Q.1つの経路に頼ると、なぜ仕入れが苦しくなるか
あなたの店は今、何台のうち何台をオークションで仕入れているでしょうか。多くの店は「とりあえずオークション」で在庫を揃えます。会場に行けば台数は揃い、相場も読みやすい。手っ取り早い経路です。ただ、ここに頼り切ると、相場が動いたときに店の原価がまるごと影響を受けます。
オークションは他店も同じ会場で同じ相場を見て競ります。良い車ほど札が集まり、落札価格は上がります。1台ごとに会場の手数料と陸送費も乗ります。つまりオークションは「原価が下がりにくい経路」です。ここ一本で在庫を組むと、市況が上がった分だけ自店の原価も上がり、販売価格に転嫁できなければ粗利が削られます。
仕入れ経路を決めるとは、どこか1つを選ぶことではありません。複数の経路に在庫の出どころを分け、相場高の影響を受けにくくすることです。オークションを軸にしながら、下取りと直接買取で原価の低い在庫を混ぜる。この配分を意識して組むかどうかで、同じ相場でも残る粗利が変わります。
Q.今のオークション市況を数字で押さえる
配分を考える前に、軸にしているオークションが今どんな状態かを数字で押さえます。感覚で「高い」と言うより、一次データを見たほうが配分の判断が締まります。
出品台数が増えても成約率が過去最高まで上がっているのは、出てきた車を業者同士で取り合っているからです。小売り・輸出・リサイクルの各業者が同じ車を欲しがり、競りが活発になっています(出典1)。出品が増えたから安く買える、とはならない市況です。あなたがオークションで原価が下がらないと感じているなら、それは肌感覚ではなく市況そのものです。
Q.経路を比べる4つの軸
どの経路を厚くするかは、好みではなく軸で決めます。記事冒頭の表の4つの軸を、もう少し細かく見ます。
①相場の読みやすさ ②原価の低さ
相場の読みやすさは、その経路で買う車の値ごろが事前に分かるかです。オークションと下取りは相場の見える定番車が多く、読みやすい。直接買取は持ち込まれる車しだいで、査定の精度がそのまま読みやすさになります。原価の低さは、同じ車をいくらで手元に置けるかです。下取りと直接買取は競りに巻き込まれないぶん、相場より安く確保できる余地があります。
③手間 ④確保しやすさ
手間は、1台を在庫にするまでの工数です。オークションは会場・下見・陸送が要り、下取りは販売とセット、直接買取は集客と査定が要ります。確保しやすさは、欲しいときに欲しい台数を集められるかです。オークションは台数が多い反面で競合し、下取りは自店の販売台数が上限、直接買取は集客の量で決まります。1つの経路にどれだけ寄せても、この4つのどこかで必ず詰まります。
Q.業者オークション ― 軸にするが頼り切らない
オークションは多くの店の主な仕入れ先で、欲しい車種と台数を確保しやすい経路です。会場に出る車には検査員の評価点が付き、相場データも手に入るため、相場が読みやすいのも利点です。在庫の土台をここで作ること自体は理にかなっています。
弱点は、利点の裏側にあります。読みやすく集めやすいということは、他店も同じように読み、同じ車を狙うということです。良い車ほど競りで上がり、手数料と陸送費も乗って、原価が下がりにくい。今の市況では成約率が上がり、その傾向が強まっています。だからオークションは「軸にはするが、ここだけで原価を下げようとしない」経路です。上限価格の決め方と落札の実務は オートオークションでの仕入れ ― 上限価格の決め方と避ける車 で詳しく扱っています。
Q.下取り・直接買取 ― 原価を下げる経路
原価を下げたいなら、競りに巻き込まれない経路を厚くします。下取りと直接買取がこれにあたります。どちらもお客さまから直接車が来るため、オークションの落札手数料も会場までの陸送費もかかりません。
下取り ― 販売の入口がある店の武器
新車や乗り換えの販売がある店は、その場で出る下取り車を在庫にできます。販売とセットで車が手に入るので、手間も追加の費用もほとんどかかりません。販売の入口が太い店ほど、下取りを厚くすると原価の低い在庫が自然に積み上がります。注意点は、販売台数が下取りの上限になることです。販売が薄い月は下取り在庫も薄くなります。
直接買取 ― 集客と査定で台数をつくる
販売の入口が薄い店は、お客さまから直接買い取る経路を太くします。チラシ・看板・ネット査定で買取の問い合わせを増やし、持ち込まれた車を査定して在庫にします。相場より安く確保できる余地はありますが、台数は集客の量しだいで、1台ごとに査定の手間がかかります。そして、下取りも直接買取も前提は同じです。査定がぶれれば、原価が安いはずの経路でも高値掴みになります。誰が査定しても近い金額になる仕組みは 買取査定のばらつきを仕組みで抑える ― 誰がやっても近い金額にする で扱っています。
