「どこまで自動化するか」で止まっている理由
あなたの店で、車検の案内が後手に回ったり、来店の御礼を出しそびれたりしていませんか。フォローを自動化したいと考えても、「どこまで機械に任せていいのか」が決まらず、手が止まっていませんか。手が止まるのは、どの道具を選ぶかで迷うからではありません。任せていい連絡と、人が出すべき連絡を分けていないからです。
連絡を一括りに「フォロー」と呼ぶと、線が引けません。実際には、出し忘れを防げばよい連絡と、相手や場面で中身が変わる連絡が混ざっています。この2つを分けることが、自動化の最初の一歩です。分けてしまえば、どこまで任せるかは自然に決まります。
線引きの基準は「期日が決まっているか」
任せる連絡と残す連絡を分ける基準は1つです。期日が先に決まっている連絡は自動でよく、相手で中身が変わる連絡は手作業に残す。この基準で、いま自店から出している連絡を仕分けます。
| 連絡の種類 | 期日 | 中身 | 任せ方 |
|---|---|---|---|
| 車検の案内 | 満了日から逆算 | ほぼ一通り | 自動 |
| 定期点検の案内 | 時期が決まる | ほぼ一通り | 自動 |
| 引き渡しの御礼 | 来店ごと | 相手で変わる | 手作業 |
| 不具合の確認 | 整備の後 | 整備内容で変わる | 手作業 |
| 離れかけの客への声かけ | 決まらない | 事情で変わる | 手作業 |
期日が決まっている上2つは、出すタイミングがあらかじめ計算できます。下3つは、いつ・誰に・何を言うかが相手しだいで変わります。この差が、機械に向く連絡と人に向く連絡の差です。
自動でよい連絡 ― 車検・点検の案内
車検は新車で初回3年、その後は2年ごとと期日が決まっています。さらに2025年4月の改正で、満了日の2か月前から車検を受けられるようになりました。つまり1台ごとに「案内を出すべき時期」が必ず計算できます。これは人の記憶ではなく、台帳のルールに置くべき仕事です。
- 次回車検日を基準に、満了の2か月前に1通目を出す。
- 返事がなければ、満了の1か月前にもう1通出す。
- 点検も同じく、前回からの経過で時期を決めて出す。
この「○か月前に出す」を台帳のルールにすれば、担当が忙しくても案内が止まりません。乗用車(軽自動車を除く)の平均使用年数は13.35年まで延びています。1台の客と長く付き合う時代だからこそ、毎回の車検案内を取りこぼさない仕組みが効きます。
手作業に残す連絡 ― 来店直後と離れかけ
一方で、手で送るべき連絡があります。引き渡し直後の御礼、整備後の不具合の確認、長く来ていない客への声かけです。これらは相手や場面で中身が変わるので、自動の定型文だと事務的に伝わり、かえって関係が薄くなります。
- 引き渡しの御礼:整備した内容に一言触れて、その日のうちに出します。
- 不具合の確認:交換した部品や調整箇所を名指しで「その後どうですか」と聞きます。
- 離れかけの客への声かけ:前回の整備や次の車検時期に触れて、事情を尋ねます。
手作業といっても、全部を毎回書き起こすわけではありません。土台の文だけ用意しておき、相手の車や整備内容を一言入れて送れば、手間は数分です。あなたが本当に時間をかけるべきは、こちらの連絡です。期日の案内を機械に任せた分、ここに人の時間を回します。
自動化に要る道具は、台帳と送付手段1つから
自動化と聞くと専用システムを思い浮かべるかもしれませんが、最初は要りません。次の3つがあれば、車検案内の自動化は始められます。
- 次回車検日で並べ替えられる顧客台帳:Excelでもスプレッドシートでもかまいません。店の全員が同じ1つを見ます。
- 送付の手段を1つ:はがき・SMS・LINEのどれか1つから始めます。客に届く手段を1本決めます。
- 担当を1人:「毎週、2か月後に車検が来る車を抜き出して案内を出す」を1人の仕事にします。
専用システムを入れるのは、この手作業が件数で回らなくなってからです。月の案内が数十件のうちは、台帳から抜き出して送るだけで足ります。道具を増やす前に、台帳と送る順番を先に決めます。順番が決まっていない店にシステムを入れても、結局使われません。
全部を自動にすると、かえって客が離れる
線引きをせず、全部を自動の定型文にすると何が起きるか。世帯当たりの自家用乗用車は1.009台まで減り、12年連続で減っています。1世帯が持つ台数が減るほど、1人の客とのつながりが自店の売上を左右します。その客に、御礼も不具合の確認も画一の文面で送れば、「機械から来ている」と伝わって気持ちが冷めます。
逆に、気持ちを込めたいからと全部を手作業にすると、忙しい時期に出し忘れが増え、肝心の車検案内が遅れます。どちらに振っても関係は切れます。だからこそ線を引きます。期日の案内は自動で確実に、関係をつなぐ連絡は手で温かく。まず次回車検日を基準に「2か月前に案内を出す」を台帳のルールにし、来店直後と離れかけの客は手作業のリストに分けるところから始めます。台帳の項目の決め方や、データから誰にいつ出すかは関連記事へ続きます。