- 事実2025年7月8日から、点検整備記録簿は電子保存が認められました。スマホやSDカードへの記録、紙をスキャンした保存も可。紙のまま続けても問題ありません。
- 判断電子に移して効くのは、①同じ車を何度も探している ②担当者しか前回整備を知らない、のどちらかが起きている場合です。1人で台帳を見るだけなら急ぎません。
- 外さない移しても記載事項と保存年数(1年点検は2年・3か月点検は1年)は変わりません。媒体を変えるだけで、残す中身は同じです。
- 始め方過去ぶんは一気にスキャンしない。これから作る記録簿を電子にし、よく問い合わせが来る直近1〜2年だけ先に取り込みます。
2025年7月、記録簿の電子保存が認められた
「あのお客さんの前回の整備、いつ何をしたか」を紙の棚から探して、半日つぶれる。整備主任として、これが毎週のように起きているなら、選び方が一つ増えました。国土交通省は2025年7月8日に整備事業規制を見直し、その中で点検整備記録簿の電子的な保存を認めました。これまで紙で備え置くことになっていた記録簿を、電子で残してよくなったということです。
大事なのは、紙をやめさせる改正ではない点です。電子保存も選べるようになっただけで、紙のまま続けても法令上の問題はありません。だからこそ、あなたが「移すか、続けるか」を選べます。この記事では、その判断をどう決めるか、移すなら何を満たせばいいかを順に見ていきます。
紙のまま続けるか、電子に移すか
電子化そのものが目的ではありません。いま現場で痛い所が消えるかどうかで決めます。次の2つのうち、自店で起きていることが多いほど、移す効きめが大きくなります。
痛み1: 同じ車の履歴を、何度も探している
車検や定期点検で来た車について、前回いつ何を交換したかを紙のファイルや別のExcelから探す。1台あたりの探す時間が積み上がっているなら、車検証番号や顧客名で呼び出せる電子のほうが効きます。
痛み2: 担当した整備士しか、前回の中身を知らない
記録簿が個人のファイルや手控えに散っていて、担当者が休むと前回整備の答えが出せない。履歴を一か所に集めて全員が見られるようにすると、誰が窓口でもお客さんに答えられます。
逆に、扱う台数が少なく、あなた1人が台帳を見て回せているなら、急いで移す必要はありません。電子化は「探す時間」と「共有のしにくさ」を消す手段なので、その痛みが小さい店では、紙のままでも回ります。下の表で、自店がどちらに近いかを当てはめてください。
| 自店の状況 | 紙のまま | 電子に移す |
|---|---|---|
| 履歴を探す回数 | 週に数回まで | 毎日のように探している |
| 記録簿を見る人 | ほぼ自分1人 | 複数のスタッフで共有したい |
| 入力する場所 | 事務所の机で完結 | 工場・出先でも記録したい |
| 過去履歴の問い合わせ | めったに来ない | 前回整備をよく聞かれる |
右側に当てはまる行が多いほど、電子に移したときに楽になります。1行も当てはまらないなら、今すぐ動く話ではありません。流行で動かず、自店で起きている手間の量で決めます。
電子にしても外せない、記載事項と保存年数
媒体を紙から電子に変えても、記録簿として残す中身は変わりません。電子にすれば年数が短くなる、項目が減る、という話ではない点を先に押さえてください。ここを誤解すると、せっかく移しても法令を満たさない記録簿になります。
保存年数は自動車点検基準で決まっていて、定期点検の周期によって分かれます。電子でも紙でも、この年数は同じです。
| 点検の周期 | 主な対象 | 記録簿の保存年数 |
|---|---|---|
| 3か月・6か月点検 | 事業用車など(短い周期の点検対象車) | 1年 |
| 1年点検 | 自家用乗用車など(1年周期の点検対象車) | 2年 |
残す項目も、紙のときと同じです。点検した年月日と走行距離、点検の結果と整備の概要、整備をした事業場の名称といった、記録簿に求められる記載事項を電子でも満たします。データの形だけ整っていて中身が抜けていると、紙より探しにくいうえに記録としても弱くなります。
