「売上の何パーセント」から入ると外す
集客予算を決めるとき、まず「売上の何パーセントが目安か」を探したくなります。けれど比率から入ると、土台が空のまま広告だけ増やして取りこぼします。整備の集客費は業種によって幅が大きく、一律の正解はありません。中小企業実態基本調査をもとにした集計でも、売上に占める広告宣伝費は製造業・卸売業で0.1〜0.2%、客に直接売る小売・サービス業で0.9〜5.3%と、業態だけで10倍以上ひらきます。整備工場は近所の客に直接届ける商売なので後者に近いですが、この幅では振り先は決まりません。
先に決めるのは比率ではなく、車検・整備が1件入るといくら粗利が残るかです。そこから「1件の獲得にいくらまで払えるか」が出ます。比率は結果として後からついてくる数字で、入口にする数字ではありません。
配分の物差しは1件あたりの獲得費
配分を迷わず決められる物差しは一つだけです。手段ごとの「1件あたりの獲得費」を出して、安い順に並べます。出し方は単純です。
- その月にその手段にかけた費用(例:チラシ印刷+配布で5万円)。
- その手段から入った件数(例:問い合わせて入庫まで進んだのが5件)。
- ①÷②=1件あたり1万円。これがチラシの獲得費。
同じ計算をポータル、ネット広告、紹介でも出して横に並べます。あわせて、1件入るといくら粗利が残るかと比べる。粗利が2万円で、その2〜3割の4千〜6千円を1件あたりの上限に置くなら、獲得費1万円のチラシは赤字で、4千円の手段は黒字です。どこを削りどこに足すかが、これで一目で決まります。件数を数えるには、電話やネット予約のときに「何を見て来たか」を一言聞いて控えるだけで足ります。
ポータルや広告の「手数料は何%」「掲載は月いくら」は媒体ごとに条件が変わり、表の数字だけでは効くかどうか分かりません。判断材料は他店の相場ではなく、あなたの工場でその手段が1件いくらで取れたかです。同じポータルでも、地域と料金設定で獲得費はまるで変わります。
①まず無料の土台に時間を振る
配分の一番上は、お金でなく時間を振る場所です。Googleマップの店情報、ホームページの車検料金と電話、口コミをお願いする声かけ。ここは費用ゼロで直せるのに、登録しただけで止まっていることが本当に多い。土台が空のまま広告で人を集めても、来た人が情報の薄さで離れ、払った広告費だけが消えます。先に土台を埋めると、同じ広告でも来た人が残ります。
- Googleマップの店情報:営業時間・電話・サービスを正し、口コミに返信する。地図で「地名 車検」と探す客の入口です。
- ホームページ:車検の料金と流れ、電話番号を見える場所に。料金が分からない店は問い合わせ前に外れます。
- 口コミ:引き渡しの直後に一言かけてQRを渡す。満足してもらえた直後が一番書いてもらえます。
整備の需要そのものは細っていません。日本自動車整備振興会連合会(日整連)の令和6年度の調べでは、整備工場は全国で92,384事業場、総整備売上高は6兆2,561億円です。市場はあるので、まずあなたの工場が地図と検索で見つかる状態を、お金をかけずに作ります。
②既存客への案内に少額を回す
土台の次に少額を回すなら、新しい人より先に、既にあなたを知っている客です。車検の案内はがき、次回点検の連絡、オイル交換の時期のお知らせ。一度来た客は店も場所も分かっているので、新規の広告より当たりやすく、1件あたりの獲得費も安く収まります。
整備は1人の整備士が1年で生む売上が大きい仕事です。日整連の同じ調べでは、専業工場の整備要員1人あたりの年間整備売上高は1,109万1,000円。だからこそ、一度つかんだ客を案内一本で呼び戻す費用対効果は高い。名簿の整理と、車検の切れる月での声かけだけで、新規広告を増やさず件数を積めます。
③新規を呼ぶ広告は足りない分だけ
土台を埋め、既存客への案内を回しても、まだ枠が空いている。そこで初めて、新しい人を呼ぶ広告にお金を出します。チラシ、地域のポータル掲載、ネット広告。これらは一番高く、当たり外れも読みにくい。そのため全額を一度に賭けず、1件あたりの獲得費が読める少額から始めて、効いた手だけ足します。
