この記事の結論
この記事で決める3つ
移す単位
直近の来店分から
最初に固めるもの
入れる項目の表
捨てる判断
保存年数で決める
目次
  1. 「全件を移す」から始めると、途中で止まる
  2. 先に決めるのは、入れる項目の表
  3. どの順で移すか ― 来店の新しい順に
  4. 古い紙台帳は、保存年数で捨て方を分ける
  5. 移行のあいだ、顧客の情報をどう守るか
  6. 休まず回す、移行の2週間の進め方
  7. よくある質問

「全件を移す」から始めると、途中で止まる

「これを機に、過去のお客さん全部をシステムに入れよう」。そう決めて入力を始めた数日後、車検の予約が立て込んで手が止まる。紙台帳からの移行で、あなたが一番つまずきやすいのがここです。何百件もの台帳を頭から打ち込む作業は、毎日の受付や電話のあいだに差し込む形になり、繁忙期に入ると後回しになります。入力の途中で止まると、新しいデータは紙にもシステムにも散らばり、どちらが正しいか分からなくなります。

移行は「全件を一気に」ではなく、項目を絞り、来店の新しい順に小さく移すと止まりにくくなります。順番を決めておけば、途中で手を離しても続きから再開できます。次の章から、何を先に決め、どの順で移し、古い紙をどう捨てるかを順に見ていきます。

先に決めるのは、入れる項目の表

入力を始める前に決めるのは「新しいシステムに、どの項目を入れるか」です。紙台帳には長年の書き込みが積もっていて、全部を移そうとすると、もう使わない欄まで埋める作業で時間が消えます。毎日の仕事で実際に引くのはどの情報か、そこから逆に選びます。

項目の種類 移すか
連絡と本人 氏名・電話・住所 移す(案内に毎回使う)
車両 車名・登録番号・車台番号・初度登録 移す(車検期限の計算に要る)
期限 車検満了日・次回点検の目安 移す(案内の抜けを防ぐ核)
来店の記録 直近の整備内容・入庫日 直近分だけ移す
古いメモ 何年も前の作業の覚え書き 移さない(紙のまま残す)

表の形を先に固めると、入力する人が迷わなくなり、抜けや表記の揺れが減ります。とくに車検満了日は、案内の抜けが整備の取りこぼしに直結する核の情報です。電子車検証になってからは満了日が券面ではなくICタグの中に入ったので、システムに日付を持たせておく意味はむしろ大きくなっています。

どの順で移すか ― 来店の新しい順に

項目が決まったら、次はどのお客さんから移すかです。並べる軸は「来店の新しさ」にします。次に来店する見込みが高い人ほど、システムに入れた直後から案内に使えるためです。

1: 直近1〜2年に来店した分

次の車検や点検が近い人です。ここを先に移すと、移行の途中でも案内がシステムから出せるようになり、二重管理の期間を短くできます。件数も全体の一部に収まるので、入力が現実的な量になります。

2: 残りは、来店したときに移す

しばらく来ていない人は、まとめて打たずに、次に来店した受付のときに1件ずつ入れます。来ない人のために何百件も打つより、来た人だけ確実に移すほうが、ムダな入力が出ません。

3: それでも残る古い分は、紙で照会できる状態に

何年も動きのない台帳は、無理に移さず、必要なときに引ける形で保管します。年度ごとに箱を分けて、表紙に範囲を書いておくと、問い合わせがあっても探せます。

この順で進めると、移行の早い段階から「システムだけ見れば次の案内が出せる」状態に近づきます。全件を均等に打つやり方より、手が空いた時間を、次に案内が要る人から先に使えます。

古い紙台帳は、保存年数で捨て方を分ける

移し終わると、机を占めていた紙の束を片づけたくなります。ただ、すぐ捨てられない書類があります。捨てる前に、保存年数が法律で決まっているものを分けます。

書類 保存の目安 根拠
点検整備記録簿(自家用乗用車) 2年 道路運送車両法・自動車点検基準
点検整備記録簿(事業用・重い自家用など) 1年 同上
電子で受け取った請求書・領収書など 原則7年・電子のまま 電子帳簿保存法(国税庁)

