名簿の客が来ていないと気づいたとき、最初にやること

あなたの店で「最近あの客、来ていないな」と思い当たる顔が、何人か浮かびますか。浮かぶなら、その客はもう離れかけています。ここで全員に一斉のはがきを打ちたくなりますが、いったん手を止めます。誰が・いつ離れたかを台帳で確かめないまま動くと、戻る見込みの薄い客にまで同じ手間をかけることになるからです。

最初にやるのは、台帳から「前回の車検に来なかった車」を出すことです。次回車検日で並んでいれば、満了日を過ぎても入庫の記録がない車がそれにあたります。そこから「次の車検が半年以内に来る車」をさらに絞り、まず10台だけ書き出します。離れた客に当たる仕事は、この10台への一声から始めます。名簿全体を見て途方に暮れる必要はありません。誰が離れたかを数えるやり方は、関連記事に分けてあります。

客は強い不満ではなく、声をかける人がいなくて離れる

来なくなった客を思うと、何か怒らせたのではと身構えます。けれど自動車店で客が離れる理由は、強い不満ばかりではありません。案内のはがきが住所変更で届かなくなった、近所に新しい店ができた、たまたま別の店で車検を済ませてそのまま、という静かな理由が多くを占めます。

背景には車の使われ方があります。乗用車(軽自動車を除く)の平均使用年数は13.35年で、長期化が続いています(出典:自動車検査登録情報協会)。1台を13年以上乗れば、車検は新車から数えて5回以上来ます。回を重ねるほど、客は他店に流れる機会が増えます。つなぎ直す一声がないまま2年が空くと、次の車検は別の店、ということが起きます。客が薄情なのではなく、店から声がかからなかっただけ、という場合がほとんどです。

全員は追わない ― 車検が近い車から順に当たる

離れた客を全員追おうとすると、手間ばかりかかって返事が来ません。当たる順番を、車検の近さで決めます。近い用事がある客ほど、声をかける理由が自然で、戻ってきやすいからです。

離れ方当たる優先度かける言葉の入口
次の車検が半年以内最初に当たる「来月で車検満了です」と日付から
次の車検が1年以内少し早めに一声点検・タイヤなど車検以外の用事から
数年来ていない後回し近況うかがい程度に留める
連絡先が不通追わない台帳から区別し、来店時に更新

上の2段、車検が1年以内の客が、声をかけて戻る見込みのある相手です。数年来ていない客は車を買い替えている場合もあり、返事は薄くなります。あなたの時間は限られているので、戻りやすい客から順に使います。離れた客を見分ける作業は、台帳が次回車検日で引ける状態になっていることが前提です。

いつ当たるか ― 車検の3〜6か月前が戻りやすい

声をかける時期が早すぎても遅すぎても届きません。離れた客の場合、満了の3〜6か月前が当たりどころです。この時期なら、まだ次の店が決まっておらず、こちらから日程を出せる余裕も残っています。

  • 客がまだ次の店を決めていない:満了の直前だと、すでに別の店に予約を入れた後ということが起きます。
  • こちらに日程を出す余裕がある:早めに声をかければ、混む時期を外して入庫日を相談できます。

一度離れた客は、現役の客より一歩引いています。直前に「今すぐ予約を」と急かすより、少し前に「そろそろお車の車検ですが、いかがですか」と余白を持って声をかけるほうが、戻ってきやすくなります。案内の出し方そのものの組み立ては、別の関連記事に分けてあります。

最初の一声に入れるもの・入れないもの

離れた客への一声は、現役の客への案内とは少し変えます。相手は戻りづらさを感じているので、最初の言葉で身構えさせない中身にします。

  • 入れるもの:相手の名前と車。「○○様のお車、来月で車検満了です」と、覚えていたことが伝わる具体を入れます。
  • 入れるもの:用件だけ。車検が近いという事実を、短く伝えます。
  • 入れないもの:来なかった理由の追及。「最近お見えになりませんが」と責める一言は、相手を遠ざけます。
  • 入れないもの:いきなりの大幅値引き。値引きは戻る理由になりますが、安さで戻った客はまた安さで離れます。
値引きより効くもの 離れた客が戻る後押しになるのは、値引きより「覚えていてくれた」という安心です。前回の整備内容や車の特徴を一言添えると、はがきや電話が機械的な一斉案内に見えません。料金で引き戻した客は次の値引きで去りますが、関係でつなぎ直した客は長く残ります。

呼び戻すほうが、新規より軽い ― 1:5の法則

広告を出して新しい客を1人増やすより、離れた客に当たるほうが、店の負担は軽く済みます。一般に、新規客を1人獲得するには既存客を1人つなぎ留める5倍の費用がかかるとされます(1:5の法則)。離れた客は、その中間にいます。

新規客はゼロから連絡先を集め、店を知ってもらうところから始めます。離れた客は、連絡先も車の情報も次回車検日も、すでにあなたの台帳の中にあります。ゼロから探す相手ではなく、もう一度声をかけるだけの相手です。同じ1人を店に戻すのに、後者のほうが手間も費用も少なくて済みます。新規の広告を考える前に、台帳の中の離れた客に当たる順番を先に置きます。

同じ取りこぼしを繰り返さない ― 来店のたびに次を決める

離れた客を呼び戻せたら、今度は離さない番です。戻ってくれた客が次の車検でまた消えるなら、同じ仕事を2年ごとに繰り返すことになります。来店したその場で、次の接点を決めておきます。

  1. 次回車検日を台帳に入れる:戻ってきた客の次の満了日を、その日のうちに記録します。
  2. 次に声をかける時期を決める:満了の3〜6か月前に案内する、と台帳に印を付けます。
  3. 連絡してよい手段を聞く:はがき・電話・LINEのどれがよいか、来店時に確かめます。

この3つを来店のたびに回せば、次の車検で取りこぼす客が減っていきます。まず今日、前回の車検に来なかった車のうち、次の車検が半年以内に来る車を10台書き出すところから始めます。離れた客を数えるやり方は関連記事へ、案内を予約につなげる手順は別の関連記事へ続きます。