- 取りこぼしの正体電話は、あなたが出られない時間に鳴った分が消えます。整備中・昼休み・閉店後にかかった1本は、留守電に残らずそのまま次の店へ流れます。
- 入れる前に確かめる3点①出られない時間にどれだけ鳴っているか ②受けた予約を誰がいつ確認するか ③いっぱいの日をどう止めるか。この3つに答えられたら入れて回ります。
- 入れる単位いきなり全部を仕組みに載せず、車検と点検の入口に「ここから予約」を1本つけるところから始めます。
- 捨てる話ではない電話をなくすのではなく、出られなかった時間を拾う箱を1つ足す、と考えると判断が早くなります。
電話で消えているのは「出られない時間」
リフトの下から滑り出て手を拭き、3コール目で受話器を取ったら、もう切れている。あなたの店でも、こういう瞬間が日に何度かあるはずです。電話そのものが悪いのではありません。問題は、あなたが出られない時間に鳴った1本が、どこにも残らずに消えることです。
整備中、点検でラインに入っているとき、昼休み、閉店後。これらの時間にかかってきた電話は、留守番電話に入れてくれる人ばかりではありません。出なければ、相手はそのまま次に見つけた店へかけ直します。あなたが知らないところで、車検1台ぶんの整備売上が他店へ移っているわけです。Web入庫予約を入れるかどうかは、突き詰めるとこの「出られない時間」を拾うか拾わないかの判断になります。
最初に見るべきは、フォームの見た目でも料金でもありません。あなたの店で、電話に出られない時間がどれくらいあるか。そこを直視するところから始めます。
人手が足りないほど、電話に出る人がいなくなる
「電話は今のままでいい、出られるから」と感じている店ほど、ここ数年で出られなくなってきています。理由は、整備の現場が人手で詰まってきているからです。自動車整備・修理工の有効求人倍率は、2024年度(令和6年度)に5.45倍まで上がりました。全職種の平均が1.25倍ですから、整備士は1人を平均の約4.4倍で取り合っている計算です。
人が増えないまま入庫だけが続けば、受付に専任を置く余裕は消えます。整備士が手を止めて電話に出る、あるいは出られずに鳴らしっぱなしにする、このどちらかになります。手を止めれば作業が遅れ、鳴らしっぱなしにすれば予約が逃げます。人手が薄いほど、電話の取りこぼしは増えます。
採用で人を足して受付を厚くする道は、いまの倍率では時間もお金もかかります。それより先に、出られない時間の予約だけでも自動で受け止めておくほうが、あなたの手はずっと軽くなります。Web受付は、足りない人手の代わりに「箱」で受ける考え方です。
入れる前に確かめる3点
Web入庫予約を入れて効くかどうかは、機能の数では決まりません。次の3点に自店の言葉で答えられるかどうかで、入れて回るか、入れただけで放置になるかが分かれます。
確かめる1: 出られない時間に、どれくらい鳴っているか
1週間でいいので、出られなかった着信の数を電話機の履歴で数えてみてください。整備中・昼休み・閉店後に何件あったか。ここがほぼゼロなら、急いで入れる必要はありません。週に何件もあるなら、その数だけ予約を逃している計算になります。
確かめる2: 受けた予約を、誰がいつ確認するか
Webで受けても、気づくのが翌々日では電話より遅くなります。届いた予約を、あなたか担当者が朝いちで見る、と決められるか。スマホに通知が来る形にできるか。確認の担当と時刻が決まっていないなら、入れる前にそこを決めます。
確かめる3: いっぱいの日を、どう止めるか
受け過ぎて当日に入りきらないのも取りこぼしと同じです。1日に受ける台数の上限を決め、埋まった日は申し込めないようにできるか。手動で枠を閉じる運用でも構いませんが、誰がいつ閉じるかは先に決めておきます。
3点とも「これならできる」と思えたら、あなたの店はWeb受付を入れて回ります。1つでも詰まるなら、まずその段取りを決めてから入れたほうが、後の手戻りが減ります。
入れて回るか、回らないかの分かれ目
同じようにWeb予約を入れても、片方は楽になり、片方は二度手間が増えます。違いは仕組みではなく、受けた後の段取りにあります。下の表で、自店がどちらに近いかを当てはめてみてください。
| 場面 | 回らない店の状態 | 回る店の状態 |
|---|---|---|
