同じ予算でも「順番」で結果が変わる理由

集客を「広告をどれだけ出すか」で考えると、予算の大きい店が勝ちます。けれど自動車店の車検集客は、少し事情が違います。車検は2年か3年に1回、必ずやってくる固定の需要だからです(自家用乗用車は新車の初回が3年、その後は2年ごと。道路運送車両法の継続検査)。つまり、去年あなたの店で車検を受けた客の多くは、今年か来年にまた車検の時期を迎えます。その客は、すでにあなたの台帳に名前と車種が載っています。

一方で、新しい客を一から取るには、チラシを撒き、地図やホームページで見つけてもらい、他店と比べられたうえで選ばれる必要があります。手間もお金も、名前の分かっている客に案内するのとは桁が違います。だから順番は、すでに来た客 → 無料で見つけてもらう入口 → お金のかかる広告、の向きで進めるのが安く済みます。

車が長く乗られるようになったことも、この向きを後押しします。自動車検査登録情報協会の調べでは、2025年3月末時点で乗用車の平均車齢は9.44歳と、33年連続で上がり続け、10歳に迫っています。普通乗用車の平均使用年数も12.74年。1台のクルマが、あなたの店で何回も車検を受けうる時代です。最初の1回をリピートに変えられるかどうかが、横ばいを抜けるかの分かれ目になります。

先に出す自店の数字

順番を頭で決める前に、手元の数字を3つ出してください。これがないと、どの打ち手にいくら使うべきかが勘になります。

電卓で出す3つの数字
  1. 年間の車検入庫台数:去年1年で車検をやった台数。
  2. リピート率:そのうち、前回も自店で車検した客の割合。台帳か顧客管理の画面で数える。
  3. 車検1台の粗利:車検料金から外注・部品の原価を引いた、1台あたりの手残り。

たとえば年間600台・リピート率70%なら、毎年180台が他店へ流れているか、来なくなっている計算です。1台の粗利が1万5千円なら、この取りこぼしは年270万円。新しいチラシに何十万円か使う前に、この270万円をどれだけ拾い直せるかを先に考えるほうが、はやく効きます。数字が出せない店は、それ自体が最初の課題です(誰がいつ車検をやったかが台帳で追えていない)。

①一番安い集客は「去年来た客」

最初の打ち手は、新規ではなく満了が近づいた既存客への案内です。やることは単純で、台帳から「もうすぐ車検満了の客」を抜き出し、満了の前に知らせるだけ。手段ははがき・電話・SMSのどれでも構いません。大事なのは、抜け漏れなく、早めに届けることです。

2025年4月から、車検は満了日の2か月前から受けられるようになりました(それまでは1か月前から)。案内を出せる時期が早まったので、他店より先に声をかけた店が選ばれやすくなっています。満了2〜3か月前に最初の案内、1か月前にもう一度、という二段の声かけが、取りこぼしを減らします。

ここでつまずく店の共通点

案内が「気づいた客だけ」になっている。スタッフの記憶や手書きメモに頼ると、忙しい月ほど抜けます。誰がいつ満了かを一覧で出せる状態にしておくことが、案内を仕組みにする前提です。

②Googleマップは無料で検索→来店に効く

既存客の案内を整えたら、次は新規の入口です。最初に手をつけるのは広告ではなく、Googleマップ(Googleビジネスプロフィール)。スマホで「近くの 車検」「地名 整備工場」と探す人に、無料で見つけてもらう入口です。

地図で店を探す人は、その日のうちに動きます。Googleの調べでは、スマホで近くの店やサービスを探した人の76%が1日以内に来店し、その検索の28%がその場で来店・依頼につながっています。車検や整備のように「近くて、すぐ頼める店」を探す業種ほど、地図の上位に出るかどうかがそのまま入庫に響きます。

無料でできるのに、登録しただけで止まっている店がほとんどです。営業時間が古い、サービスに車検が入っていない、写真がない、口コミに返信していない――こうした穴を埋めるだけで見え方が変わります。具体的な手入れの順番は、Googleマップ(MEO)を整備・車検店で使うでまとめました。

