システムを入れる前に「今の何が壊れているか」を1つに絞る
あなたが製品サイトを開くと、機能一覧の多さに目移りします。ただ、あなたの店が解決したいのは、機能一覧ではなく、いま現場で起きている1つの痛みのはずです。まずそれを言葉にします。自動車店でよく出てくるのは、次の3つのどれかです。
- 入力漏れ:Excelに入れ忘れた客に案内が出ず、車検をまるごと逃します。
- 共有できない:台帳が1人のPCの中にあり、その人が休むと誰も触れません。
- 案内が手作業:毎月、車検が近い客を目で探して、宛名を手で書いています。
このうち「一番つらいのはどれか」を1つ決めます。3つ全部を一度に直そうとすると、どの製品も決め手に欠けて選べなくなります。痛みが1つ定まれば、製品を見る目がはっきりします。
営業向けCRMを入れると、なぜ車検の案内で空回りするのか
あなたが見込み客管理用のCRMを開くと、車検日で客を引く列がありません。一般的な顧客管理アプリは、見込み客を追いかけて商談を進める営業向けに作られているからです。自動車店の顧客管理は、これとは形が違います。すでに買ってくれた客に、決まった時期(車検・点検)にもう一度声をかけるのが仕事だからです。
乗用車の車検は新車で初回3年、その後は2年ごと。点検も時期が決まっています(出典:国土交通省)。つまり客一人ひとりに、次にいつ来るかのカレンダーが最初から決まっているわけです。営業向けCRMはこの「期日が来たら声をかける」動きが弱く、自動車店だと使いこなせないことが多くあります。選ぶときは、車検・点検のサイクルが最初から組み込まれているかを真っ先に見ます。
選ぶときに比べる基準
製品を比べるときは、次の5つで点をつけます。上にあるものほど優先度が高くなります。下の2つ(共有・費用)も大事ですが、上の3つが弱い製品は、安くても結局使われなくなります。
- 期日管理:次回車検日・点検日で客を並べ替え、絞り込めるか。台帳の背骨です。
- 案内の連携:期日が来たら、はがき・SMS・LINEなどの案内が自動で出せるか。手作業がここで消えます。
- 入力の手間:来店時に受付が数十秒で記録を足せるか。手間が重いと入力されず、台帳が古くなります。
- 共有:店の全員が同じ情報を、スマホやPCから見られるか。1人のPCに閉じていないか。
- 費用:月額と初期費用が、増える入庫に見合うか。安さだけで選びません。
多機能より「案内が自動で出るか」を先に見る理由
製品比較の表を見ると、機能が多いものほど良く見えます。ただ、機能が多いほど店の入庫が増えるわけではありません。顧客管理で入庫につながるのは、結局ひとつ。車検が近い客にちょうどいい時期に案内が届くことです。ここが自動で回るかどうかが、入庫の差になります。
逆に、メール配信の細かい設定や、分析の画面がいくら立派でも、案内が手作業のままなら現場の負担は減りません。「案内が自動で出るか」を最優先にして、その上で使い切れる範囲の機能だけある製品を選びます。使わない機能のために月額を払うのは、いちばんもったいないことです。
紙・Excelからの移行でつまずかない順番
システム導入が失敗するのは、製品が悪いからではなく、移行でつまずいて運用が始まらないことがほとんどです。全部のデータを完璧に移そうとすると、入力作業に何週間もかかり、現場がうんざりして元のExcelに戻ります。順番を間違えないことが肝心です。
- 3列だけ移す:まず次回車検日・車両・連絡先の3列を移し、これで案内を1回出してみます。
- 来店時に足す:整備履歴は過去にさかのぼらず、客が来たそのとき書き足します。1回転(2年)でほぼ埋まります。
- 1か月、両方を並べる:最初の1か月はExcelとシステムを併用し、案内が正しく出るのを確かめてからExcelを止めます。
移すデータを絞るほど、運用は早く始まります。台帳の中身が決まっていれば、この移行はぐっと楽になります(顧客台帳の作り方は関連記事へ)。
入れない判断もある ― Excelのままで十分なケース
最後に大事なことを書きます。システムを入れない、という結論も正しいものです。次のような店は、Excelのままで十分に回ります。
- 管理する車が少なく、次の車検が誰か頭に入っています。
- 案内を出すのに苦労しておらず、取りこぼしも感じていません。
- 台帳を見る人が1〜2人で、共有に困っていません。
痛みが1つもないのに「まわりが入れているから」で導入すると、月額だけ払って使われません。最初に書き出した痛みが本当にあるかをもう一度見て、あるなら5つの基準で選び、ないなら今のExcelを続けて台帳を整えます。判断の土台になる顧客台帳の作り方は、関連記事にまとめています。