものです。
- 登録番号――Tで始まる13桁。インボイス発行事業者の登録を受けると税務署から通知される番号です。店名の近くに刷り込みます。
- 適用した税率――整備料金は10%なので、ほとんどの請求書は「10%」の1本で済みます。
- 税率ごとに分けた消費税額――「10%対象 ○○円、消費税 ○○円」という形で、税抜の合計と消費税額を分けて載せます。
登録は2025年も続いていて、適格請求書発行事業者の登録件数は2023年12月末で約427万件にのぼります。あなたの取引先の多くも、すでにこの番号を持っています。番号の真偽は、国税庁の公表サイトで相手の登録番号を入れれば確かめられます。仕事を出す相手が登録しているかどうかは、後で出てくる外注先の話に関わります。
端数処理を1つに決める
請求書の欄をそろえたら、次は1円未満の端数です。ここは手書きやExcelの店ほどつまずきます。適格請求書では、1枚の請求書につき、税率ごとに1回だけ端数処理をすると決まっています。点検料・部品代・工賃を1行ずつ計算して、行ごとに端数を切り捨て、その合計を消費税額として載せる――この書き方は認められません。
整備の請求書は10%の1税率なので、やることは単純です。税抜の金額を全部足してから、その合計に10%を掛けます。そこで出た1円未満を、切り捨てか四捨五入のどちらかに決めて、1回だけ処理します。下の2つを見比べると、同じ明細でも消費税額が変わるのが分かります。
| 計算のしかた | 処理の回数 | 適格請求書として |
|---|---|---|
| 明細1行ごとに10%を掛けて端数処理し、合計する | 行の数だけ(5行なら5回) | 認められない |
| 税抜の合計に10%を掛けて、最後に1回だけ端数処理する | 税率ごとに1回 | 正しい |
切り捨て・切り上げ・四捨五入のどれを使うかは、店が自由に選べます。大事なのは、選んだやり方を全部の請求書でそろえることです。請求書ソフトを使っているなら、設定画面で端数処理の方法を1度選べば、以降は自動でそろいます。手書きやExcelで続けるなら、計算式を「合計してから10%」の順に組み直しておきます。
登録していない外注先への支払い
ここからが、整備工場で実際に迷う所です。鈑金や塗装、電装の一部を外の工場や個人に出している店は多いはずです。その外注先が登録していないと、あなたが払った代金に含まれる消費税は、原則として仕入税額控除に使えません。つまり、その分だけ自店が納める消費税が増えます。
ただし、制度の開始から当面のあいだは、登録のない相手への支払いでも、その消費税額の一定割合を引ける経過措置があります。割合は段階的に下がっていく仕組みです。今すぐ取引を切る必要はありませんが、よく使う外注先が登録しているかどうかは、一度まとめて確かめておく価値があります。
確かめる手順
外注先の請求書や領収書に、Tで始まる13桁の登録番号が入っているかをまず見ます。入っていなければ、相手に登録しているか直接聞くか、国税庁の公表サイトで相手の名称から探します。登録していない相手が何社かあるなら、支払額の大きい順に並べて、影響の大きい所から相談します。
下取り車と中古車の仕入れ
車を売る店なら、下取りや買い取りで個人のお客さんから中古車を仕入れます。個人のお客さんは事業者ではないので、インボイスを出せません。これをそのままにすると、仕入れた中古車のぶんの消費税が引けなくなり、利幅が削られます。
この場面のために、古物商の許可を受けた事業者が消費者から中古品を買い取る場合は、相手のインボイスがなくても、一定の事項を記した帳簿を残せば仕入税額控除が認められる仕組みがあります。下取り伝票にお客さんの氏名・住所、車種、買取額を残し、帳簿に「古物商特例」と分かる形で記録しておけば対応できます。中古車を扱うなら、ここは経理担当と早めに段取りを決めておきます。
自分が2割特例を使えるか
ここまでは「請求書を出す側・受け取る側」の話でした。最後に、あなた自身が免税事業者からインボイスのために課税事業者になった場合です。売上が小さく、もともと消費税を納めていなかった店が、取引のために登録したケースが当てはまります。
この場合、納める消費税を売上の消費税額の2割でよいとする2割特例が使えます。事前の届出はいらず、消費税の申告のたびに使うかどうかを選べます。適用できるのは、2023年10月1日から2026年9月30日までの日が入る各課税期間です。期限のある軽減措置なので、自店が対象になるなら、いつまで使えるかを顧問の税理士と確かめておきます。なお基準期間の課税売上高が1千万円を超える店などは対象外です。
自店のインボイス対応、どこから手をつけるか相談したい
請求書の欄・端数の決め方・外注先の確認。自店の請求の流れに合わせて、どこから整えると楽かを相談を受け付けます。
相談する(準備中)お問い合わせ窓口は近日開設します。
月末までにやることの順番
全部を一度にやろうとすると手が止まります。次の順で1つずつ片づけると、月末の請求に間に合います。
1. 自店の請求書に3つの欄が入っているか確かめる
登録番号・適用税率・税率ごとの消費税額。直近の請求書を1枚見れば判定できます。足りなければ、ソフトの設定か様式の手直しで足します。
2. 端数処理を「合計してから1回」に直す
ソフトなら設定で選び、手書き・Excelなら計算の順番を組み直します。どの処理法を使うかを決めて、全部の請求書でそろえます。
3. 外注先と下取りの扱いを決めておく
よく使う外注先の登録の有無を確かめ、中古車を扱うなら古物商特例の帳簿の付け方を経理と固めます。ここは月末の前に1度だけ決めれば、後は流せます。
請求書の欄をそろえて、端数を1回にして、外注と下取りの扱いを決める。この3つが片づけば、あなたの店のインボイス対応はおおむね回ります。見積から請求への転記を手作業でやっているなら、ここで請求のしかたを電子に寄せておくと、登録番号も端数も自動でそろい、毎月の手直しが消えます。
よくある質問
- 国税庁「インボイス制度について」(適格請求書の記載事項・端数処理)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_about.htm - 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(記載事項・端数処理・古物商特例)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-09.pdf - 国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm - 国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト」(登録番号の確認・登録件数 2023年12月末 約427万件)
https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/