Q.なぜ滞留車は見切れず塩漬けになるのか
半年動いていない車を、値下げで損を出して手放すか、もう少し待つか。仕入れたときは売れると踏んだ1台だけに、なかなか踏ん切りがつきません。そう迷っているうちに、また1か月が過ぎます。
見切れないのは、気持ちの問題に見えて、判断の材料が出ていないからです。いつまで持てば持ちすぎなのか、その車が1日にいくら自店の現金を削っているのか。この2つが数字で見えていないと、「もう少し待つ」を選びます。待つほうが、いま値下げで損を確定させるより痛くないと感じるからです。
ところが在庫は、待っている間も静かに価値を落とします。仕入れに使った資金には金利が乗り、展示場と管理には毎日固定費がかかります。さらに相場が動けば再販価格も下がる。動かない1台は、現金を縛りながら毎日目減りしていきます。見切りは損を作る行為ではなく、これ以上の目減りを止める行為です。順番が逆になると、いちばん高く売れた時期を自分で通り過ぎてしまいます。
Q.見切りの基準日を自店の数字で決める
「何日で長期在庫と呼ぶか」に全国一律の正解はありません。立地も客層も車種構成も店ごとに違うからです。基準は、よそから借りるのではなく、あなたの店の過去の実績から1つ決めます。
平均販売日数を出す
直近に売れた車を、仕入れた日から売れた日まで何日かかったかで並べます。その平均が、自店の標準的な売れ足です。多くの車がその日数までに売れているなら、そこを大きく超えた車は明らかに遅れています。目安として平均の2倍を超えたら、見切りの候補に入れます。平均45日の店なら90日、平均60日の店なら120日が候補ラインです。
在庫日数そのものの出し方と、回転を数字で見る考え方は 中古車の在庫が回らない店の数字の見方 でくわしく扱っています。基準日を決める前に、まず自店の在庫日数を出しておくと判断が早くなります。
候補に入れたら「保留」を作らない
基準日を超えた車をリスト化したら、そのまま放置しないことが要点です。1台ごとに「店頭で下げてもう一度売る」「出口へ回す」のどちらかを、その週のうちに決めます。判断を先送りした分だけ、次の表で見る目減りが積み上がります。
Q.1日いくら減るか ― 損切りの計算
見切りをためらうのは、値下げの損が額で見えるのに、待つ損が見えないからです。待つ損を額に直すと、天秤が釣り合います。在庫1台が1日に減らす額は、記事冒頭の表のとおり3つを足して出します。
- 資金の金利 ― 仕入れに使った資金にかかる利息。仕入れ100万円なら、年利ぶんを365日で割った額が1日分です。
- 展示・管理の固定費 ― 展示場の賃料、保険、車を管理する人の手間。月の固定費を在庫台数と日数で割り戻します。
- 相場の値落ち ― 同じ車の再販価格が、時間とともにどれだけ下がるか。相場が動く車種ほど大きくなります。
この3つを足すと、1台が1日にいくら減るかが出ます。表の例では1日約860円。30日待てば約2.6万円、60日なら約5.2万円が、何もしないうちに消えます。いま2万円値を下げて売り切るのと、あと2か月持って売るのと、どちらが手元に多く残るか。額で並べると、見切りの判断は感情ではなく引き算で済みます。
Q.処分の3つの出口と選ぶ順番
見切ると決めた車には、出口が3つあります。店頭での値下げ、業者向けオートオークションへの出品、業者間の卸です。手元に残る額は店頭がいちばん大きく、卸がいちばん小さくなりやすい。だから上から順に検討し、無理なら次へ落とします。
| 出口 | 向いている車 | 手元に残る額 | 現金化までの速さ |
|---|---|---|---|
| 店頭で値下げ | まだ自店の客層に売れる見込みがある | 大きい | 遅い〜中 |
| オークション出品 | 店頭で動かないが市場の需要はある | 中 | 中 |
| 業者間の卸 | 会場でも値が付きにくい・特殊な車 | 小さい | 速い |
まず店頭で、相場まで値を下げて期限を切ります。「あと2週間、この価格で売れなければ会場へ出す」と先に決めておくと、ずるずる店頭に置き続けることを防げます。期限内に動かなければ、迷わずオークションへ回します。会場でも値が付きにくい車や、相場の読めない特殊な車は、付き合いのある業者へ卸して早く現金に換えます。出口の選び方で大事なのは、店頭にこだわって時間を失わないことです。前の表で見たとおり、時間そのものが目減りだからです。
