- 先に決める移す前に「新しいシステムに入れる項目」を絞る。氏名・連絡先・車両・車検満了日のような、毎日使う列だけ先に固める。
- 移す順番全件を一度に移さず、直近1〜2年に来店した分から移す。それ以外は来店したときに移すと、二重管理の期間が短くなる。
- 捨てる前に確認整備記録簿は自家用乗用車で2年、事業用などで1年の保存が必要。電子で受け取った請求書などは原則7年。期限の残る紙は移行後も残す。
- 守ること氏名・連絡先・車両は個人情報。作業データの置き場所と、外注するなら渡す範囲を先に決める。
「全件を移す」から始めると、途中で止まる
「これを機に、過去のお客さん全部をシステムに入れよう」。そう決めて入力を始めた数日後、車検の予約が立て込んで手が止まる。紙台帳からの移行で、あなたが一番つまずきやすいのがここです。何百件もの台帳を頭から打ち込む作業は、毎日の受付や電話のあいだに差し込む形になり、繁忙期に入ると後回しになります。入力の途中で止まると、新しいデータは紙にもシステムにも散らばり、どちらが正しいか分からなくなります。
移行は「全件を一気に」ではなく、項目を絞り、来店の新しい順に小さく移すと止まりにくくなります。順番を決めておけば、途中で手を離しても続きから再開できます。次の章から、何を先に決め、どの順で移し、古い紙をどう捨てるかを順に見ていきます。
先に決めるのは、入れる項目の表
入力を始める前に決めるのは「新しいシステムに、どの項目を入れるか」です。紙台帳には長年の書き込みが積もっていて、全部を移そうとすると、もう使わない欄まで埋める作業で時間が消えます。毎日の仕事で実際に引くのはどの情報か、そこから逆に選びます。
| 項目の種類 | 例 | 移すか |
|---|---|---|
| 連絡と本人 | 氏名・電話・住所 | 移す(案内に毎回使う) |
| 車両 | 車名・登録番号・車台番号・初度登録 | 移す(車検期限の計算に要る) |
| 期限 | 車検満了日・次回点検の目安 | 移す(案内の抜けを防ぐ核) |
| 来店の記録 | 直近の整備内容・入庫日 | 直近分だけ移す |
| 古いメモ | 何年も前の作業の覚え書き | 移さない(紙のまま残す) |
表の形を先に固めると、入力する人が迷わなくなり、抜けや表記の揺れが減ります。とくに車検満了日は、案内の抜けが整備の取りこぼしに直結する核の情報です。電子車検証になってからは満了日が券面ではなくICタグの中に入ったので、システムに日付を持たせておく意味はむしろ大きくなっています。
どの順で移すか ― 来店の新しい順に
項目が決まったら、次はどのお客さんから移すかです。並べる軸は「来店の新しさ」にします。次に来店する見込みが高い人ほど、システムに入れた直後から案内に使えるためです。
1: 直近1〜2年に来店した分
次の車検や点検が近い人です。ここを先に移すと、移行の途中でも案内がシステムから出せるようになり、二重管理の期間を短くできます。件数も全体の一部に収まるので、入力が現実的な量になります。
2: 残りは、来店したときに移す
しばらく来ていない人は、まとめて打たずに、次に来店した受付のときに1件ずつ入れます。来ない人のために何百件も打つより、来た人だけ確実に移すほうが、ムダな入力が出ません。
3: それでも残る古い分は、紙で照会できる状態に
何年も動きのない台帳は、無理に移さず、必要なときに引ける形で保管します。年度ごとに箱を分けて、表紙に範囲を書いておくと、問い合わせがあっても探せます。
この順で進めると、移行の早い段階から「システムだけ見れば次の案内が出せる」状態に近づきます。全件を均等に打つやり方より、手が空いた時間を、次に案内が要る人から先に使えます。
古い紙台帳は、保存年数で捨て方を分ける
移し終わると、机を占めていた紙の束を片づけたくなります。ただ、すぐ捨てられない書類があります。捨てる前に、保存年数が法律で決まっているものを分けます。
| 書類 | 保存の目安 | 根拠 |
|---|---|---|
| 点検整備記録簿(自家用乗用車) | 2年 | 道路運送車両法・自動車点検基準 |