Q.業販 ― つながりで穴を埋める
4つ目の経路が業販です。同業者から車を融通してもらう、あるいは融通する取引で、業者間のつながりで成り立ちます。オークションほど台数は読めませんが、欲しい車種が会場で取れなかったときや、自店で扱いにくい車を流したいときに穴を埋めます。
原価はオークションと下取りの中間あたりに収まることが多く、相場の読みやすさは相手と車しだいです。安定して台数を確保する主力にはなりにくい一方で、近隣の同業者と関係を作っておくと、相場高で会場の取り合いが激しいときの逃げ道になります。配分の主役ではなく、補う役と位置づけて持っておく経路です。
Q.自店の配分をどう決めるか
4つの経路を見たうえで、自店の配分を決めます。決め手は店の入口です。販売の入口が太いか細いか、買取の集客があるかないかで、厚くすべき経路が変わります。
| 自店のタイプ | 厚くする経路 | 狙い |
|---|---|---|
| 新車・乗り換えの販売が多い | 下取りを軸に、オークションで補う | 原価の低い下取り在庫を主力にする |
| 買取の集客がある(チラシ・ネット) | 直接買取を厚く、オークションは穴埋め | 競りを避けて原価を下げる |
| 販売も買取も入口が薄い | オークション中心+業販で補完 | まず台数を確保し、入口づくりを並行 |
| 特定車種に強い専門店 | 業販・オークションを使い分け | 得意車種を確実に集める |
大切なのは、いまの配分を一度数えてみることです。直近3か月の仕入れを経路ごとに台数で分けると、自店が実はオークションに何割寄っているかが見えます。原価が重いと感じている店ほど、オークションの比率が高いものです。そこから、来月は下取りか直接買取を1台でも増やせないかを考えます。配分の見直しは、入口づくりとセットで少しずつ進めます。
Q.来月の仕入れでやること
配分の見直しは、この順で進めます。今月の数字を数えるところから始めます。
仕入れ配分を見直す手順
| やること | いつ | 狙い |
|---|---|---|
| 直近3か月の仕入れを経路ごとに台数で分ける | 今月中 | オークションへの偏りを数字で見る |
| 経路ごとに1台あたりの原価を出して比べる | 今月中 | どの経路が原価で勝っているか確かめる |
| 下取り・直接買取をあと何台増やせるか見積もる | 来月の計画時 | 原価の低い在庫の上積み余地を知る |
| 買取の集客(看板・ネット査定)を1つ足す | 来月 | 直接買取の入口を太くする |
| 近隣の同業者と業販のつながりを1件作る | 来月 | 会場で取れないときの逃げ道を持つ |
配分は一度決めて終わりではありません。販売台数も集客も市況も動くため、四半期ごとに経路別の台数と原価を見直します。原価の低い経路の比率がじわじわ上がっていれば、配分の見直しは効いています。仕入れ経路の選び方は、この数字を重ねた回数で精度が上がります。
Q.よくある質問
出典
- USS 2024年度の中古AA実績(成約台数214万5158台・出品台数320万2002台・成約率67.0%で11年ぶり過去最高)― 一般社団法人 日本自動車会議所https://www.aba-j.or.jp/info/industry/23915/(取得日 2026-06-04)
- 2025年の中古車登録台数(自販連まとめ363万2179台・前年比0.8%減)― 一般社団法人 日本自動車販売協会連合会https://www.jada.or.jp/(取得日 2026-06-04)
- 2025年中古車登録・届け出は3年ぶりマイナス・取引相場は高値で推移 ― 日本経済新聞https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC152X10V10C26A1000000/(取得日 2026-06-04)
- 中古車事業者の約5割が価格高騰でオークションでの仕入れが困難(ナビクル調べ)― 日刊自動車新聞 電子版https://www.netdenjd.com/articles/-/267301(取得日 2026-06-04)
仕入れ経路の配分を、自店の数字で組み直したいときは
経路別の台数と原価の出し方や、買取の入口づくりで迷ったら、相談を受け付けます。自店の販売台数と客層に合わせて、続けられる配分を一緒に考えます。
相談する(準備中) →