- 問題はカードでなく集計タイムカードを押すこと自体は問題ありません。毎月、押した時刻を電卓で拾い直す手集計に半日かかる、そこが直す所です。
- 記録は義務始業と終業の時刻を客観的な方法で残すことは、2019年4月から事業主に求められています。残業代の計算と未払いの判断も、この記録が土台になります。
- 入れる順番まず打刻と集計だけを電子にします。給与ソフトとの連携は後から足します。外回りがある店は、据え置き機より手元で打てる方式を確かめます。
毎月の集計に半日かかる、その正体
給与の締め日が来るたびに、あなたは整備士のタイムカードを一枚ずつ並べ、出勤と退勤の時刻を電卓で拾い、残業の分を足していく。1人ぶんで数分でも、人数が増えれば半日が消えます。整備の事業場は全国で約9万2千あり、1事業場あたりの整備要員は平均4.35人と、小さな店が中心です。小さい店ほど、この集計を事務のあなたが1人で抱えています。
手集計の何がしんどいかというと、計算そのものより「拾い直す」ところです。カードの数字を目で追って書き写し、深夜や休日の割増を別に数え、打刻もれがあれば本人に確認して直す。この往復が毎月発生します。打刻と同時に時間が積み上がる仕組みにすれば、月末にまとめて拾う作業がまるごと消えます。勤怠の電子化で最初に効くのは、この一点です。
なぜ客観的な記録でないとまずいのか
電子化が効くのは、手間が減るからだけではありません。始業と終業の時刻を客観的な方法で把握することは、2019年4月から労働安全衛生法で事業主に求められています。客観的な方法とは、タイムカードやパソコンの使用記録のように、後から書き換えにくい記録を指します。
逆に弱いのは、手書きの出勤簿や、本人がExcelに自己申告で打ち込む方式です。あとから直せてしまうため、客観的な記録として認められにくくなります。「うちは紙の出勤簿で回している」という店は、回っているように見えて、記録の土台が弱いままです。打刻機やパソコンで時刻が自動的に残る形にしておけば、この土台が固まります。
| 記録のしかた | 客観的な記録としての強さ | 集計の手間 |
|---|---|---|
| 手書きの出勤簿 | 弱い(後から直せる) | 大(全部を手で拾う) |
| 本人がExcelに自己申告 | 弱い(後から直せる) | 中(式は組めるが入力は手作業) |
| 紙のタイムカード | 強い(押した時刻が残る) | 大(毎月、目で拾い直す) |
| 電子の打刻(カード・スマホ等) | 強い(時刻が自動で残る) | 小(押すと同時に積み上がる) |
残業の上限と賃金の時効、記録がないと困る場面
記録が弱いと、後で具体的に困ります。中身は2つです。1つは残業の上限、もう1つは賃金の時効です。
残業には上限があります。時間外労働は原則として1か月45時間、1年360時間までで、中小企業にも2020年4月から適用されています。繁忙期にこの線を超えていないかは、月のあいだに残業時間が見えていないと判断できません。手集計だと、超えたと気づくのは集計し終えた締め日のあとです。電子化して途中で残業時間が見える状態にしておけば、超えそうな整備士に早く手を打てます。
もう1つが時効です。残業代などの賃金を請求できる期間は、2020年4月から当面のあいだ3年に延びました。賃金台帳の保存も同じく当面3年です。仮に「残業代が足りない」と過去にさかのぼって問われたとき、正しい勤怠の記録が残っているかどうかで話が変わります。客観的な記録は、こうした場面であなたと店を守ります。
打刻の方式を、自店の働き方から選ぶ
電子化と一口に言っても、打刻の方式はいくつかあります。多機能なものを選ぶより、自店の働き方に合う打刻ができるかで決めると外しません。整備の現場で分かれ目になるのは、外に出る仕事があるかどうかです。
- 工場に出社して打つだけか――出社して退社する働き方が中心なら、据え置きの打刻機やパソコンでの打刻で足ります。場所が決まっているので、打ち忘れも少なく済みます。
- 外回りや直行直帰があるか――出張車検の引き取り、代車の配送、複数拠点をまたぐ働き方があるなら、スマホから打てる方式が向いています。据え置き機だけだと外に出た日の記録が抜けて、結局あとで手直しが要ります。
- シフトや変則勤務があるか――早番と遅番、土日の交代制があるなら、勤務の区分ごとに集計が分かれる仕組みかを確かめます。区分を後から手で分け直すと、電子化の効きめが半分になります。
どこから電子にするか、入れる順番
勤怠と給与をいっぺんにつなごうとすると、設定が重くて止まります。先に全部をそろえず、効きめの大きい所から順に入れます。
1段目: 打刻と集計を電子にする
まずは打刻と、その自動集計だけを入れます。ここだけで、毎月の拾い直しが消えます。最初の効きめがいちばん大きいのもこの段です。給与ソフトとの連携は、まだ考えなくてかまいません。
2段目: 残業と休暇の管理をのせる
集計が安定したら、残業時間が途中で見える設定と、有給の残り日数の管理を足します。上限に近づいた整備士に早めに声をかけられるようになります。
3段目: 給与計算とつなぐ
勤怠の数字が固まってから、給与ソフトへ渡す連携を入れます。順番を逆にして先に連携から組むと、勤怠側がぐらついたまま給与に流れて、かえって確認が増えます。
この順番で進めるのは、紙とExcelをやめるときの考え方と同じです。一度に全部を替えず、1段ずつ「これは楽になった」を確かめてから次へ進みます。勤怠はそのなかでも、効きめが見えやすく、始めやすい入口です。
1か月だけ試して、続けるか決める
無料やお試しの期間があるなら、本番の1か月で使い切ります。デモ画面を眺めるだけでは、自店の打刻のクセは分かりません。区切って試すと、合わなかったときに引き返せます。
試すあいだに確かめるのは3つです。打刻が全員ぶん抜けずに残るか、月末の集計が本当に短くなったか、シフトや割増の区分が自店の数え方と合っているか。この3つが満たせていれば続けます。どれかが引っかかるなら、自店の働き方に合っていないので、別の方式に替えます。ここで合わないものを無理に続けると、整備士に「電子化は面倒」という見方が残ります。最初の1か月で見切るほうが、現場にしこりを残しません。
自店の勤怠、どの方式が合うか相談したい
外回りの有無や人数によって、向く打刻の方式は変わります。自店の働き方に合わせて、どこから電子にするか相談を受け付けます。
相談する(準備中)お問い合わせ窓口は近日開設します。
よくある質問
- 厚生労働省「働き方改革関連法解説(労働安全衛生法/産業医・産業保健機能の強化関係)」(労働時間の状況の把握=労働安全衛生法第66条の8の3・労働安全衛生規則第52条の7の3第1項、2019年4月1日施行。タイムカード等の客観的な方法で把握・記録3年保存)
https://www.mhlw.go.jp/content/000497962.pdf - 厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」(原則 月45時間・年360時間、中小は2020年4月適用)
https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf - 厚生労働省「未払賃金が請求できる期間などが延長されています」(賃金請求権・賃金台帳の保存が当面3年)
https://www.mhlw.go.jp/content/000617974.pdf - 日本自動車整備振興会連合会「令和6年度 自動車特定整備業実態調査結果の概要」(事業場92,384・1事業場あたり整備要員4.35人)
https://www.jaspa.or.jp/Portals/0/resources/jaspahp/member/data/pdf/R06jittaityousa.pdf