| 点検整備記録簿(事業用・重い自家用など) | 1年 | 同上 |
| 電子で受け取った請求書・領収書など | 原則7年・電子のまま | 電子帳簿保存法(国税庁) |
点検整備記録簿は、自家用乗用車などで2年、事業用や大型の自家用車などで1年の保存が求められます。会計まわりの書類は別の年数で動きます。2024年1月以降、メールの添付やサイトのダウンロードで電子的に受け取った請求書・領収書は、紙に印刷した控えではなく電子のまま、原則7年残す扱いになりました。データをシステムに移しても、保存年数が残っている書類は、期限が来るまで元のまま残します。
移行のあいだ、顧客の情報をどう守るか
移行作業では、お客さんの氏名・連絡先・車両を一覧の形でまとめて扱います。これは個人情報です。個人情報保護法は、扱う人数の多い少ないにかかわらず事業者を対象にしていて、2015年の改正で5,000人以下の小さな事業者も外れなくなりました。もしこの一覧が外に漏れると、個人情報保護委員会への報告や、本人への連絡が必要になる場合があります。移行のときこそ、データが一覧でまとまるぶん、置き場所をはっきりさせておきます。
- 作業用のデータを、どのパソコンに置くか先に決める――個人の私物ではなく、店の機器1台に集める。終わったら作業用のコピーは消す。
- 外の業者に入力を頼むなら、渡す範囲を絞る――電話番号や住所まで渡す必要があるか、車両と期限だけで足りないかを確かめる。
- 移行が終わったあとの紙台帳も、鍵のかかる場所に置く――保存年数で残す書類こそ、人目に触れない所にまとめる。
新しいシステムを選ぶときは、あなたのデータを後から取り出せるかも見ておきます。顧客や整備履歴をCSVなどで吐き出せれば、別のシステムへ移したくなったときに、また紙からやり直さずにすみます。システムの選び方そのものは、関連記事で詳しく見ます。
休まず回す、移行の2週間の進め方
段取りが決まったら、期間を2週間に区切って動きます。区切ると、終わりが見えて手が動きます。
1〜3日目: 表を固めて、5件で試す
入れる項目の表を決め、まず直近のお客さん5件だけ入力します。打ってみて初めて、足りない欄や要らない欄が分かります。ここで表を直してから、本数を増やします。
4〜10日目: 直近1〜2年分を、毎日少しずつ
1日に何件と決めて、受付の合間に進めます。一気に終わらせようとせず、毎日同じ量を積むほうが、繁忙日でも止まりません。入力した分は、紙台帳に印をつけて重複を防ぎます。
11〜14日目: 案内をシステムから出してみる
移した分で、車検の案内を1回システムから出してみます。実際に案内が出れば、移行が現場で役に立つのが分かります。残りの古い分は、来店時に移す運用へ切り替えます。
2週間で全件が片づくわけではありません。それでも、次に来店する人の情報はシステムに乗り、案内の抜けが減ります。残りは来店のたびに少しずつ移せばよく、繁忙期に作業ごと止まることもありません。
自店のデータ移行、どこから手をつけるか相談したい
紙台帳の件数や、いま使っている表の作りに合わせて、移す順番と捨て方の段取りづくりを相談として受け付けます。
相談する(準備中)お問い合わせ窓口は近日開設します。
よくある質問
- 国土交通省「点検整備の種類」(点検整備記録簿の保存期間 ― 自家用乗用車2年・事業用等1年の根拠)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha/tenkenseibi/tenken/t1/t1-2/ - 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(電子取引データの保存 ― 2024年1月以降の電子保存・原則7年)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07denshi/index.htm - 個人情報保護委員会「個人情報保護法ガイドライン(通則編)」(5,000人以下の事業者も対象・安全管理措置・漏えい時の報告)
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/