- 何が増えたか2020年4月からエーミングなど電子制御装置整備が特定整備に入り、自動ブレーキ用カメラやレーダーを調整するたびに記録が要る車が増えました。
- 守る線特定整備記録簿は記載の日から2年保存。記載には装置・調整方法・対象車両・年月日・整備主任者の確認が要り、外注分は自店分と分けて書きます。
- 電子化の可否国交省が記録簿の電子での作成・保存・交付の取扱いを示しているため、原本性・表示出力・改変の確認の3点を満たせば紙の綴じ込みをやめられます。
- 入れる判断月のエーミングが数件なら紙でも回ります。月10件を超え、車台番号で過去分をすぐ引きたいなら、電子記録簿か業務管理システムが効きます。
記録が要る車が、いつのまにか増えている
エーミングをやった車の記録を、車検のたびに探して綴じ直している。気づくと棚のファイルが膨らんでいて、去年の1台を引くのに10分かかる。あなたの店でこれが起きているなら、増えたのは作業の量だけではありません。残さないといけない記録の量も一緒に増えています。
2020年4月から、自動ブレーキに使う前方監視のカメラやレーダーの調整、自動運行装置の整備が「電子制御装置整備」として特定整備に入りました。従来の分解整備に、この電子制御装置整備が足された形です。最近の車はこうした装置を積んでいるものが多く、ガラス交換やバンパー脱着のあとにエーミングが要る場面が増えています。そのたびに特定整備記録簿への記載が要るので、記録の手間が静かに積み上がっていきます。
制度が始まったときの準備期間(経過措置)は2024年3月末で終わっています。いまは認証を受けたうえで作業し、記録を残すのが前提です。記録は「やったら念のため」ではなく、残すことが決まっている仕事だと考えてください。
記録簿に書くこと、外せない項目
何を書けば足りるのかが曖昧なまま埋めていると、車検や監査で「これでは記載が足りない」と言われます。特定整備記録簿に残す主な項目は次のとおりです。
- 対象車両――自動車登録番号または車両番号、車台番号など、その1台を特定できる情報。
- 作業の中身――どの装置を、どの方法で点検・整備・調整したか。エーミングなら対象の装置と調整のやり方を残します。
- 作業の年月日――いつやったか。保存期間の起点になります。
- 整備主任者の確認――電子制御装置整備の整備主任者が、作業と記載を確認したこと。
- 事業場の情報――事業者の名称・所在地・認証番号。
外注が絡むと、ここで書き分けが要ります。たとえばガラス交換を外に頼み、レーダー交換とエーミングを自店でやった場合、自店で行った作業と外注先で行った作業を分けて書きます。国交省が外注を含む記載例を公開しているので、迷ったらその様式に合わせると抜けが出ません。
紙のままで回る店、詰まる店の分かれ目
記録を電子にするかどうかは、月の件数と過去分の引きやすさで決まります。月にエーミングが数件なら、様式を決めた紙でも十分に回ります。詰まり始めるのは、次のような場面が重なってきたときです。
| 場面 | 紙のままで起きやすいこと | 電子化で楽になるか |
|---|---|---|
| 月のエーミングが10件を超える | 綴じる量が増え、書き写しと記載漏れが出る | 大(入力1回で必要項目が揃う) |
| 過去の作業を後から引く | 年月順のファイルから1台を探すのに時間がかかる | 大(車台番号で1件をすぐ出せる) |
| 2年の保存を切らさず保つ | 古い分の差し替え・抜けに気づきにくい | 中(期間で抜けを一覧できる) |
| 複数人で記録を付ける | 書式や項目が人によってぶれる | 中(入力欄が決まっていてぶれない) |
2年という保存期間は、思っているより長く効いてきます。紙だと2年ぶんが棚にたまり、月をまたいだ1台を探すのに毎回手が止まります。あなたの店が上の表で2つ以上当てはまるなら、電子化を本気で検討する段階です。
記録簿は電子で残せる ― 満たす3点
「記録簿は紙で綴じないとだめなのでは」と止まっている店は少なくありません。ここははっきりしています。国土交通省が、点検整備記録簿・特定整備記録簿などを電磁的方法で作成・保存・交付する場合の取扱いを示しています。要件を満たせば、紙でなく電子で残してかまいません。
