項目を増やすほど、台帳はすたれていく
あなたの台帳には、いま何列ありますか。家族構成、勤務先、趣味、過去の値引き額まで欄を作ったものの、半分が空欄のまま埋まらない。心当たりがあるなら、項目を足しすぎています。欄が多いほど良い台帳になる、という思い込みが、いちばん台帳をすたれさせます。
欄が増えると、入力する人の手が止まります。受付で会計をしながら20列を埋めるのは無理なので、すぐ書ける2〜3列だけ埋めて、あとは空欄で放置されます。すると、見るたびに穴だらけの台帳になり、誰も信用しなくなって更新が止まります。大事なのは項目の多さではなく、次にいつ・誰へ声をかけるかが台帳から引けることです。日本の保有台数は約8,277万台(令和8年3月末・82,775,321台)、乗用車の平均車齢は9.44年まで伸びています(出典:自動車検査登録情報協会)。1台が長く乗られるほど、車検・点検という再来店の機会は何度も巡ってきます。その機会を逃さない最低限だけを台帳に残します。
残すか消すかは「次の案内が打てるか」で決める
項目を決めるとき、業種の手本やシステムの入力欄をそのまま写そうとすると、自店に要らない欄まで抱え込みます。決め方はもっと単純で、欄ごとに一つだけ問います。「この欄があると、次の案内が一本打てるか」。これに「打てる」と答えられる欄だけ残します。
次回車検日は、これで「打てる」になります。満了の2か月前に案内を出すと決めれば、この欄から送る相手と時期が出るからです。電話番号も、案内を届けるために要ります。一方で、客の趣味の欄は、あると話のきっかけにはなっても、それ単独で案内のはがき1枚を出す根拠にはなりません。だから後回しにします。判断軸を「あると便利か」にすると欄は無限に増えるので、「案内が打てるか」に固定します。
必ず持つ8項目 ― 車・人・動きの3つで持つ
「案内が打てるか」で残すと、必ず持つのは8項目に落ち着きます。バラバラに並べると抜けるので、車・人・動きの3つのかたまりで持ちます。
| かたまり | 項目 | これで打てる案内 |
|---|---|---|
| 車(軸) | 次回車検日/車種・年式/ナンバー | 満了2か月前の車検案内、年式に合う点検の提案 |
| 人 | 氏名/電話/連絡してよい手段 | 誰へ、どの手段(電話・はがき・LINE)で届けるか |
| 動き | 前回整備/案内した日 | 次に出そうな整備の声かけ、二重案内・出し忘れの防止 |
軸は車です。1人が2台3台持つ、名義は妻で乗るのは夫、買い替えで車が変わる、が自動車店では日常的に起きます。人を軸にすると次の車検日がぶれるので、車を軸にして持ち主を結びつけます。こうすると、次回車検日でまっすぐ並べ替えられて、案内の取りこぼしが減ります。
「動き」の2項目は、最初は空欄でかまいません。前回整備と案内した日は、来店のたびに書き足していくと、車検1回ぶん(乗用車は2年ごと)でほぼ埋まります。まず車と人の6項目だけで案内は出せるので、ここから始めて、動きは育てます。
迷う欄の見分け方 ― 半年埋まっていない欄に印を付ける
新しく作るより、いまの台帳から要らない欄を消すほうが速いことが多いです。すでに列が増えすぎているなら、次の手順で棚卸しします。
- 台帳を開き、列を上から1つずつ見ます。
- 半年このかた、ほとんど埋まっていない欄に印を付けます。
- その印の欄を「案内に使ったか」で振り分けます。使っていなければ消し、別ファイルに退避します。
- 残った欄が8項目に近ければ、台帳の形は合っています。
消すのが不安なら、その列をすぐ削除せず、別のシートに移して台帳の表からは外します。元データは残るので、後で必要になっても戻せます。表に見えている欄は、現場が毎回埋める欄だけにします。見えている欄が少ないほど、入力は続きます。
| 欄の例 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 次回車検日 | 必須 | 案内の相手と時期がこの1列で決まる |
| 連絡してよい手段 | 必須 | 電話・はがき・LINEのどれで届くかが分かる |
| 生年月日 | 後回し | あっても、それ単独で案内を出す根拠にならない |
| 趣味・家族構成 | 後回し | 会話の足しにはなるが、欄として埋まり続けない |
車検日は推測で入れない ― 車検証の有効期間から正しく入れる
8項目の軸になる次回車検日は、台帳でいちばん間違えてはいけない欄です。ここがずれると、案内の時期が丸ごとずれます。記憶や勘で「だいたい来年の春」と入れず、車検証の有効期間満了日をそのまま写します。
乗用車の有効期間は、新車の初回が3年、その後は2年ごとです(出典:国土交通省)。だから、いま整備や車検でお客さまの車が手元にあるなら、車検証を見れば次回の満了日が確実に入ります。来店のその場で次回車検日を台帳に入れるのを習慣にすると、推測で埋めた誤りが台帳から消えます。
個人情報を持つ責任 ― 8項目でも守る最低限
項目を8つに絞っても、氏名・電話・ナンバーは個人情報です。個人情報保護法は規模を問わず全事業者が対象で、台帳1冊でも当てはまります(出典:個人情報保護委員会)。難しく構える必要はありませんが、最低限の3つは守ります。
- 何に使うか決めておく:「車検・点検の案内や整備の連絡に使う」と利用目的を決め、客にも分かるようにします。集めた目的の外には使いません。
- 安全に保管する:誰でも開ける場所に置きません。ファイルにはパスワードを、紙は鍵のかかる場所に。辞めた人がデータを持ち出せないようにします。
- 求められたら応じる:客から「自分の情報を見せて」「消して」と言われたら応じます。
項目を絞ることは、この責任を軽くする面でも効きます。持つ情報が少ないほど、漏れたときの影響も、管理の手間も小さくなるからです。まず今日、いまの台帳から半年埋まっていない欄に印を付け、案内に使っていない欄を別シートへ外すところから始めます。欄を8項目に近づけたら、車を軸に1か所へ集める作業へ、そして案内の出し方へと進みます。どちらも関連記事で続けます。