Q.1つの経路に頼ると、なぜ仕入れが苦しくなるか

あなたの店は今、何台のうち何台をオークションで仕入れているでしょうか。多くの店は「とりあえずオークション」で在庫を揃えます。会場に行けば台数は揃い、相場も読みやすい。手っ取り早い経路です。ただ、ここに頼り切ると、相場が動いたときに店の原価がまるごと影響を受けます。

オークションは他店も同じ会場で同じ相場を見て競ります。良い車ほど札が集まり、落札価格は上がります。1台ごとに会場の手数料と陸送費も乗ります。つまりオークションは「原価が下がりにくい経路」です。ここ一本で在庫を組むと、市況が上がった分だけ自店の原価も上がり、販売価格に転嫁できなければ粗利が削られます。

仕入れ経路を決めるとは、どこか1つを選ぶことではありません。複数の経路に在庫の出どころを分け、相場高の影響を受けにくくすることです。オークションを軸にしながら、下取りと直接買取で原価の低い在庫を混ぜる。この配分を意識して組むかどうかで、同じ相場でも残る粗利が変わります。

Q.今のオークション市況を数字で押さえる

配分を考える前に、軸にしているオークションが今どんな状態かを数字で押さえます。感覚で「高い」と言うより、一次データを見たほうが配分の判断が締まります。

USS 成約台数(2024年度)
214.5万台
前年比8.0%増。年度で初めて200万台を超えた(出典1)
USS 成約率(2024年度)
67.0%
前年比2.6ポイント増。11年ぶりに過去最高を更新(出典1)
中古車登録台数(2025年)
363.2万台
前年比0.8%減。自販連まとめ(出典2)
成約車両単価
高値で推移
取引相場は高止まり。2025年は過去最高を更新する月も(出典3)

出品台数が増えても成約率が過去最高まで上がっているのは、出てきた車を業者同士で取り合っているからです。小売り・輸出・リサイクルの各業者が同じ車を欲しがり、競りが活発になっています(出典1)。出品が増えたから安く買える、とはならない市況です。あなたがオークションで原価が下がらないと感じているなら、それは肌感覚ではなく市況そのものです。

読み取り:「台数は出ているのに高い」が今のオークションです。台数があれば仕入れられますが、原価は下がりません。だからこそ、原価の低い下取り・直接買取をどれだけ混ぜられるかが効いてきます。

Q.経路を比べる4つの軸

どの経路を厚くするかは、好みではなく軸で決めます。記事冒頭の表の4つの軸を、もう少し細かく見ます。

①相場の読みやすさ ②原価の低さ

相場の読みやすさは、その経路で買う車の値ごろが事前に分かるかです。オークションと下取りは相場の見える定番車が多く、読みやすい。直接買取は持ち込まれる車しだいで、査定の精度がそのまま読みやすさになります。原価の低さは、同じ車をいくらで手元に置けるかです。下取りと直接買取は競りに巻き込まれないぶん、相場より安く確保できる余地があります。

③手間 ④確保しやすさ

手間は、1台を在庫にするまでの工数です。オークションは会場・下見・陸送が要り、下取りは販売とセット、直接買取は集客と査定が要ります。確保しやすさは、欲しいときに欲しい台数を集められるかです。オークションは台数が多い反面で競合し、下取りは自店の販売台数が上限、直接買取は集客の量で決まります。1つの経路にどれだけ寄せても、この4つのどこかで必ず詰まります。

使い方:4つの軸に「◎○△」ではなく自店の数字を入れます。下取りなら月の販売台数、直接買取なら査定依頼の件数、オークションなら直近の落札手数料と陸送費。数字が入ると、どの経路をあと何台分増やせるかが見えてきます。

Q.業者オークション ― 軸にするが頼り切らない

オークションは多くの店の主な仕入れ先で、欲しい車種と台数を確保しやすい経路です。会場に出る車には検査員の評価点が付き、相場データも手に入るため、相場が読みやすいのも利点です。在庫の土台をここで作ること自体は理にかなっています。

