「気をつけているのに抜ける」のは、気をつけ方の問題ではない
あなたの店で、満了月を過ぎてから「あの客、案内したっけ」と気づくことが、月に何件かありませんか。出したつもりが出ていない、二人で別々に出していた、満了が今月だと気づいたのが先月末だった。こうした抜けは、担当の注意が足りないから起きるのではありません。誰にいつ案内を出すかが、その人の記憶の中にしかないから起きます。
乗用車は1台が長く乗られます。自動車検査登録情報協会の調べでは、軽自動車を除く乗用車の平均使用年数は13.35年で、4年ぶりに長くなりました(令和7年3月末)。1台と長く付き合うほど、車検・点検の案内を出す回数は積み重なります。1回の漏れは小さくても、毎月取りこぼしが積もれば客は少しずつ離れていきます。だからこそ、漏れを人の記憶から外に出す必要があります。
抜ける原因は3つだけ ― 一覧・時期・記録
案内が抜ける原因は、突き詰めると3つしかありません。逆に言えば、この3つさえ手元に置けば、気をつけなくても取りこぼしは止まります。
| 抜ける原因 | 現場で起きること | 止め方 |
|---|---|---|
| 一覧が出ない | 来月満了の車が、すぐに一覧にならない | 次回車検日で並ぶ1つの表を持つ |
| 時期が決まらない | 出す月が客ごと・担当ごとにばらつく | 2〜3か月前と1か月前の2段に固定 |
| 記録が残らない | 出したか分からず、二重か抜けになる | 出した日と返事を1列に書き込む |
3つのうち、まず効くのは一覧です。来月誰の車検が来るかが一目で出れば、それだけで抜けは大きく減ります。時期と記録は、その一覧に2列足すだけで整います。順に見ていきます。
原因1:来月満了の車が、一覧で出てこない
あなたの店では、来月車検が満了する車を一覧にするのに、何分かかりますか。整備のカルテをめくり、Excelを開き、記憶を頼りに拾っている状態なら、そこに抜けが生まれます。案内の出発点は、来月満了の車が3秒で一覧になることです。
そのために必要なのは、次回車検日で並べ替えられる1つの表です。氏名で並ぶ台帳ではなく、車両を軸にして次回車検日で引ける形にします。1人が複数台持つ、名義は妻で乗るのは夫、買い替えで車が変わる、といったことが日常的に起きるため、人で引くと期日がぶれるからです。
- 表には少なくとも「次回車検日・車両・連絡先」の3列を持ちます。これだけで抜き出しは回せます。
- 次回車検日で並べ替えれば、来月・再来月の満了分が固まりで出ます。そこが案内の対象です。
- 台帳の作り方そのものは別の記事にまとめています。一覧が出ない根は、台帳の持ち方にあります。
原因2:いつ出すかが決まっていない ― 2か月前から受けられる改正
一覧が出ても、出す時期が客ごとにばらつくと、結局取りこぼします。ここで効くのが2025年の改正です。これまで車検は満了日の1か月前からしか受けられませんでしたが、2025年4月から満了日の2か月前に広がりました(出典:国土交通省)。早めに案内しても、客は有効期間を損なわずに受けられます。
そこで案内は時期を固定し、2段で出します。1回目で動かなかった客を、2回目で拾うためです。
| 段 | 出す時期(満了日から逆算) | ねらい |
|---|---|---|
| 1回目 | 2〜3か月前 | 余裕をもって日程を決めてもらう |
| 2回目 | 1か月前(返事がない客だけ) | 忘れ・先延ばしを拾う |
| 満了後 | 数日〜2週間(連絡が取れていない客) | 他店への流れと車検切れを防ぐ |
大切なのは、この時期を毎月そろえることです。今月は2か月前、来月は気づいたとき、では抜けが戻ってきます。2か月前から受けられる分、1回目を早めに置けるようになった点を、案内の設計に反映します。
原因3:出した記録が残らず、二重か抜けになる
一覧があり時期も決めても、出したかどうかが残らないと、同じ車に二度出したり、出したつもりで出ていなかったりします。記録は難しく考えず、一覧の表に列を足すだけで足ります。
- 出した日:いつ・どの手段で案内したかを書きます。空欄なら未対応だと一目で分かります。
- 返事の有無:連絡が返ってきたか、つかまらなかったかを残します。2回目を出す相手がこれで決まります。
- 予約に進んだか:予約まで進んだら印を付けます。済んだ車に重ねて案内しないためです。
この3列があると、案内は「記憶を頼りに毎回判断する作業」から「空欄を埋める作業」に変わります。担当が休んでも、表を見れば誰が未対応かが分かるため、引き継ぎでこぼれません。
毎月1回、同じ手順で回す ― 手作業でも止まる
仕組みといっても、新しい道具はまだ要りません。Excelでも、次の手順を毎月同じ日に回せば取りこぼしは止まります。あなたの店で今日から始められる形にすると、こうなります。
- 毎月1日に抜き出す:次回車検日で並べ、来月・再来月満了の車を一覧にします。日を決めるのが肝心です。
- 1回目を出す:2〜3か月前の客へ案内し、出した日を書き込みます。
- 2回目を出す:先月の一覧で返事がない客へ、1か月前にもう一度出します。
- 満了後を拾う:連絡が取れないまま満了した客へ、数日のうちに声をかけます。
この手順が回り始めると、抜けが翌月に持ち越されなくなります。月の件数が増えて、毎月の抜き出しや書き込みがつらくなってきたら、次回車検日が近い客を自動で知らせる道具を検討する段階です。まずは来月満了の一覧を1つの表で持ち、出した日を書く欄を足すところから始めます。案内の文面と手段は関連記事へ、手作業が限界に近づいたときの道具選びは別の関連記事へ続きます。