電子で残すやり方と、それぞれの向き不向き
電子保存といっても、やり方は一通りではありません。今回の見直しでは、外部メディアに記録する方法と、紙をスキャンして残す方法が認められています。自店の規模と、いま一番直したい痛みで選びます。
- 整備管理システムに直接入力する――受付や見積とつながり、車両ごとに履歴がたまります。台数が多く、複数人で共有したい店に向きます。入力の手間が増えないかを、お試し期間に実車で確かめます。
- スマホやSDカードなど外部メディアに記録する――専用システムまでは要らないが、紙はやめたい店向き。記載事項が抜けないよう、入力の型を決めておくのが前提になります。
- 紙の記録簿をスキャンして電磁的記録で残す――今のやり方を大きく変えずに、探しやすさだけ先に上げたい店向き。車検証番号などで検索できるよう、ファイル名の付け方をそろえます。
3つは段階で考えても問題ありません。まずスキャンで探しやすさを上げ、台数や共有の必要が増えたらシステム入力へ進む、という順でも、保存年数と記載事項さえ満たしていれば法令上は同じ記録簿として扱えます。
今ある紙をどうするか、移す順番
移すと決めたとき、つまずきやすいのが「過去の紙を全部スキャンしなければ」と思い込むことです。これをやると作業量が膨らんで、繁忙期に止まります。順番を分けて、止まらないようにします。
1: これから作る記録簿を電子にする
今日から発行する記録簿を電子で残します。新しいぶんから切り替えれば、過去のスキャンを待たずに、その日から記録は整っていきます。
2: よく聞かれる直近1〜2年だけ取り込む
過去ぶんは全部ではなく、問い合わせの多い直近1〜2年から取り込みます。ここが検索できるだけで、日々の「前回いつだっけ」がすぐ減ります。
3: 古い紙は保存年数が切れる順に減らす
残りの紙は、保存年数(1年または2年)が切れたものから順に整理します。慌てて全部をデータにせず、期限を目安に在庫を減らしていきます。
この順なら、今日から記録が整い始め、過去ぶんは必要な所だけを取り込めます。一気にやろうとして手が止まるより、新しいぶんから確実に積み上げるほうが、結局は早く片づきます。
記録簿の次に、つながる工程
記録簿を電子にすると、その手前にある受付や見積の書き写しも気になってきます。受付票に記入した車両や走行距離を、記録簿にもう一度書いているなら、そこは一度の入力で済ませられる工程です。記録簿だけを切り離して考えるより、受付から請求までの流れの中で、二度書きが多い所から順に手をつけるほうが効きます。
記録簿の電子化は、その流れの入口にしやすい工程です。前回整備をすぐ出せるようになれば、見積や次回案内の根拠もその場でそろいます。どこから手をつけるかを店全体で見直すなら、関連記事の進め方も合わせて読んでみてください。
自店は紙のままか、電子に移すか
履歴を探す回数や共有の必要に当てはめて、移す効きめが大きいかを一緒に切り分けます。移すなら、記載事項と保存年数を外さない確認も含めて相談を受け付けます。
相談する(準備中)お問い合わせ窓口は近日開設します。
よくある質問
- 国土交通省 物流・自動車局 自動車整備課「これからも自動車を安心・安全に使用できる社会に向けて ~時代に合わせた整備事業規制のアップデート~」(令和7年7月8日。点検整備記録簿の電子保存解禁を含む7項目の見直し)
https://www.taspa.or.jp/wp-content/uploads/2025/07/seibijigyokisei.pdf - e-Gov 法令検索「自動車点検基準」(点検整備記録簿の記載事項・保存期間の根拠)
https://laws.e-gov.go.jp/law/326M50000800070 - 国土交通省「点検整備の種類」(定期点検の周期と対象)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha/tenkenseibi/tenken/t1/t1-2/