| 予約が届いたとき | 気づくのが翌日以降。確認担当が曖昧 | 通知が届き、朝いちで担当が確認する |
| 枠の管理 | 上限なし。当日に入りきらず断る | 1日の台数上限を決め、埋まれば止まる |
| 電話との関係 | 電話とWebで台帳が二重になり、ダブルブッキング | 受付の置き場所を1つに寄せ、二重を防ぐ |
| お客さんへの返事 | 受けたきり連絡せず、不安にさせる | 受付した旨を自動か当日に返す |
表の左側は、Webにした分だけ新しい取りこぼしを生んでいる状態です。右側との差は、お金をかけた機能ではなく、確認・枠・置き場所・返事という4つの段取りを決めてあるかどうかです。あなたの店がいま左に近いなら、入れる前にこの段取りを先に固めてください。
予約サイトか、自店のフォームか
受け方には、予約の仕組みが入った専用のものと、自店サイトに置く簡単なフォームの2つがあります。どちらが向くかは、受けたい予約の細かさで決まります。
- 日時の枠を細かく押さえたい、点検メニューを選ばせたい、台数の上限を自動で止めたい――この場合は、予約の仕組みが入った専用のものが向きます。設定の手間はかかりますが、受けた後の段取りまで仕組みが肩代わりします。
- まずは取りこぼしを止めたいだけ――この場合は、自店サイトに「車種・希望日・連絡先」を書く簡単なフォームを置くところから始めて差し支えありません。届いた内容を見て、こちらから日時をすり合わせる形です。小さく始めて、足りなければ専用のものへ移ります。
- どちらを選ぶにしても、入った予約のデータを自分で取り出せるか――ここは外さないでください。後から別のものへ乗り換えるとき、過去の予約や顧客を引き出せないと、続けるしかなくなり、値上げにも弱くなります。
最初から多機能なものを選ぶ必要はありません。確かめる3点に答えられているなら、簡単なフォーム1枚でも、出られない時間の取りこぼしは止まります。回り始めてから、足りない機能を足していく順序のほうが、現場が嫌がりません。仕組みを選ぶときの基準そのものは、整備管理システム、機能の多さで選ばないでも詳しくまとめています。
制度がデジタル前提へ動く、その入口に予約をつなぐ
「いつか入れよう」で止まりがちな話ですが、制度のほうが先にデジタル前提へ動いています。車検証は2023年から電子車検証になり、有効期間の満了日は券面ではなくICタグの中に入りました。満了日を店側が読み取り、案内する場面が増えています。
満了日の案内を出すとき、その文面に「ここから予約」を1本つけておくと、案内を見たお客さんがその場で予約まで進めます。案内は出すのに予約の入口が電話だけだと、「あとでかけよう」と思っているうちに忘れられ、せっかくの案内が取りこぼしに変わります。電子車検証への切り替えや、店としてやることの整理は、電子車検証、整備工場は何をすればいいかにまとめています。制度対応と入庫予約は、別々の話ではなく一続きで考えると、手を入れる順番が見えてきます。
自店に入れて回るか、相談したい
出られない時間にどれだけ鳴っているか、受けた後の段取りをどう組むか。自店の状況に合わせて、Web入庫予約を入れる順番の相談を受け付けます。
相談する(準備中)お問い合わせ窓口は近日開設します。
よくある質問
- 厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)自動車整備士」(整備士の有効求人倍率5.45倍・令和6年度の確認元)
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/197 - 厚生労働省「一般職業紹介状況」(全職業平均の有効求人倍率1.25倍・令和6年度平均の確認元)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_57261.html - 国土交通省「自動車整備士の確保・育成に係る課題とこれまでの取組(資料5)」(整備人材不足の状況の一次資料)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001877732.pdf - 国土交通省「電子車検証特設サイト」(満了日が券面からICタグへ移った根拠)
https://www.denshishakensho-portal.mlit.go.jp/