満たすべきは、おおまかに次の3点です。
1. 原本性が保てる
記録した内容が後から勝手に書き換わらないこと。誰がいつ作成・変更したかをたどれる状態にしておきます。
2. 表示と書面の出力ができる
必要なときに画面で見られ、求められたら書面でも出せること。車検や監査の場で提示できる形にしておきます。
3. 改変の有無が分かる
記録に手を加えた場合、その事実が分かること。消して上書きしたのか、訂正の履歴が残るのかを確かめます。
市販の業務管理システムや電子記録簿には、この3点を満たすうえで作られたものがあります。導入を考えるときは「電子帳簿として記録簿を残せるか」「監査で出せる形か」を販売元に確認してください。仕組み側で満たしていれば、あなたが毎回気をつける必要はなくなります。
電子記録簿か業務管理システムか、選ぶ基準
電子で残す道具は、大きく2つに分かれます。記録簿の電子化だけに絞ったものと、受付・見積・請求まで含む業務管理システムです。どちらが向くかは、いまの困りごとがどこにあるかで決まります。
- 記録だけが回らないなら、記録簿の電子化に絞った道具で足ります。導入が軽く、エーミングの記載と2年保存をまず楽にできます。
- 受付・見積・請求でも二度書きが多いなら、業務管理システムのほうが効きます。1台ぶんの情報を入口で入れれば、記録簿にも見積にも回せます。
- どちらを選ぶときも、やめるときに自分のデータを取り出せるかを確かめます。記録は2年残す前提なので、乗り換え時に過去分を出せないと困ります。
多機能なほうが安心に見えますが、使わない欄が多いと入力が増え、忙しい日に後回しになって結局たまります。いまの記録の困りごとに合う最小の道具から入るほうが、現場が続けてくれます。
いまの紙からの移し方
電子に切り替えるとき、過去2年ぶんを一気に打ち込み直す必要はありません。保存義務がかかっている記録は、紙のまま保存期間が切れるまで残しておけば足ります。新しく作る分から電子にしていきます。
1か月目: 新規分だけ電子で付ける
これからのエーミングや特定整備の記録を、新しい仕組みで付け始めます。過去の紙はそのまま棚に置き、2年の期限が来たものから外していきます。
2〜3か月目: 入力の手間と引きやすさを確かめる
1台あたりの入力が紙より増えていないか、車台番号で過去分をすぐ引けるかを、現場の担当者に一言聞きます。手間が増えているなら、項目の設定か道具が合っていません。
4か月目以降: 完全に電子へ寄せる
引きやすさと入力の軽さが確かめられたら、新規の記録は電子に一本化します。紙は過去分の保存だけに役割を絞ります。
記録の電子化は、制度に合わせる対応と現場の手間を減らす工夫が同時に進む場面です。やったら残すと決まっている記録を、探しやすく抜けにくい形にしておけば、車検と監査のたびの慌てがなくなります。
自店の記録、電子に移すか相談したい
月の件数と困りごとから、紙のまま様式を整えるか、電子記録簿か、業務管理システムか。自店に合う入口を一緒に決めます。
相談する(準備中)お問い合わせ窓口は近日開設します。
よくある質問
- 国土交通省「自動車特定整備事業について」(特定整備の範囲・電子制御装置整備・整備主任者)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr9_000016.html - 国土交通省「特定整備制度概要」(制度施行2020年4月・経過措置2024年3月末まで)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001332203.pdf - 国土交通省「特定整備記録簿の記載方法について」(外注を含む記載例)
https://www.mlit.go.jp/common/001355384.pdf - 国土交通省「点検整備記録簿、特定整備記録簿及び指定整備記録簿の電磁的方法による作成、保存又は交付に関する取扱い」(記録簿の電子化の要件)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha/tenkenseibi/images/kirokubodensika.pdf