この記事の結論
この記事で決める3つ
最初に置くもの
ボード1枚・3項目
共有する範囲
まず店内から
システムへ移す合図
外・台数・履歴
目次
  1. 進捗が「担当の頭の中」にあると、何が起きるか
  2. ボード1枚から始める、最初の3項目
  3. 入庫から引き渡しまで、段階の分け方
  4. 共有を広げる範囲と、その順番
  5. ボードからシステムへ移す合図
  6. 人手が減る時代に、見える化が効く理由
  7. よくある質問

進捗が「担当の頭の中」にあると、何が起きるか

「あの車、今どうなってる」。あなたの店でも、この一言が一日に何度も飛んでいるはずです。お客さんから電話が入る、フロントが整備士に聞きに行く、整備士が手を止めて答える。一回は短くても、台数と人数のぶんだけ積み上がります。聞いた側もメモを取らなければ、しばらくしてまた同じことを聞きます。

この繰り返しが起きるのは、進捗が紙の作業指示書と担当者の記憶にしか残っていないからです。指示書はピットの車のそばにあり、フロントからは見えません。担当者が昼休みや外出で抜けると、その車の今の位置を誰も即答できなくなります。問い合わせへの返事が遅れ、お客さんは「いつ終わるか分からない店」と感じます。

あなたが決めるのは、この「聞いて答える」をやめて、全員が同じ場所で今の位置を見る形をどう作るか、その共有の範囲をどこまで広げるかです。順に見ていきます。

ボード1枚から始める、最初の3項目

進捗の見える化と聞くと、すぐシステム導入を思い浮かべがちですが、最初の一手はボード1枚で十分です。事務所の壁のホワイトボードでも、全員が開ける共有のスプレッドシートでもかまいません。大事なのは、聞かなくても今の位置が分かる場所が1つできることです。

書く項目は、最初は次の3つだけにします。項目が多いほど書くのが面倒になり、続きません。

この3つがそろうと、フロントは聞きに行かずに答えられ、整備士は手を止めずに済みます。書く手間が増えるように見えますが、これまで口で答えていた時間が消えるので、慣れると差し引きで楽になります。項目を足したくなるのは、まずこの形が定着してからにします。

更新は「動いたら、その場で」を全員のルールにする。朝にまとめて書く運用にすると、昼にはずれて誰も信じなくなります。段階が一つ進んだらその場で動かす。これが守れる粒度だから、項目は3つに絞ります。

入庫から引き渡しまで、段階の分け方

段階をいくつに分けるかは、自店の流れに合わせます。細かすぎると更新が追いつかず、粗すぎると「作業中」のまま何日も動かないように見えます。多くの自動車店では、次の6段階くらいがちょうど追いやすい単位です。

段階 その車がいる状態 つまずきやすい所
受付・入庫 預かったが、まだ着手していない 入庫だけ多くて着手が後回しになる
分解・点検 ばらして不具合を見ている 追加作業の見積もりで一度止まる
部品待ち 部品の入荷を待っている 入荷日が分からず放置されやすい
作業中 整備士が手を動かしている 担当が休むと止まったまま
完成・検査 作業が終わり、最終確認の段階 洗車や書類で引き渡しが延びる
引き渡し 連絡して引き取りを待つ 連絡が遅れて駐車場が埋まる

とくに見える化の効きめが大きいのが「部品待ち」と「完成・引き渡し」です。部品待ちは止まっている理由が見えないと、何日も誰も気にせず放置されます。完成は、終わっているのに連絡が遅れて、お客さんを待たせたまま駐車場を占めることになります。この2段階を一目で拾えるだけで、入庫から引き渡しまでの日数が短くなります。

共有を広げる範囲と、その順番

進捗を誰に見せるかは、いっぺんに広げず段階を踏みます。順番を間違えると、社内で固まっていない情報がそのままお客さんに届きます。

第1段階: 整備士どうし

まず作業する人どうしが同じ位置を見られる状態にします。担当が休んだ日でも、ほかの整備士がボードを見て続きを引き取れます。属人化がいちばん解けるのがこの段階です。

第2段階: フロント・事務

次に、電話やカウンターで応対する人が同じボードを見られるようにします。問い合わせに即答でき、聞きに行く往復が消えます。多くの店では、ここまでで日々のやり取りはほぼ片づきます。

