「次の車検が誰か」が3秒で出ないなら、台帳が回っていない
あなたの店で「来月、車検が満了する客は誰か」と聞かれて、その場で名前がすぐ出てきますか。出てこないなら、顧客の情報はあっても台帳としては回っていません。整備の記録は紙のカルテに、連絡先はExcelに、過去のFAXのやり取りは別の箱に、と散らばっているために、日付で引けないからです。
顧客管理がうまい店と、そうでない店の差は、情報の量ではありません。次にいつ・誰に声をかけるかを、ひとつの場所から引けるかどうかです。一見の客が毎年戻ってくるのは、客が律儀だからではなく、店が次の車検日を覚えていて、ちょうどいい時期に声をかけているからです。その「覚えている」役割を、人の記憶ではなく台帳に持たせます。
台帳に持つ4ブロック ― 車両・連絡先・整備履歴・案内の記録
台帳に持つ項目は、欲張ると続きません。次の4ブロックに絞れば、案内まで一本でつながります。
- 車両:車種・年式・ナンバー・次回車検日・次回点検日。この台帳の背骨です。
- 連絡先:氏名・電話・住所、LINE登録の有無、連絡してよい手段。案内をどう届けるかが決まります。
- 整備履歴:前回いつ何をしたか、交換した部品、次に出そうな整備。次の提案の根拠になります。
- 案内の記録:いつ案内を出して、返事があり、予約に進んだか。これがあると二重に案内したり、出し忘れたりしません。
最初から4ブロックすべてを埋めようとしなくて大丈夫です。まず車両(次回車検日)と連絡先の2つで案内は回せます。整備履歴と案内の記録は、回しながら足していきます。
軸は「人」ではなく「車両(次回車検日)」
台帳を作るとき、あなたの店では「氏名」から組んでいませんか。これが後でつまずく原因になります。自動車店の現場では、こういうことが日常的に起きるからです。
- 1人が2台、3台と持っています(車検日はそれぞれ違います)。
- 名義は妻、実際に乗って店に来るのは夫、ということがあります。
- 買い替えで車が変わり、前の車の記録とつながらなくなります。
人を中心にすると、次の車検日が1人に複数ぶら下がってぶれます。車両を軸にして、そこに持ち主を結びつけると、台帳は次回車検日でまっすぐ引けます。案内は「車検が近い車」に出すものなので、車で並ぶ台帳のほうが現場に合います。
散らばった情報を1か所に集める順番
「全部きれいにまとめてから運用を始める」と考えると、いつまでも始まりません。動かしながら集めるのが現実的です。順番はこうなります。
- 1つの表を決める:ExcelでもGoogleスプレッドシートでもかまいません。台帳は「これ1つ」と決め、ほかの紙やファイルは元データとして残すだけにします。
- 直近1年分から入れる:これから1年に車検・点検が来る客を先に入れます。古い客を全部さかのぼるより、次に声をかける客が先です。
- 3列から始める:次回車検日・車両・連絡先の3列をまず埋めます。これだけで案内は出せます。
- 来店のたびに足す:客が来たら整備履歴と案内の記録を書き足します。1回転(2年)すれば台帳はほぼ埋まります。
最初から完璧をめざさなくて大丈夫です。3列の表で案内を1回出せたら、その台帳はもう仕事をしています。
個人情報を預かる責任 ― 守るべき最低限のルール
顧客台帳は、氏名・電話・住所という個人情報のかたまりです。事業者なら、台帳1冊でも個人情報保護法の対象になります(かつてあった「5,000件以下は対象外」という例外は2017年になくなりました)。難しく考えなくて大丈夫ですが、最低限の3つは守ります。
- 何に使うか決めておく:「車検・点検の案内や整備の連絡に使う」と利用目的を決め、客にも分かるようにします。集めた目的の外には使いません。
- 安全に保管する:誰でも見られる場所に置きません。ファイルにはパスワードを、紙は鍵のかかる場所に。辞めた人がデータを持ち出せないようにします。
- 本人の求めに応じる:客から「自分の情報を見せて」「消して」と言われたら応じます。
細かい法律論より、「自分の家族の連絡先を他店にどう扱ってほしいか」を基準にすれば、判断を大きく外すことはありません(出典:個人情報保護委員会)。
続く台帳にする ― 誰が・いつ・どこで更新するか
あなたの店で台帳がすたれるとしたら、原因は作り方ではなく更新の決め方にあります。「気づいた人が直す」にすると、誰も直しません。次の3つを決めて、はじめて台帳は生き続けます。
- 誰が:受付・事務など、担当を1人決めます。全員で持つと結局あいまいになります。
- いつ:客が来店して会計するそのタイミングで、次回車検日と整備内容を入れます。後でまとめてやろうとすると抜けます。
- どこで:店の全員が同じ1つの台帳を見ます。手元に別のメモを作らせません。
この3つが回り始めると、台帳は「作って終わるもの」から「来店のたびに埋まっていくもの」に変わります。まず今日、これから1年に車検・点検が来る客を、次回車検日・車両・連絡先の3列で1つの表にまとめるところから始めます。案内の出し方は関連記事へ、Excelで手に負えなくなったときの道具選びは別の関連記事へ続きます。