同じ案内が全員に届くと、半分の客には響かない

あなたの店では、車検の案内はがきを全員に同じ文面で送っていませんか。毎回ちゃんと来てくれる常連にも、もう2年以上顔を見ていない客にも、同じ一通が届いているとしたら、その案内は半分の人に向いていません。常連には「分かっているから、わざわざ言わなくていい」と読まれ、離れかけた客には「今さら何の用事か」と読まれます。同じ紙でも、受け取る側の状況が違えば、効く言葉が違うからです。

とはいえ、客を一人ずつ見て文面を書き分けるのは続きません。必要なのは、客を少ない区分に分けて、区分ごとに言葉を変えることです。区分は手元の台帳から日付で引けるものにします。性格や好みで分けようとすると判断が止まりますが、来店頻度や次の車検日なら、表を並べ替えるだけで分かります。この記事では、あなたが台帳の前に座ったとき、どの軸で何区分に分け、それぞれにどう声をかけるかを順に決めます。

分ける軸は、台帳から引ける3つだけにする

客を分ける軸はいくらでも思いつきますが、増やすほど手が止まります。最初は、台帳の日付からそのまま引ける次の3つに絞ります。

台帳のどこを見るか何が分かるか
来店頻度来店記録の回数(直近2年)車検以外でも来る客か、車検のときだけの客か
残り回数次回車検日次の案内をいつ出すか、満了がいつ来るか
経過最終来店日しばらく来ていない=離れかけているか

この3つは、どれも台帳の「次回車検日」と「来店記録」から引けます。新しく情報を集める必要はありません。年齢や車種で分ける方法もありますが、それは案内の中身を変える根拠にはなりにくく、まず日付で分けるほうが現場で動きます。3軸を組み合わせると、客は自然に次の3区分に落ちます。

  • 常連:車検以外でも来て、最終来店も新しい客。関係はできています。
  • 車検客:車検のときだけ来るが、毎回は来てくれる客。接点が年に近い回数しかありません。
  • 離れかけ:前回の車検で来ず、最終来店から1周期(2年)以上たった客。放っておくと戻りません。
なぜ「経過」を軸に入れるか 乗用車は平均で13.32年使われ、平均車齢も9.34年まで延びています(出典:自動車検査登録情報協会)。1台の車が10年以上手元にあるなら、車検は5回以上来ます。最終来店からの経過を見て早めに声をかければ、その残りの車検でまた戻ってくる余地があります。

区分ごとに、案内の一言目を変える

分けたら、次は案内の言葉を区分に合わせます。文面を全部書き直すのではなく、一言目(最初の一行)と、何を一番に伝えるかを変えるだけで十分です。あなたの店の3区分なら、こう変わります。

区分一言目の方向一番に伝えること出す時期
常連「いつもの時期ですね」と短く日程の確保(混む前に)満了の60日前から1回
車検客早めに一度だけ丁寧に準備するもの・費用の目安満了の60日前と30日前
離れかけ「まだ受け付けています」と安心を先に戻ってきやすい入口(電話一本でよい等)満了の60日前に丁寧に1回

大事なのは、離れかけた客にいきなり値引きを出さないことです。値引きで動いた客は、次も値引きがないと動きません。客が離れるのは、値段が高いからより、案内の声がかからなくなったからのことが多いです。一言目は「あなたの車のことは覚えています」と伝わる言葉にします。文面を3パターン用意しておけば、台帳の区分を見て出すだけで、一人ずつ書き分ける手間は要りません。

3区分を台帳で実際に作る手順

区分は、Excelやスプレッドシートの台帳があればその場で作れます。専用のシステムは要りません。順番はこうなります。

  1. 2列で並べ替える:台帳を「次回車検日」と「最終来店日」の2列で見られるようにします。この2列がない台帳は、先に整えます(顧客台帳の作り方は関連記事へ)。
  2. 離れかけを先に拾う:最終来店日が今から2年より前の客に、まず印をつけます。次の車検で来なかった客が、ここに集まります。
  3. 常連と車検客を分ける:残りのうち、直近2年で車検以外の来店がある客を常連、車検のときだけの客を車検客にします。来店記録の回数で見ます。
  4. 3色で色分けする:常連・車検客・離れかけを色で分けます。区分の名前を1列足しておくと、後で並べ替えやすくなります。

最初から完璧に分けようとしなくて大丈夫です。離れかけの客を拾い出した時点で、もうこの台帳は今までと違う仕事をしています。残りの2区分は、案内を出しながら直していけます。

離れかけた客を1区分にするだけで、戻る数が変わる

3区分のなかで、いちばん見返りが大きいのは離れかけの区分です。常連はそもそも来てくれますし、車検客も時期に出せば多くは来ます。手をかけて変わるのは、放っておけば二度と来ない客のほうです。ここを毎年ひとまとめにして声をかけるだけで、戻ってくる数が積み上がります。

数で考えると分かりやすくなります。離れかけの客が仮に40人いて、年に一度きちんと声をかけ、そのうち4人が戻ってくるとします。この4人は次の車検でもまた来る見込みになります。乗用車は10年以上乗られるので、一度戻ってくれば、残りの車検の回数ぶん接点が続きます。離れかけを区分として持たない店は、この40人を毎年そのまま見送っています。客数が少ない店ほど、一件の取りこぼしが効くので、まずこの区分を作る価値があります。

「離れかけ」と「もう乗っていない」を分ける 最終来店から時間がたった客の中には、車を手放した人も混じります。声をかけて反応がなかった客は、翌年は区分から外して別記録に移します。毎年同じ人に空振りし続けないために、案内の結果(返事があったか)を台帳に書き戻しておきます。

区分を「作って終わり」にしない更新のしかた

区分は一度作って放っておくと、すぐに合わなくなります。常連が来なくなれば離れかけに動きますし、離れかけだった客が戻ってくれば常連や車検客に移ります。あなたの店で区分を生かし続けるには、台帳の更新に区分の動きをつなげておきます。次の2つを決めておけば、区分は手で振り分け直さなくても自然に動きます。

  • 来店のたびに最終来店日を更新する:会計のタイミングで日付を入れれば、経過の軸が自動で新しくなります。後でまとめてやろうとすると抜けます。
  • 案内の結果を1列に残す:返事があったか、予約に進んだかを書いておくと、次の年に同じ区分で出すときの精度が上がります。空振りした相手も分かります。

この2つが回り始めると、区分は固定の名簿でなくなります。来店のたびに更新され、客の今の状態に合わせて動きます。まず今日、台帳を次回車検日と最終来店日の2列で並べ替え、しばらく来ていない客に印をつけるところから始めてください。そこに一言目を変えた案内を一度出してみると、全員同じ案内との差が、返ってくる予約の数で見えてきます。