受け入れの前に、自店が満たす入口条件
求人を出しても整備士が来ない。日本人の採用が細るなか、外国人材という選択肢を考え始めた経営者は多いはずです。ただ、特定技能の受け入れは「募集して採る」前に、自店が満たすべき条件のほうが多い制度です。まず入口の二つを確認します。
一つめは、自店が認証工場であること。受け入れる店は、道路運送車両法第78条第1項の認証を受けた認証工場(または指定工場)である必要があります。特定整備の認証と重なるのは、この一点だけです。名前の似た二つの制度が交わるのは、まさにこの「受け入れる店は認証工場であること」という条件だけです。
二つめは、自動車整備分野特定技能協議会に加入すること。受け入れる店は、この協議会の構成員になる義務があります。入会金・会費はかからず無料ですが、加入で交付される構成員資格証明書が、外国人本人の在留資格(ビザ)の申請時に必要になります。つまり、加入は受け入れの後ではなく、受け入れる前に済ませておくものだと考えてください。
民間の解説には「受け入れ後4か月以内に加入」と書かれたものがありますが、国(国交省・出入国在留管理庁)の案内に、その数値の期限は見当たりませんでした。一次情報がはっきり示しているのは「構成員資格証明書はビザ申請時に必要」という点です。期日を逆算するより、受け入れる前に協議会への加入を終えておきます。
1号と2号は別物 ― どちらで受け入れるか
特定技能には1号と2号があります。自動車整備分野は1号が2019年4月から、2号は2023年(令和5年)から受け入れの対象になりました。性格がかなり違うので、最初に区別します。
| 特定技能1号 | 特定技能2号 | |
|---|---|---|
| 在留できる期間 | 通算で最長5年(更新を重ねる) | 更新を続けられ、上限なし |
| 家族の帯同 | できない | 一定の要件を満たせばできる |
| 店の支援義務 | あり(支援計画の作成・実施) | なし |
| 現状 | 受け入れの中心 | 制度はできたが、整備分野の取得者はこれから |
2号は長く働いてもらえる制度ですが、自動車整備分野では取得者がまだほとんどいない段階です。
現実に最初に向き合うのは1号です。1号は最長5年で、店に支援の義務がつきます。2号は長く働いてもらえて支援義務もありませんが、自動車整備分野では取得者がまだほとんどおらず、これからの段階です。まずは1号で受け入れ、本人が経験を積んで2号へ進む、という流れを前提に考えるのが実態に合っています。
来てもらう人の条件 ― どのルートで来てもらうか
次に、来てもらう外国人本人の側の要件です。1号になるには、大きく三つのルートがあります。自店がどのルートの人を受け入れるかで、準備も変わります。
- 試験ルート:自動車整備分野特定技能1号評価試験に合格し、あわせて日本語試験(日本語能力試験N4以上、または国際交流基金日本語基礎テスト)に合格する。
- 技能検定ルート:三級自動車整備士の技能検定に合格していれば、整備分野の評価試験に代えられる。日本語試験は別途必要。
- 技能実習からの移行ルート:自動車整備の技能実習2号または3号を良好に修了した人は、整備分野の評価試験と日本語試験が免除され、1号へ移行できる。
現場でいちばん多い入口は、技能実習からの移行です。すでに自店や近隣で技能実習生として働き、整備の経験を積んだ人がそのまま1号へ移れるからです。海外から試験ルートで呼ぶ場合は、本人の試験合格と日本語の確認に時間がかかる前提で動いてください。
受け入れた後にずっと続くこと ― 1号の支援
1号で受け入れる場合、いちばん見落とされやすいのが「採って終わりではない」ことです。店(または委託先の登録支援機関)は、本人の生活と仕事を支える支援計画を作り、実施し続ける義務があります。国が定める義務的な支援は次の10項目です。
- 働く前の事前ガイダンス(労働条件などの説明)
- 入国・帰国時の送迎
- 住まいの確保と、銀行口座・携帯電話・電気ガス水道などの契約の手伝い
- 日本での暮らしのルールやマナー、災害時の対応などの生活オリエンテーション
- 役所などでの手続きへの同行
- 日本語を学ぶ機会の提供
- 相談・苦情への、本人が分かる言葉での対応
- 地域の人との交流の手伝い
- 店の都合で雇用を続けられなくなったときの転職の支援
- 支援責任者による定期的な面談(3か月に1回以上)と、必要なときの行政への通報
これを自店だけで担うのは、少人数の店には重いはずです。そこで多くの店は登録支援機関に支援を委託します。委託先は、その機関自身が協議会に入っていることや、整備士の有資格者などを置いていることが条件です。自前でやるか委託するかは、受け入れる前に決めておきます。
お金の話 ― 何にいくらかかるか
費用は、公的にはっきり示されているものと、機関によって幅が出るものに分かれます。確かな数字とそうでない部分を分けて見ます。
| 項目 | 金額 | 区分 |
|---|---|---|
| 協議会への入会金・会費 | 0円 | 公的に明示 |
| 評価試験の受験料(1号・国内) | 4,300円 | 公的に明示 |
| 評価試験の受験料(2号・国内) | 4,800円 | 公的に明示 |
| 合格証明書の交付手数料 | 16,000円 | 公的に明示 |
| 登録支援機関への支援の委託費 | 機関による | 相場・幅あり |
試験料・手数料は税込・日本国内での金額です。委託費は国が定めた額ではなく、機関ごとに異なります。
受験料や手数料は数千円〜1万円台で、制度そのものの実費は大きくありません。読みにくいのは登録支援機関への委託費で、これは国が決めた額ではなく機関ごとに違います。複数の機関から見積もりを取って比べてください。なお、外国人材の受け入れ環境を整える際に使える国の助成(1つの制度の導入につき一定額など)もありますが、年度ごとに内容が変わるため、使うなら必ず最新の要件を確認してください。
自店の段取り ― 確認から受け入れまで
判断の順番をまとめます。求人を出すのは最後で、その前に確認することのほうが多いのがこの制度です。
- 入口条件を確認する:自店が認証工場か。協議会に加入できるか(無料・ビザ申請前)。この二つが満たせなければ、まずここを整える。
- 受け入れの形を決める:1号で受け入れる前提で、来てもらう人をどのルート(試験・技能検定・技能実習からの移行)で考えるかを決める。
- 支援の体制を決める:義務的支援10項目を、自前でやるか登録支援機関に委託するか。委託するなら複数機関で比べる。
- 手続きを進める:協議会へ加入して構成員資格証明書を取得し、本人との直接雇用契約(派遣・請負は不可、報酬は日本人と同等以上)を結び、在留資格を申請する。
- 自店は認証工場か(特定整備の認証を持っているか)
- 協議会の入会手続きと、構成員資格証明書の取得時期(ビザ申請前)
- 1号と2号のどちらで受け入れるか、本人はどのルートか
- 義務的支援10項目を、自前と委託のどちらで担うか
外国人材の受け入れは、求人を出して採るより前の準備で成否が決まります。あなたの店が認証工場で、協議会に入り、支援の体制を組めるなら、整備士不足を埋める選択肢として十分に成り立ちます。まずは入口の二つを確認するところから始めてください。