点検整備記録簿は、自家用乗用車などで2年、事業用や大型の自家用車などで1年の保存が求められます。会計まわりの書類は別の年数で動きます。2024年1月以降、メールの添付やサイトのダウンロードで電子的に受け取った請求書・領収書は、紙に印刷した控えではなく電子のまま、原則7年残す扱いになりました。データをシステムに移しても、保存年数が残っている書類は、期限が来るまで元のまま残します。

「移したから捨てていい」とは限りません。システムへ入力した情報と、法律で保存が求められる書類は別物です。記録簿の現物や、電子で受け取った請求データは、年数を確認してから処分します。

移行のあいだ、顧客の情報をどう守るか

移行作業では、お客さんの氏名・連絡先・車両を一覧の形でまとめて扱います。これは個人情報です。個人情報保護法は、扱う人数の多い少ないにかかわらず事業者を対象にしていて、2015年の改正で5,000人以下の小さな事業者も外れなくなりました。もしこの一覧が外に漏れると、個人情報保護委員会への報告や、本人への連絡が必要になる場合があります。移行のときこそ、データが一覧でまとまるぶん、置き場所をはっきりさせておきます。

新しいシステムを選ぶときは、あなたのデータを後から取り出せるかも見ておきます。顧客や整備履歴をCSVなどで吐き出せれば、別のシステムへ移したくなったときに、また紙からやり直さずにすみます。システムの選び方そのものは、関連記事で詳しく見ます。

休まず回す、移行の2週間の進め方

段取りが決まったら、期間を2週間に区切って動きます。区切ると、終わりが見えて手が動きます。

1〜3日目: 表を固めて、5件で試す

入れる項目の表を決め、まず直近のお客さん5件だけ入力します。打ってみて初めて、足りない欄や要らない欄が分かります。ここで表を直してから、本数を増やします。

4〜10日目: 直近1〜2年分を、毎日少しずつ

1日に何件と決めて、受付の合間に進めます。一気に終わらせようとせず、毎日同じ量を積むほうが、繁忙日でも止まりません。入力した分は、紙台帳に印をつけて重複を防ぎます。

11〜14日目: 案内をシステムから出してみる

移した分で、車検の案内を1回システムから出してみます。実際に案内が出れば、移行が現場で役に立つのが分かります。残りの古い分は、来店時に移す運用へ切り替えます。

2週間で全件が片づくわけではありません。それでも、次に来店する人の情報はシステムに乗り、案内の抜けが減ります。残りは来店のたびに少しずつ移せばよく、繁忙期に作業ごと止まることもありません。

自店のデータ移行、どこから手をつけるか相談したい

紙台帳の件数や、いま使っている表の作りに合わせて、移す順番と捨て方の段取りづくりを相談として受け付けます。

相談する(準備中)

お問い合わせ窓口は近日開設します。

よくある質問

顧客データの移行は、何から始めればいいですか。
最初に「新しいシステムに入れる項目」を決めてから移します。氏名・連絡先・車両・車検満了日のように、毎日使う項目に絞って表の形を固めると、入力の手戻りが減ります。全項目をいきなり移そうとすると、使わない欄まで埋める作業で止まります。
古い紙台帳は、移行が終わったら捨てていいですか。
すぐには捨てられない書類があります。点検整備記録簿は、自家用乗用車で2年、事業用などで1年の保存が道路運送車両法で求められます。電子帳簿保存法では、メールやサイトで電子的にやり取りした請求書などは原則7年、電子のまま保存します。保存年数が残っている書類は、移行後も期限が来るまで残します。
全件をいっぺんに移したほうが早いですか。
全件を一度に移すと、入力中の数週間は紙とシステムの二重管理になり、繁忙期に手が止まります。先に直近1〜2年に来店した分だけ移し、それ以外は来店したときに移す方法だと、二重管理の期間を短くできます。
移行のあいだ、お客さんの情報の扱いで気をつけることはありますか。
氏名・連絡先・車両は個人情報です。個人情報保護法は5,000人以下の事業者も対象で、漏えいすると個人情報保護委員会への報告や本人への連絡が必要になる場合があります。移行作業のデータを誰のパソコンに置くか、外部の人に頼むなら何を渡すかを先に決めておきます。
参考(2026年6月4日 取得)