Q.同じ車で査定額が数万円ずれるのは、なぜ起きるか

同じ車を店長が見ると85万円、若手が見ると78万円。あなたの店でも、担当者によって査定額が数万円ずれた経験があるはずです。お客さまの前で金額が揺れれば、店の信用に関わります。安すぎれば断られて買い負け、高すぎれば仕入れ値が膨らんで買い過ぎになります。

ずれる原因は、才能や経験の差ではありません。判断の基準が、各担当者の頭の中だけにあるからです。具体的には、参照している相場データがばらばら、車のどこを見るかが人によって違う、傷や装備の加減点が感覚で決まる。この3つが重なると、同じ車でも金額が割れます。基準を頭の外に出し、誰でも同じ手順をたどれる形にすれば、ずれは小さくなります。

Q.全国共通の土台を使う ― 中古自動車査定基準

査定の基準を、ゼロから自店で作る必要はありません。全国共通の土台があります。一般財団法人 日本自動車査定協会(JAAI)が中古自動車査定制度を運営し、全国で共通の査定基準を定めています(出典1)。

この基準は、標準的な状態を起点に、車の状態に応じて加点・減点する加減点方式です。走行距離、内外装の状態、装備、修復歴などを項目ごとに見て、標準からの差を点数で足し引きします。査定の技能を測る中古自動車査定士という資格もあり、小型車査定士と大型車査定士に分かれています。共通の基準とものさしがあるおかげで、査定手順をゼロから作らなくていい。

土台の使い方:共通基準をそのまま社内の評価軸に採り入れ、自店でよく扱う車種に合わせて項目を絞り込みます。すべてを完璧に点数化しなくても、見る場所と足し引きの向きが全員でそろえば、ずれは収まります。

Q.自店の査定手順を4点で揃える

共通基準を土台に、自店の手順を4点で固めます。どれも特別な道具は要りません。1枚の票と、決めごとがあれば始められます。

1. 相場の参照元を1つに固定する

担当者ごとに見る相場が違えば、出発点からずれます。参照する相場データを店として1つに決め、全員が同じものを見ます。オークションの過去落札相場と店頭の販売相場のどちらを基準にするかも、店として揃えます。仕入れ全体の相場のつかみ方は オートオークションでの仕入れ でも扱っています。

2. チェック項目を1枚の票に統一する

走行距離、修復歴の有無、内外装の状態、主な装備、需要の高い色や仕様。見るべき場所を1枚の査定票に並べ、全員がこの票を埋めます。票があれば、見落としが減り、人による着眼点の差もなくなります。

3. 加減点の幅を表にして共有する

「目立つ傷はいくら引くか」「人気装備はいくら足すか」を、おおよその幅で表にします。1円単位で決める必要はありません。幅で共有するだけで、感覚だけの加減点が大きく外れることを防げます。

4. 一定額を超えたら上長が確認する

金額の最終判断を担当者だけに委ねないラインを引きます。たとえば査定額が一定額を超える車は、提示前に上長が票を確認する。この一手間が、若手の買い過ぎと、判断に迷ったときの買い負けの両方を止めます。

Q.買い過ぎと買い負けの線を引く

査定額が揃っても、その金額がそもそも適切かは別の問題です。買い過ぎは仕入れ値を膨らませ、在庫として現金を縛ります。買い負けはお客さまを他店に逃がします。両方を防ぐには、査定額の上に2本の線を引きます。

  • 上限の線 ― 自店で売れる想定価格から、整備・販売の費用と目標粗利を引いた額。これを超えて買うと、売っても利益が残りにくくなります。
  • 下限の線 ― 相場から大きく下回る額。ここを下回る提示は、よほどの理由がなければ買い負けにつながります。

買い取った車はそのまま在庫になります。査定の精度が甘いと、ここで生まれた高値掴みが売れ残りに変わります。買い取り後の在庫がどう店の現金を削るかは 中古車の在庫が回らない店の数字の見方 を参照してください。査定・仕入れ・在庫は1本の線でつながっています。

Q.買い取るときの義務 ― 本人確認と帳簿

査定の次の買い取りには、古物営業法の義務がかかります。仕組みを整えるなら、ここも手順に組み込みます。

買い取りの際は、相手方の住所・氏名などを確認する義務があります(古物営業法 第15条)。また、取引のつど、品目・特徴・相手方などを帳簿に記録する義務があります(同 第16条)。帳簿は最終の記載から3年間、営業所に備え付けます(出典2)。査定票と買い取りの記録をひとつながりで残す運用にすれば、この義務を満たしつつ、後から「あの査定は適切だったか」を結果と照らして検証できます。

記録は仕組みの最後のかなめ:査定票を残さないと、ばらつきがどこで起きたかを後から確かめられません。法律上の義務を満たすことと、自店の査定の精度を上げることは、記録を残すという同じ一手でつながります。

Q.今月やること

査定票を1枚作るところから始めます。順番はこのとおりです。

今月の手順

やることいつ狙い
参照する相場データを店として1つに決める今週査定の出発点を全員でそろえる
チェック項目を並べた査定票を1枚作る今週見る場所の差をなくす
主な傷・装備の加減点の幅を表にする今月前半感覚だけの足し引きを防ぐ
上長確認のラインを金額で決める今月前半買い過ぎ・買い負けを止める
同じ車を2人で査定し、ずれ幅を測る今月中票の効きを数字で確かめる

最後の手順がかなめです。票を使う前と後で、同じ車を2人が査定したときのずれ幅がどれだけ小さくなったかを測ります。小さくなっていれば仕組みが効いています。残ったずれは、票の項目や加減点の幅を直す手がかりになります。これを数か月続けると、誰が査定しても近い金額に収まる店になります。

Q.よくある質問

同じ車なのに担当者で査定額がずれるのはなぜですか
判断の基準が各担当者の頭の中にあり、外に出ていないからです。参照する相場データがばらばら、状態の見方が人によって違う、加減点が感覚で決まる。この3つが重なると、同じ車でも数万円の差が出ます。基準を紙やアプリの上に出し、誰が見ても同じ手順をたどれるようにすると差は小さくなります。
査定を揃えるのに使える共通の基準はありますか
日本自動車査定協会(JAAI)が中古自動車査定制度を運営し、全国共通の査定基準を定めています。標準的な状態を基準に、状態に応じて加点・減点する加減点方式です。中古自動車査定士という技能検定の資格もあります。この共通基準を自店の査定手順の土台にすると、社内の評価のものさしがそろいます。
車を買い取るとき、何か記録の義務はありますか
古物営業法で、買い取りの際に相手方の住所・氏名などを確認する義務(第15条)と、取引のつど品目・特徴・相手方などを帳簿に記録する義務(第16条)があります。帳簿は最終の記載から3年間、営業所に備え付けます。査定と買い取りの記録を残す運用は、この義務を満たすことにもつながります。

出典

  1. 中古自動車査定制度・査定基準(加減点方式)・中古自動車査定士 ― 一般財団法人 日本自動車査定協会(JAAI)http://www.jaai.or.jp/(取得日 2026-06-02)
  2. 買い取り時の確認義務(第15条)・帳簿の記録義務と3年間の備付け(第16条)― e-Gov 法令検索「古物営業法」https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000108(取得日 2026-06-02)
査定基準の細目(項目ごとの加減点)は査定協会の定める基準・細則によります。本記事は社内で査定を揃える進め方を示すもので、点数の具体値は各車種・各会員の基準に従ってください。古物営業法の条項は記事公開時点の内容です。
編集部より

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