- 外す選び方機能表を並べて多いものを選ぶと、使わない欄の入力が増え、忙しい日に後回しになって、半年で紙に戻る。機能の数では選ばない。
- 選ぶ基準続けられるかは3点で決まる。①今の仕事の順番に合うか ②1台あたりの入力が増えないか ③やめるとき自分のデータを取り出せるか。
- 確かめ方デモ画面を眺めて決めない。お試し期間に、実際の受付を10台ぶん入れて、入力の手間が増えないかを本番の流れで見る。
- 費用と時機月額だけでなく移行と教育の手間も費用に入れる。IT導入補助金は使えるが、補助がなくても続く金額かで判断する。
なぜ機能表で比べると外すのか
あなたが「整備管理システム 選び方」で検索して、各社の機能一覧を並べ始めたとします。受付、見積、整備記録、請求、在庫、顧客台帳、車検期限の案内。どれもできると書いてあって、項目が多いものほど良く見えます。ここで多機能なものを選ぶと、ほとんどは外します。
理由ははっきりしています。機能が多いほど、1台を処理するときに入力する欄や手順が増えます。整備士は手が足りていません。整備士の有効求人倍率は令和6年度で5.45倍、全職業平均の1.25倍に対して4倍以上です。人が足りない現場で入力の手間が増えると、忙しい日に後回しにされます。後回しが続くと記録が抜け、データがそろわなくなり、結局は「今まで通りの紙のほうが速い」となって戻ります。
選ぶときに見るのは、機能の数ではありません。あなたの店がいま回している仕事に、無理なく乗るかどうかです。次の3点で、続けられるかがほぼ決まります。
続けられるかで選ぶ基準
数あるシステムを、この3点だけで絞り込みます。1つでも引っかかったら、機能がどれだけ多くても候補から外します。
基準1: 今の仕事の順番に合うか
あなたの店は、受付→見積→整備→請求の順で回っているはずです。その流れにそのまま乗るかを見ます。先に車両を登録しないと受付に進めない、見積の前に在庫を引き当てる手順が要る、といった具合に流れを大きく変えさせるものは、現場が嫌がって続きません。順番を変えるのではなく、今の順番を速くするものを選びます。
基準2: 1台あたりの入力が増えないか
1台を受け付けてから請求するまでに、紙のときより入力の回数や項目が増えていないかを見ます。受付で入れた名前・車両・連絡先が、見積や請求に自動で引き継がれず、そのつど打ち直しになるものは、二度書きが残っています。入力が増えれば、手の足りない日ほど後回しになります。
基準3: やめるとき自分のデータを取り出せるか
顧客や整備履歴を、後からCSVなどで自分で取り出せるかを、契約前に確認します。取り出せないと、別のシステムに乗り換えにくくなり、値上げや仕様変更にも弱くなります。データはあなたの店の資産です。いつでも持って出られる状態かどうかで、長く付き合えるかが変わります。
3つのうち、どれが一番効くかは店によって違います。複数人で同じ記録を触るなら基準1、繁忙期に手が回らないなら基準2、すでに別のシステムで苦い思いをしたなら基準3を、特に重く見ます。
基準ごとに見る、確かめ方の早見表
3つの基準は、頭で考えるより、商談や試用の場で確かめます。営業の説明をうのみにせず、自分の手で1度動かしてください。下の表で、基準ごとに何を見れば判定できるかが分かります。
| 基準 | 現場で確かめること | 外すサイン |
|---|---|---|
| 今の流れに合うか | 受付から請求まで、自店の順番で1台を通せるか試す | 登録の順番を変えないと先に進めない |
| 入力が増えないか | 受付の入力が見積・請求に引き継がれるか見る | 同じ内容を画面ごとに打ち直す |
| データを取り出せるか | 顧客・整備履歴をCSVで出せるか契約前に確認 | 「解約時のデータ提供は応相談」で明言を避ける |
| 制度に追従するか | 電子車検証の読み取りや電子保存に対応するか確認 | 制度対応が別料金で後出しになる |
制度への追従を表に加えたのは、車検証の電子化やOBD検査のように、整備の現場へ制度のほうが先にデジタルを持ち込んでいるためです。今は要らなくても、近いうちに必要になる対応が標準で入っているかを、合わせて見ておきます。
お試し期間に本当に見るべき所
多くのシステムに無料の試用期間があります。ここでデモ画面を眺めるだけでは、入力の手間は分かりません。試用のあいだに、実際の受付を10台ぶん入れてみてください。自店の流れに合うか、入力が増えていないかが、それではっきりします。
試用が終わる前に、解約したらデータがどう戻るかも確認しておきます。CSVで出せる、出すのに費用がかからない、という2点が取れていれば、合わなかったときに引き返せます。引き返せる安心があると、現場も思い切って本番で使えます。
費用と補助金、どう見積もるか
費用は月額と初期費用だけで見ません。今ある紙やExcelのデータを移す手間、担当者が操作を覚える時間も、立ち上げの費用に入れて考えます。ここを見落とすと、月額は安くても、移行で何週間も現場が止まることがあります。
導入の負担を軽くする手段として、IT導入補助金があります。通常枠では、対象となる経費の最大2分の1が補助されます。補助の上限は、導入する業務プロセスの数によって段階で変わり、扱う工程が多いほど上限も大きくなります。ただし、補助金は公募の時期が決まっていて、申請から交付まで時間がかかります。補助がもらえる前提で高いシステムを選ぶのではなく、補助がなくても払い続けられる金額かどうかを先に決めてください。
- 月額・初期費用に加え、データ移行と教育の手間も費用に入れる。
- IT導入補助金の通常枠は対象経費の最大2分の1。上限は業務プロセスの数で変わる。
- 補助は公募時期があり交付まで時間がかかる。補助なしでも続く金額で選ぶ。
今すぐ替えるか、制度の波から考える
「いつか替えよう」で止まっているなら、制度の動きが判断材料になります。2024年1月から、メールやネットで受け取った請求書や領収書などの電子取引データは、紙に印刷した保存では足りず、電子のまま保存することが全事業者に義務づけられました。これに先立って、車検証は2023年から電子車検証に変わり、満了日は券面ではなくICタグの中に入りました。2024年10月には、新しい車を対象にOBD検査も本格運用が始まっています。
制度のほうがデジタル前提へ動いている以上、紙とExcelのままでは、制度が変わるたびに二度手間が出ます。逆に、顧客と車両の情報を一度きちんとシステムに載せておけば、制度が変わっても入口は変えずに済みます。あなたの店で、複数人が同じ記録を触る場面が増えてきた、車検の期限で取りこぼしを出したくない、と感じているなら、それが替えどきです。選ぶときは、機能の多さではなく、続けられる3つの基準で絞ってください。
自店に合うシステムの絞り方を相談したい
今の仕事の流れに合うか、入力が増えないか、データを取り出せるか。3つの基準を自店の業務に当てはめて、候補の絞り込みを一緒に確かめます。
相談する(準備中)お問い合わせ窓口は近日開設します。
よくある質問
- 厚生労働省 職業情報提供サイト jobtag「自動車整備士」(有効求人倍率令和6年度5.45倍の根拠)
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/197 - 厚生労働省「一般職業紹介状況」(全職業平均の有効求人倍率令和6年度1.25倍の根拠)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_57261.html - 国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」(電子取引データの電子保存が2024年1月に義務化された根拠)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm - 中小企業基盤整備機構「IT導入補助金 通常枠」(補助率 最大2分の1・上限が業務プロセス数で変わる根拠)
https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/normal/ - 国土交通省「自動車の電子的な検査(OBD検査)について」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_OBD.html