第3段階: お客さん

最後に、進捗をお客さんに見せる形を考えます。完成連絡を自動で送る、専用ページで今の段階を見せる、といった手です。ただし社内で位置がそろっていないうちに外向けを足すと、ずれた情報が届いて逆に信頼を損ねます。第2段階までが安定してからにします。

あなたの店が今どこで詰まっているかで、力を入れる段階は変わります。担当しか分からない状態がつらいなら第1段階、問い合わせ対応に追われるなら第2段階から、はっきり効果が出ます。

ボードからシステムへ移す合図

ボードで回るうちは、ボードのままでかまいません。お金をかけてシステムに移すかどうかは、次のような場面が出てきたかで決めます。出ていないなら、まだ早いという判断です。

このうち「履歴とつなげたい」は、進捗の見える化と整備記録の電子化が地続きであることを示しています。進捗ボードと記録簿を別々に持つと、同じ車の情報を二か所に書くことになります。システムに移すなら、進捗・記録・顧客台帳が一つにつながる形を選ぶと、書く回数そのものが減ります。選ぶときの基準は、いまの仕事の順番に合うか、入力の手間が増えないか、やめるときに自分のデータを取り出せるかの3点です。

人手が減る時代に、見える化が効く理由

進捗の見える化を後回しにできない背景に、整備士の不足があります。厚生労働省の職業情報(jobtag)によると、令和6年度の自動車整備士の有効求人倍率は5.45倍で、全職業平均の1.25倍の約4.4倍にのぼります。整備士の数も、日整連(日本自動車整備振興会連合会)の実態調査でみると、平成28年度の約33.5万人(334,655人)から令和3年度の約33.4万人(334,319人)まで、33万人台でほぼ横ばいのまま増えていません。募集をかけても人はすぐには増えません。

人が増えないなら、いる人の動きから無駄を抜くしかありません。「聞いて答える」往復や、止まった車の放置、終わったのに連絡が遅れる引き渡しは、どれも人の時間を食う無駄です。進捗を全員が同じ場所で見られるだけで、この無駄がまとめて減ります。少ない人数で同じ台数をさばくための、いちばん安い一手がボード1枚の見える化です。

そのうえで、電子車検証やOBD検査のように制度がデジタル前提へ動いている流れもあります。車両情報をデジタルで扱う場面が増えるほど、進捗と記録を紙だけで持ち続ける負担は重くなります。まずボードで進捗を見える形にし、台数や履歴の必要が出たらシステムへ。この順で進めれば、人手が減っても回る現場に近づきます。

自店の進捗、どこから見える化するか相談したい

ボードで足りるのか、システムに移す合図が来ているのか。自店の流れと台数に合わせて、最初の一手の相談を受け付けます。

相談する(準備中)

お問い合わせ窓口は近日開設します。

よくある質問

進捗の見える化は、何から始めればいいですか。
いきなりシステムを入れず、ホワイトボードか共有のスプレッドシート1枚から始めるのが続きます。車両ごとに「受付・分解・部品待ち・作業・完成・引き渡し」のどこにいるかを置くだけです。これで「あの車どうなってる」の声が減るかをまず確かめ、減るなら次の手を考えます。
ボードに書く手間が増えて、現場が嫌がりませんか。
書く項目を増やすほど続きません。最初は「車両」「今の段階」「待ち(部品・客の返事)」の3つだけにします。状況を聞かれて口で答えていた時間が消えるので、慣れると書く手間より答える手間のほうが大きかったと気づきます。項目を足すのは定着してからです。
進捗を共有する範囲は、どこまで広げればいいですか。
まず店内の整備士とフロントが同じ位置を見られれば、問い合わせ対応と段取りはほぼ片づきます。お客さんに進捗を見せる仕組みは、その次の段階です。社内で位置がそろわないうちに外向けを足すと、ずれた情報が客に届くので順番を守ります。
ボードとシステムでは、どちらがいいですか。
ピットに全員がいて、ボードを見れば足りるならボードで十分です。外出先や別棟から状況を見たい、入庫台数が増えて書ききれない、整備記録や履歴と進捗をひとつにしたい、という場面が出たらシステムに移します。電子車検証やOBD検査で情報がデジタル前提に動いている点も、移すきっかけになります。
参考(2026年6月17日 取得)