弱点は、利点の裏側にあります。読みやすく集めやすいということは、他店も同じように読み、同じ車を狙うということです。良い車ほど競りで上がり、手数料と陸送費も乗って、原価が下がりにくい。今の市況では成約率が上がり、その傾向が強まっています。だからオークションは「軸にはするが、ここだけで原価を下げようとしない」経路です。上限価格の決め方と落札の実務は オートオークションでの仕入れ ― 上限価格の決め方と避ける車 で詳しく扱っています。

Q.下取り・直接買取 ― 原価を下げる経路

原価を下げたいなら、競りに巻き込まれない経路を厚くします。下取りと直接買取がこれにあたります。どちらもお客さまから直接車が来るため、オークションの落札手数料も会場までの陸送費もかかりません。

下取り ― 販売の入口がある店の武器

新車や乗り換えの販売がある店は、その場で出る下取り車を在庫にできます。販売とセットで車が手に入るので、手間も追加の費用もほとんどかかりません。販売の入口が太い店ほど、下取りを厚くすると原価の低い在庫が自然に積み上がります。注意点は、販売台数が下取りの上限になることです。販売が薄い月は下取り在庫も薄くなります。

直接買取 ― 集客と査定で台数をつくる

販売の入口が薄い店は、お客さまから直接買い取る経路を太くします。チラシ・看板・ネット査定で買取の問い合わせを増やし、持ち込まれた車を査定して在庫にします。相場より安く確保できる余地はありますが、台数は集客の量しだいで、1台ごとに査定の手間がかかります。そして、下取りも直接買取も前提は同じです。査定がぶれれば、原価が安いはずの経路でも高値掴みになります。誰が査定しても近い金額になる仕組みは 買取査定のばらつきを仕組みで抑える ― 誰がやっても近い金額にする で扱っています。

Q.業販 ― つながりで穴を埋める

4つ目の経路が業販です。同業者から車を融通してもらう、あるいは融通する取引で、業者間のつながりで成り立ちます。オークションほど台数は読めませんが、欲しい車種が会場で取れなかったときや、自店で扱いにくい車を流したいときに穴を埋めます。

原価はオークションと下取りの中間あたりに収まることが多く、相場の読みやすさは相手と車しだいです。安定して台数を確保する主力にはなりにくい一方で、近隣の同業者と関係を作っておくと、相場高で会場の取り合いが激しいときの逃げ道になります。配分の主役ではなく、補う役と位置づけて持っておく経路です。

Q.自店の配分をどう決めるか

4つの経路を見たうえで、自店の配分を決めます。決め手は店の入口です。販売の入口が太いか細いか、買取の集客があるかないかで、厚くすべき経路が変わります。

自店のタイプ厚くする経路狙い
新車・乗り換えの販売が多い下取りを軸に、オークションで補う原価の低い下取り在庫を主力にする
買取の集客がある(チラシ・ネット)直接買取を厚く、オークションは穴埋め競りを避けて原価を下げる
販売も買取も入口が薄いオークション中心+業販で補完まず台数を確保し、入口づくりを並行
特定車種に強い専門店業販・オークションを使い分け得意車種を確実に集める

大切なのは、いまの配分を一度数えてみることです。直近3か月の仕入れを経路ごとに台数で分けると、自店が実はオークションに何割寄っているかが見えます。原価が重いと感じている店ほど、オークションの比率が高いものです。そこから、来月は下取りか直接買取を1台でも増やせないかを考えます。配分の見直しは、入口づくりとセットで少しずつ進めます。

一気に動かさない:原価が重いからといって、いきなりオークションを止めると台数が足りなくなります。配分は「オークションを減らす」のではなく「原価の低い経路を増やして比率を下げる」順で動かします。台数の確保と原価の低下を同時に追うのが、配分見直しのコツです。

