台帳はあるのに、案内が「気が向いた客」止まりになっていないか

あなたの店には顧客台帳があります。それでも案内を出すとき、思い浮かんだ客や、ふと顔を見た客に声をかけて終わっていませんか。台帳を持っているだけでは案内は出ません。台帳を「見る」のと、台帳から「宛先を引き出す」のは別の作業だからです。

引き出せない台帳は、名簿として眠っているだけです。案内が安定して回っている店は、客一人ひとりを覚えているわけではありません。台帳に次にいつ声をかけるかを書かせて、毎月そこから宛先を抜き出しているだけです。覚える役を人から台帳へ移すと、案内は気分ではなく日付で出るようになります。

案内のタイミングを外さないと再来店が続く 乗用車(軽自動車を除く)の平均使用年数は13.35年で、4年ぶりに長くなりました(令和7年3月末・自動車検査登録情報協会)。1台の客と十年以上付き合えるということは、車検・点検の案内を一度外さなければ、その客は何度も戻ってきます。案内の宛先と時期を台帳から確実に引けるかどうかが、その後の再来店を左右します。

まず次回車検日で並べ替える ― 日付が宛先を決める

台帳から案内を引くとき、最初の一手は氏名でも来店日でもありません。次回車検日で並べ替えることです。日付の昇順に並べれば、台帳の上のほうに「もうすぐ車検が来る客」が集まります。そこを上から見るだけで、今月声をかけるべき宛先が出そろいます。

並べ替えは、ExcelでもGoogleスプレッドシートでも、列を選んで昇順を押すだけです。次回車検日の列が空のままだと並びません。台帳に次回車検日が入っていない客がいたら、車検証の満了日から先に埋めます。並べた台帳から、月ごとにこう抜き出します。

  • 来月に満了する車:今すぐ1回目の案内を出す宛先です。
  • 再来月に満了する車:来月の頭に出す宛先として、印をつけておきます。
  • すでに満了が過ぎて未入庫の車:他店に流れたかもしれません。電話で1本確かめる宛先です。

名前から探していると、案内は「思い出せた客」にしか届きません。日付から並べると、忘れていた客まで漏れなく宛先に上がります。案内は車検の近い車に出すものなので、台帳も車検日で並んでいるほうが現場に合います。

誰に先に送るか ― 車検の近さと付き合いの長さで順位をつける

抜き出した宛先が30人いて、一度に丁寧な案内を作れないとき、誰から手をつけるかで成果が変わります。順位は2つの軸で決めます。1つは車検の近さ、もう1つは付き合いの長さです。台帳に来店回数や前回整備があれば、この2軸はすぐ引けます。

客の状態(台帳で分かること)優先かける言葉の向き
車検が近い×来店が複数回最優先「今年もお待ちしています」。確実に戻る客なので確実に届ける
車検が近い×前回が初めて次に優先2回目に来てもらえるか。初回の整備内容にふれて思い出してもらう
満了が過ぎた×連絡なし取りこぼし確認はがきより電話。流出か買い替えかを台帳に書き残す
車検はまだ先×点検が近い後回しで可点検の声かけ。車検案内とは時期を分ける

大事なのは、全員に同じ文面を送らないことです。何度も来ている客に「初めての方へ」と記した案内が届くと、覚えてもらえていないと感じさせます。台帳に来店回数があれば、長い客と一度きりの客で言葉を分けられます。分け方をもっと細かくする手順は、関連記事で別に扱います。

いつ送るか ― 満了2か月前と1か月前の2回

宛先が決まったら、次は時期です。乗用車の車検は新車で初回3年、その後は2年ごとに必ず満了が来ます(出典:国土交通省)。満了日は台帳に入っているので、そこから逆算して送る日を決めます。目安はこうです。

  1. 満了の2か月前に1回目:早すぎると忘れられ、ぎりぎりだと他店で予約を入れられています。2か月前は、客が「そろそろか」と思い始める頃です。
  2. 2か月前に反応がなければ、1か月前にもう1回:1回で動かない客は珍しくありません。間を置いて、別の手段でもう一度声をかけます。
  3. 反応があったら、そこで止める:予約が入った客に重ねて案内を送ると、雑に扱われている印象を与えます。台帳の記録を見て打ち切ります。

この2回を守れるかどうかは、台帳が次回車検日で引けるかにかかっています。毎月1回、「2か月後に満了する車」と「先月出して反応のない、1か月後に満了する車」を抜き出せば、誰にいつ送るかは自動的に決まります。時期を勘で決めるのをやめて、満了日からの逆算に任せます。

出した結果を台帳に書き戻す ― 来年の優先順位が決まる

案内を出して終わりにすると、台帳は一年でまた眠ります。出した案内の結果を台帳に書き戻すと、その記録が次の年の宛先選びを助けます。書き戻すのは難しくありません。次の3つだけです。

  • 送った日と手段:いつ、はがき・LINE・電話のどれで出したか。二重送付と出し忘れを防ぎます。
  • 返事の有無と予約:返事があったか、予約に進んだか。進んだ客は次も同じ手段で届きます。
  • 反応がなかった事実:無反応も記録です。翌年も同じはがきで動かないなら、手段を電話に変える判断ができます。

反応のなかった客を放っておくと、その客は静かに離れます。記録があれば、二年続けて無反応の客に別の手を打てます。世帯当たりの自家用乗用車の普及台数は1.009台で、12年続けて減っています(令和7年3月末・自動車検査登録情報協会)。一家で持つ車が減っているなかでは、いま付き合いのある客一人を取りこぼさないことが、新しい客を探すより先に効きます。書き戻しは、その取りこぼしを次の年に持ち越さないための作業です。

毎月15分で回す ― 台帳から案内を引く手順

ここまでの流れは、毎月15分の決まった作業にまとめられます。あなたの店で月初にこの順でやれば、案内は気分ではなく台帳から出ます。

  1. 台帳を次回車検日で並べ替える。
  2. 「2か月後に満了する車」を抜き出し、今月の宛先にする。
  3. 来店回数で並べ、長い客と初回の客で文面を分ける。
  4. 先月出して反応がなく、1か月後に満了する車に2回目を出す。
  5. 満了が過ぎて未入庫の車に電話を1本入れる。
  6. 出した日・手段・反応を台帳に書き戻す。

はじめから全部をやろうとしなくて大丈夫です。今月はまず、台帳から「2か月後に満了する車」を抜き出して、その全員に1回案内を出すところから始めます。客の分け方をもっと細かくする手順と、台帳に何の項目を持たせるかは、関連記事に続きます。