「最近リピートが落ちた」の多くは測り方の問題
あなたの店で「最近、車検のリピートが落ちた気がする」と感じたとき、その根拠になっている数字は何でしょうか。今月の入庫が先月より少ない、知っている顔が来なかった、そういう肌感覚で動いていることが多いはずです。ところが車検は、毎月だいたい同じ台数の満了が来るわけではありません。満了が少ない月は来店も自然に減るので、率が落ちたように見えてしまいます。
顧客管理がうまい店と、そうでない店の差は、感覚の鋭さではありません。何を分母にして、何を分子にしているかを決めているかどうかです。分母がぶれていると、同じ実態でも月によって数字が上下して、手を打つ場所を間違えます。落ちたと感じたら、まず測り方をそろえます。それだけで「本当に落ちている」のか「その月の満了が少ないだけ」なのかが分かれます。
車検のリピートは1年でなく2年周期で動く
飲食や物販なら、リピートは月や年で測ります。自動車店はそうはいきません。乗用車の車検は新車で初回3年、その後は廃車まで2年ごとと決まっています(出典:国土交通省)。あなたの客は1年に1回来るのではなく、2年に1回、車検という決まった日付で戻ってくる人です。だからリピート率を1年で切ると、その年に満了が来ない客まで「来なかった」に数えてしまいます。
客が長く乗ること自体は、追い風です。軽自動車を除く乗用車の平均使用年数は13.35年で、4年ぶりに長くなりました(2025年3月末・自動車検査登録情報協会)。1台を13年乗るなら、車検は6回前後めぐってきます。1人の客は2年に1度、十数年で6回ほど戻る機会があるという前提で、率を読みます。1年の数字に一喜一憂すると、この周期を見失います。
更新率の出し方 ― 母数を「2年前」にそろえる
率を出すときに迷うのは、分母を何にするかです。今いる客の総数で割ると、新規も古い客も混ざって、車検の戻りを見ているのか分からなくなります。車検のリピートを見たいなら、母数は1つに決まります。
- 分母:2年前のその月に、あなたの店で車検を受けた台数。これが「今期戻ってくるはずの客」です。
- 分子:そのうち、今期また車検を受けに来た台数。
- 更新率:分子 ÷ 分母。これが車検のリピート率です。
注意するのは、戻りようがない客を分母から外すことです。転居して通えなくなった、車を手放した、客が亡くなった、という台数は最初から数えません。これを残すと率が不当に低く出て、案内の問題と取り違えます。分母は「本来なら戻れた客」だけにそろえます。
| 項目 | 取る数字 | どこから取るか |
|---|---|---|
| 分母 | 2年前の満了月に車検した台数 | 台帳の次回車検日/過去の入庫記録 |
| 分母から除く | 転居・廃車・買い替えで他店へ等 | 来店時の聞き取り・はがき返戻 |
| 分子 | 今期その月に戻って車検した台数 | 今期の入庫記録 |
| 更新率 | 分子 ÷ 分母(%) | 上の3つから計算 |
月ごとに並べると、本当に落ちた月が見える
更新率を全体で1つ出すと、平均にならされて、どこが弱いか見えません。満了は月ごとに山と谷があるので、月別に並べます。たとえば、こう並べると一目で谷が分かります。
| 満了月 | 2年前の母数 | 今期の更新 | 更新率 |
|---|---|---|---|
| 4月 | 30台 | 24台 | 80% |
| 5月 | 18台 | 11台 | 61% |
| 6月 | 26台 | 22台 | 85% |
※数値は読み方を示すための例です。ここで効くのは、率と台数を一緒に見ることです。5月は率が61%と低く見えますが、母数が18台と少ないので、戻らなかったのは7台です。一方で4月は80%でも、戻らなかったのは6台。率が低い月と、取りこぼし台数が多い月は一致しません。直す順番を決めるときは、両方を見て選びます。率だけで「5月がだめだ」と決めると、台数の多い4月の取りこぼしを見落とします。
どこで落ちているか ― 案内・予約・買い替えで分ける
低い月が見つかったら、次は「なぜ戻らなかったか」を場所で分けます。漠然と「リピートを上げる」と考えても動けません。戻らなかった1台ずつを、台帳の記録で3つに振り分けます。
- 案内が届いていない:はがきが戻ってきた、連絡先が古い、そもそも案内を出していない。台帳と案内記録の不備です。
- 案内は届いたが予約に至らない:案内は出したのに返事や来店がない。中身や時期、手段の問題です。
- 他店・ディーラーに流れた/買い替えた:価格や付き合いで他へ行った、車を替えて縁が切れた。関係づくりの問題です。
この3つは打ち手がまったく違います。案内が届いていないなら台帳を直す。予約に至らないなら案内の時期と中身を変える。他店に流れたなら次の車検までの間のつながりを作る。戻らなかった台数を3つに分けるだけで、何から直すかが決まります。販売中心の店は買い替え流出が、整備中心の店は車検と車検の間の点検入庫が、それぞれ大きく出やすい場所です。
数字を毎月1枚にする ― 続く測り方にする
測り方が一度きりで終わると、翌月にはまた肌感覚に戻ります。続けるには、毎月1枚の表に落とします。難しい道具はいりません。今月満了の客について、3つの数字を書くだけです。
- 母数:2年前の同じ月に車検した台数(戻れない客は除く)。
- 更新:今月その客のうち戻って車検した台数。
- 更新率:更新 ÷ 母数。先月・前年同月と並べます。
この3つを月初に1回書けば、12行たまると1年分の山と谷が見えます。来年は前年同月と比べられるので、「落ちた気がする」が数字で確かめられます。まず今月、満了が来た客の母数・更新・更新率の3つを、1枚の表に書くところから始めます。低い月の直し方は案内の記事へ、そもそも次回車検日が引けないなら台帳の記事へと続きます。