③ホームページは「直す」だけでいい

3番目がホームページです。ここで多くの店が「全面的に作り直さないと」と考えて止まりますが、まず必要なのは作り直しではなく手直しです。地図やチラシで店を知った人が、来店を決める前に確かめたいことは、だいたい4つに決まっています。

この4つがスマホで数秒のうちに読めれば、ホームページは集客の役目を果たします。デザインの新しさより、探している人の問いにその場で答えられるかです。全面リニューアルは費用も時間もかかるので、①②を直したあとで判断して間に合います。

④チラシは最後に、絞って残す

チラシを最後に置くのは、効かないからではなく、撒くたびにお金がかかるからです。①〜③は一度整えれば効き続けますが、チラシは毎回コストが発生します。だからこそ、無料の入口を埋めてから、配り先を絞って残すのが順番です。

とくにもったいないのが、名簿のある既存客にまで折込で撒くこと。既存客には、はがきやSMSで直接届けたほうが安く、当たります。折込は「まだ取引のない近隣の新規」に絞る。これだけで同じ予算の効きが変わります。チラシを続けるか・減らすか・はがきに振り替えるかは勘で決めず、配った枚数と入庫数から自店の反応を測って決めます。測り方は車検のチラシが効かないときに手順を置きました。

今週やること ― まず去年来た客に案内を出す

全部を一度に変える必要はありません。今週やることは、お金のかからない①、まず去年来た客に案内を出すことです。

いつやることかかるもの
今週台帳から「今後3か月で車検満了の客」を一覧で出す自分の時間・台帳/顧客管理
今週その客へ満了前の案内(はがき/SMS/電話)を出す段取りを決めるはがき代ほか
今月Googleマップの営業時間・サービス・写真を点検して直す0円
来月ホームページの料金・流れ・予約の入口を手直し小〜中
次の繁忙期前チラシの配り先を「新規エリアだけ」に絞る絞った分だけ安くなる

順番さえ間違えなければ、最初の数か月はほとんどお金をかけずに、取りこぼしていた入庫から戻り始めます。横ばいを抜ける一歩目は、新しい広告ではなく、すでに来た客を逃さないことです。

よくある質問

お金をかけずに今日から始められる集客はどれですか。
去年あなたの店で車検を受けた客への案内です。台帳に名前が載っているので、はがき・電話・SMSで満了の前に知らせるだけ。新しい客を一から探すより費用がかからず、入庫にもつながりやすい。次に無料のGoogleマップの手入れが続きます。
ホームページは作り直すべきですか。
多くの店は作り直しより手直しで足ります。料金・車検の流れ・場所と電話・予約の入口の4つが、スマホですぐ読めれば十分はたらきます。全面リニューアルは費用も時間もかかるので、Googleマップと既存客の案内を直したあとで判断して構いません。
チラシはもうやめるべきですか。
やめる前に、配った枚数と入庫数から自店の反応を測ってください。続ける・配り先を絞る・はがきへ振り替える、のどれにするかは勘でなく実数で決めます。チラシは順番でいえば最後で、まず無料でできる入口を埋めてからで間に合います。
効果が出るまでどのくらいかかりますか。
既存客への車検案内は、満了が近い客に出すのでその期の入庫にすぐ響きます。Googleマップやホームページは検索で見つかるまで数週間から数か月かかります。すぐ効く既存客の案内から手をつけるのは、この時間差の意味もあります。
出典(取得日:2026年6月3日)
  1. 一般財団法人 自動車検査登録情報協会「令和7年版 わが国の自動車保有動向」(2025年3月末現在。平均車齢9.44歳、普通乗用車の平均使用年数12.74年)
    https://www.airia.or.jp/publish/statistics/trend.html
  2. 国土交通省「自動車検査証の有効期間」自動車検査登録総合ポータルサイト(継続検査:自家用乗用車は初回3年・以降2年。2025年4月から満了2か月前受検が可能)
    https://www.jidoushatouroku-portal.mlit.go.jp/jidousha/kensatoroku/about/inspect/validity-period/index.html
  3. Think with Google「Going Local」ほかGoogleのローカル検索調査(スマホで近くを検索した人の76%が1日以内に来店、28%が購入につながる)
    https://www.thinkwithgoogle.com/

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