Q.来月の仕入れでやること

配分の見直しは、この順で進めます。今月の数字を数えるところから始めます。

仕入れ配分を見直す手順

やることいつ狙い
直近3か月の仕入れを経路ごとに台数で分ける今月中オークションへの偏りを数字で見る
経路ごとに1台あたりの原価を出して比べる今月中どの経路が原価で勝っているか確かめる
下取り・直接買取をあと何台増やせるか見積もる来月の計画時原価の低い在庫の上積み余地を知る
買取の集客(看板・ネット査定)を1つ足す来月直接買取の入口を太くする
近隣の同業者と業販のつながりを1件作る来月会場で取れないときの逃げ道を持つ

配分は一度決めて終わりではありません。販売台数も集客も市況も動くため、四半期ごとに経路別の台数と原価を見直します。原価の低い経路の比率がじわじわ上がっていれば、配分の見直しは効いています。仕入れ経路の選び方は、この数字を重ねた回数で精度が上がります。

Q.よくある質問

中古車の仕入れ経路にはどんな種類がありますか
大きく4つです。業者オークション(会員制の業者間取引)、新車や乗り換えのときの下取り、お客さまから直接買い取る直接買取、同業者から融通してもらう業販です。多くの店はオークションを軸にしながら、下取りと直接買取を組み合わせています。1つに頼り切るのではなく、相場の読みやすさ・原価・手間・確保しやすさの4つで比べて、自店の規模と客層に合う配分を決めます。
オークションだけで仕入れていると何が問題ですか
オークションは出品が増えても取り合いが続き、成約車両単価が高値で推移しています。USSでは2024年度の成約率が67.0%と11年ぶりに過去最高を更新しました。1台ずつ手数料と陸送費が乗り、他店も同じ相場を見て競るため、原価が下がりにくい経路です。下取りや直接買取は手間がかかりますが、相場より安く確保できる余地があり、競りに巻き込まれません。オークション偏重は原価高と仕入れ難の影響を受けやすくなります。
下取りと直接買取はどちらを増やすべきですか
店の入口で決まります。新車や乗り換えの販売がある店は、その場で出る下取り車を在庫にすれば手数料も陸送費もかからず原価が低くなります。販売の入口が薄い店は、買取の集客(チラシ・看板・ネット査定)を増やして直接買取を厚くします。どちらも査定の精度が前提です。査定がぶれると、原価が安いはずの経路でも高値掴みになります。
相場が高い今、仕入れ台数を絞るべきですか
台数を一律に絞るより、経路の配分を変えるほうが効きます。相場が高いのは主にオークションの話で、下取りや直接買取は競りに巻き込まれません。オークションの比率を下げ、原価の低い経路を厚くすれば、台数を保ったまま全体の原価を抑えられます。やみくもに在庫を減らすと、売れる車まで欠けて販売の機会を逃します。

出典

  1. USS 2024年度の中古AA実績(成約台数214万5158台・出品台数320万2002台・成約率67.0%で11年ぶり過去最高)― 一般社団法人 日本自動車会議所https://www.aba-j.or.jp/info/industry/23915/(取得日 2026-06-04)
  2. 2025年の中古車登録台数(自販連まとめ363万2179台・前年比0.8%減)― 一般社団法人 日本自動車販売協会連合会https://www.jada.or.jp/(取得日 2026-06-04)
  3. 2025年中古車登録・届け出は3年ぶりマイナス・取引相場は高値で推移 ― 日本経済新聞https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC152X10V10C26A1000000/(取得日 2026-06-04)
  4. 中古車事業者の約5割が価格高騰でオークションでの仕入れが困難(ナビクル調べ)― 日刊自動車新聞 電子版https://www.netdenjd.com/articles/-/267301(取得日 2026-06-04)
オークションの実績はUSSの公開情報に基づく一般的な市況で、利用する会場の手数料・相場は会場ごとに確認してください。経路別の原価・手間は自店の実数で比べると判断が締まります。
編集部より

仕入れ経路の配分を、自店の数字で組み直したいときは

経路別の台数と原価の出し方や、買取の入口づくりで迷ったら、相談を受け付けます。自店の販売台数と客層に合わせて、続けられる配分を一緒に考えます。

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