受け入れを迷う前に、立つ場所があるか確かめる
整備士の求人を出しても応募が来ず、外国人を雇えないかと検索した。あなたが最初に確かめるのは「どこの紹介会社に頼むか」ではありません。自店が制度の入口に立てるかどうかです。立てない店がいくら人材を探しても、受け入れの手前で止まります。
背景の数字は重い。国土交通省と日整連の調査では、整備士が「不足」「やや不足」と答えた事業者が合わせて約6割。新卒の流入より離職のほうが大きく、国内の採用だけでは穴が埋まりにくい状況です。だから国は、令和6年度からの5年間で自動車整備分野の受け入れ見込数を9,400人と定め、外国人材を制度として受け入れる枠を広げました。
ただし、この枠は「誰でも使える」わけではありません。受け入れる事業場の条件と、来てもらう本人の条件、その後の支援、そして費用。この四つを順に確かめれば、受け入れるか別の手を打つかが見えてきます。一つずつ見ていきます。
自店は受け入れ機関になれるか(認証と協議会)
最初の関門は、自店が「受け入れ機関」になれるかです。ここで止まる店が一定数あります。特定技能の自動車整備で外国人を雇うには、受け入れる事業場が次の前提を満たす必要があります。
- 道路運送車両法78条1項に基づく地方運輸局長の認証を受けた事業場であること(認証工場・指定工場)。認証のない出張整備だけの形態は、この入口に立てません。
- 国土交通省が設置する「自動車整備分野特定技能協議会」の構成員であること。初めて受け入れる場合は、本人の入国後4か月以内に加入します。
- 外国人と結ぶ雇用契約や、報酬・労働時間が日本人と同等以上であること。受け入れ機関としての欠格事由(重大な法令違反など)がないこと。
まず自店の認証区分を確かめてください。すでに認証工場・指定工場なら、最初の前提は満たしています。協議会の加入は入国後でも間に合いますが、初めての受け入れでは段取りに時間がかかるため、検討の早い段階で地方運輸局に問い合わせておくほうが安全です。
2020年の制度改正で「分解整備」は「特定整備」に広がり、電子制御装置整備の認証区分が加わりました。自店がどの区分の認証を持っているかは、受け入れの前提だけでなく、任せられる作業範囲にも関わります。認証区分があいまいなら、外国人材の話の前に自店の認証から確かめてください。
本人に要る資格と試験、技能実習からの移り方
自店が入口に立てたら、次は来てもらう本人の条件です。特定技能1号で整備の仕事に就くには、自動車整備士技能検定3級に相当する技能が求められます。確かめ方は二通りで、入り口がどこかによって変わります。
| 本人の経路 | 技能の確かめ方 | 日本語 |
|---|---|---|
| 試験ルート(海外・国内から) | 自動車整備分野特定技能評価試験に合格(または3級の技能検定) | N4以上または基礎テスト合格 |
| 技能実習2号からの移行 | 自動車整備の技能実習2号を良好に修了(試験は免除) | 修了で要件を満たす |
日本語はN4が目安。現場での安全指示や作業手順が日本語で伝わる水準を制度が求めています。出典は記事末尾の国交省ガイドブック。
現実に多いのは、技能実習2号を終えた人が特定技能1号へ移る経路です。すでに自店で技能実習生を受け入れているなら、その人がそのまま特定技能へ移れるか確かめるのが、いちばん近い一手になります。新たに海外から探す場合は、評価試験と日本語の両方に受かった人を、登録支援機関や送り出し側を通して探すことになります。
在留できる期間も押さえておきます。特定技能1号は通算で最長5年。在留期間に上限のない特定技能2号も自動車整備分野で受け入れられますが、2号は実務経験と上位の試験が要るため、まずは1号で受け入れ、働きぶりを見て2号へ進む流れが中心です。
受け入れたあとの支援を、誰が担うか
雇って終わりではありません。特定技能1号には、就労や生活を支える支援が義務づけられています。在留資格の申請から、住む場所の確保、来日直後の生活オリエンテーション、行政手続きの同行、定期の面談や届出まで、項目は10前後にわたります。
この支援を、自店で担うか、登録支援機関に委託するかで、手間と費用が変わります。日本語と行政手続きに明るい担当を社内に置けるなら自前でも回せますが、多くの店は登録支援機関に委託します。委託すれば手間は減りますが、月あたりの委託料がかかります。どちらが自店に合うかは、社内に支援を担える人がいるかで決まります。
受け入れの相談では採用の段取りに目が行きがちですが、辞めずに働き続けてもらえるかは入社後の支援で決まります。住居や生活の不安、言葉の行き違いを放置すると、せっかく受け入れても続きません。支援を誰が担うかは、採用の可否と同じ重さで先に決めてください。
採算で見る ― 年いくら上乗せになるか
制度の入口に立て、本人も見つかり、支援の担い手も決めた。最後は採算です。外国人材の受け入れは、日本人を一人雇うより初期の手間と費用が乗ります。判断の物差しは「採用1人ぶんの人件費に、年あたりいくら上乗せになるか」です。
上乗せになりうる費目を並べます。金額は事業者や人材の経路、地域で幅が大きいので、ここでは項目だけを示します。実額は複数社の見積りで自店の数字を作ってください。
- 人材紹介・送り出しにかかる費用(海外から探す場合に発生しやすい)
- 登録支援機関への委託料(自前で支援するなら社内の人件費に置き換わる)
- 在留資格の申請や届出にかかる行政書士などへの費用
- 来日時の渡航・住居の初期費用(自店が一部を負担する取り決めも多い)
気をつけたいのは、賃金そのものは日本人と同等以上が前提だという点です。「外国人なら安く雇える」という前提で採算を組むと、制度の条件に反するうえ、来た人もすぐ離れます。安く済ませる手ではなく、国内で採れない穴を埋める手だと割り切って、上乗せ分を払う価値があるかで判断してください。
受け入れると決める前に、来週やること
大きな制度の話で終わらせず、月曜から動ける形にします。順番は前の章のとおり、入口・本人・支援・採算です。
- 自店の認証区分(認証工場か指定工場か、特定整備のどの区分か)を確かめる
- 協議会に入れるか、入国後4か月以内の加入の段取りを地方運輸局に問い合わせる
- すでに技能実習生がいれば、特定技能1号へ移れる人がいないか確認する
- 支援を自店で担うか、登録支援機関に委託するかを、社内に担い手がいるかで判断する
- 登録支援機関2〜3社から見積りを取り、委託料と紹介手数料を並べて比べる
- 採用1人ぶんの人件費に上乗せ費目を足し、年あたりいくらかかるかを出す
四つを確かめて、入口に立てて採算が合うなら、外国人材は人手不足への有効な一手です。立てない、あるいは採算が合わないなら、求人票の見直しや定着の仕組みづくりを先に打つほうが、あなたの店には早く効きます。受け入れるか別の手かは、この順番をたどってから決めてください。