どれを試すかは、土台で分かった客の入口に合わせます。地図でよく探されているならその周辺、電話が多いなら電話につながる広告、というふうに、既に反応のある入口を太らせる順です。一度に何種類も同時に出すと、どれが効いたか分からなくなり、獲得費も出せません。1〜2種類に絞り、月ごとに1件の獲得費で確かめます。
毎月、獲得費の順に組み替える
配分は一度決めたら終わりではありません。毎月、手段ごとの1件あたりの獲得費を並べ直し、高い手を削って安い手に足す。これを続けると、同じ予算で取れる件数が静かに増えていきます。来店時に「何を見て来たか」を聞いて控える習慣が、この組み替えの土台になります。
| 配分の段 | 主に振るもの | 1件あたりの獲得費 | 毎月の判断 |
|---|---|---|---|
| ①土台(無料) | 時間(あなたの手) | ほぼゼロ | まず埋め切る。空のうちは下に進まない |
| ②既存客への案内 | 少額(はがき・連絡) | 安い | 名簿が回るなら継続。当たりやすい |
| ③新規を呼ぶ広告 | 残りの予算 | 高い・ばらつく | 獲得費が上限内の手だけ残す |
同じ予算でも、知らせるチラシ、確かめてもらうGoogleマップ、じっくり見せるホームページは役割が違います。一つに全部を詰めず、入口から来店まで渡していくと、それぞれの費用が軽くなります。手をつける順番は、集客の順序の記事にまとめました。
今週やること ― 1件の獲得費を出す
難しく考えず、まず手元の数字で物差しを1本作ります。電卓と去年の費用が分かるものを用意してください。
- 車検が1件入るといくら粗利が残るかを出す。その2〜3割を、1件あたりに払える上限に決める。
- 去年やったチラシ・ポータル・広告を1つ選び、「かけた費用 ÷ そこから入った件数」で1件の獲得費を出す。上限と比べる。
- 来店時に「何を見て来たか」を聞いて控える紙を1枚、受付に置く。来月から手段ごとの件数が分かる。
この3つで、予算を「何パーセント」でなく「1件いくらで取れるか」で見られるようになります。あとは毎月、安い手に足し、高い手を削るだけ。お金を増やす前に、今ある費用の振り先を組み替えるのが、限られた予算で件数を伸ばす一番堅い入口です。何から手をつけるかは、車検の入庫を増やす集客の順序でまとめました。
よくある質問
集客予算は売上の何パーセントを目安にすればいいですか。
広告を増やすのと、ホームページやGoogleマップを直すのと、どちらが先ですか。
効果が出ているか、何を見て判断すればいいですか。
予算が月3万円しかありません。どう振ればいいですか。
- 一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会(日整連)「令和6年度 自動車特定整備業実態調査結果の概要について」(事業場92,384・総整備売上高6兆2,561億円。専業の整備要員1人あたり年間整備売上高1,109万1,000円)
https://www.jaspa.or.jp/Portals/0/resources/jaspahp/member/data/pdf/R06jittaityousa.pdf - 一般財団法人 自動車検査登録情報協会「平均車齢」(2025年3月末現在。乗用車の平均車齢9.44年で前年比0.10年延び、33年連続で高齢化)
https://www.airia.or.jp/publish/file/syarei_2025.pdf - 中小企業庁「中小企業実態基本調査」をもとにした売上高に占める広告宣伝費の集計(製造業・卸売業0.1〜0.2%、小売・サービス業0.9〜5.3%)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/database?toukei=00553010
予算の振り先を一緒に組み替える
「今の費用を1件あたりの獲得費で並べ直したい」「土台から先に直したい」など、集客予算の悩みを受け付けます。
相談する(準備中)お問い合わせ窓口は近日開設します。