Q.オークションに出すときの下限の置き方
業者向けオートオークションは、滞留車の主要な出口です。会場の規模と需要が大きいぶん、店頭で動かない車も買い手が見つかります。一方で、出せば必ず売れるわけではありません。
大手のUSSでは、2025年度の出品台数350万4,437台に対し、成約は234万7,566台でした。成約率は約67%です(出典1)。つまり3台に1台は、出しても落札されずに戻ります。「会場に出せば片づく」ではなく、「希望価格しだいで戻ってくる」前提で下限を置くのが要点です。
下限の最低希望価格は、店に置き続けた場合の目減りを基準に決めます。あと1か月持てば前の計算で約2.6万円減る車なら、その2.6万円を引いた額までは下げて出す価値があります。戻ってきた車をまた店頭に並べ直すと、出品の手数料と陸送費を払った上で、滞留がさらに延びます。一度出口へ回すと決めたら、現実的な下限で確実に手放します。
Q.滞留を二度と作らない仕入れ側の手
処分はあくまで後始末です。滞留車は出口で減らすより、入口で作らないほうが現金は残ります。同じ車種で何度も塩漬けが起きるなら、仕入れの判断のほうに原因があります。
- 売れた車・残った車を車種ごとに記録する ― どの車が短い日数で売れ、どの車が滞留したかを残します。次の仕入れで、滞留しやすい車を避ける材料になります。
- 仕入れ時に売り先を1つ浮かべる ― 誰に売るか想像できない車は、店頭で動きにくく滞留に回りやすい。売り先が浮かばない車は、安くても見送ります。
- 1台ごとに見切り日を最初に書く ― 仕入れた時点で基準日を台帳に入れておけば、滞留の発見が遅れません。
処分の判断と仕入れの判断は、同じ問題の表と裏です。出口で損切りを繰り返している店は、多くが入口で「売り先の見えない車」を掴んでいます。記録を車種ごとに重ねるほど、掴む車の精度が上がり、処分に回す台数そのものが減っていきます。
Q.この1週間でやること
滞留車を抱えているなら、この順で手を動かします。考える前に、まず数字を出すことから始めます。
滞留車を動かす手順
| やること | いつ | 狙い |
|---|---|---|
| 直近に売れた車から平均販売日数を出す | 今週中 | 自店の見切りの基準日を決める |
| 基準日を超えた在庫を全部リストにする | 今週中 | 塩漬け車をもれなく拾い出す |
| 1台ごとに1日いくら減るか計算する | リスト化後 | 待つ損を額で見える形にする |
| 店頭値下げか出口かを1台ずつ決める | その週内 | 保留を作らず処分に動く |
| 仕入れ台帳に見切り日の欄を足す | 次の仕入れから | 滞留を入口で作らない |
基準日を決め、目減りを額で出す。この2つができれば、見切りはもう感情の問題ではなくなります。あとは決めたルールどおりに動かすだけです。動かした結果を記録に残せば、次の仕入れで掴む車の精度も上がっていきます。
Q.よくある質問
出典
- USS 2025年度のオートオークション実績(出品350万4,437台・成約234万7,566台・成約率67.0%・平均成約単価125万5,000円)― 日本自動車会議所「USSの出品台数、2025年度は4年連続で過去最高」https://www.aba-j.or.jp/info/industry/26434/(取得日 2026-06-04)
- 2025年の中古車年間取引台数 約648万台・前年比0.2%減(3年ぶりの前年割れ)― 自販連・全軽自協データに基づく中古車市場統計レポート 2025年12月(車選びドットコム)https://www.kurumaerabi.co.jp/useful-details/34477/(取得日 2026-06-04)
- 中古車登録台数の月次統計 ― 日本自動車販売協会連合会(自販連)「中古車登録台数」https://www.jada.or.jp/data/month/m-usedcar-sales/(取得日 2026-06-04)
見切りの基準日と損切りの計算を、店の仕組みにしたいときは
平均販売日数の出し方や、1日あたりの目減りの計算、出口の選び方で迷ったら、相談を受け付けます。自店の在庫構成と資金の事情に合わせて、続けられる形を一緒に考えます。
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