同じ家の3台が、台帳ではつながっていない

あなたの店で、こんな家を思い浮かべてみてください。夫の普通車、妻の軽、この春に免許を取った子の中古車。3台とも同じ家の車で、玄関も家計も一つです。ところが台帳を開くと、夫は「田中様」、妻は名字だけ同じで別の行、子はつい先日入れたばかりで電話番号も住所もまだ空欄、という具合に、3台が3か所にばらけています。同じ家だと気づいているのは、入力したあなたの頭の中だけです。

この状態で困るのは、車検の案内を出すときです。夫の車の満了が近くて案内を送る。その2週間後、妻の軽の満了も近いと気づいてもう1通送る。同じ家の郵便受けに、別々のはがきが立て続けに届きます。逆に、子の車は連絡先が空欄のまま、案内が一度も出ないまま満了日を過ぎる、ということも起きます。同じ家の車がつながっていないと、案内は重なるか、抜けるかのどちらかになります。

これは入力する人が雑だから起きるのではありません。台帳が「1人=1台」を前提に組まれていて、1つの家に何台もある状況を受け止める箱を持っていないから起きます。あなたがする意思決定は一つです。複数台の家を、どういう形で一つにまとめるか。

なぜ名義で並べると複数台がほどけるのか

多くの台帳は、最初に「氏名」から組みます。1人のお客さまに1枚のカード、という形です。これが複数台の家でほどける理由を、現場で実際に起きることに分けて見ます。

現場で起きること名義で並べると困りごと
名義が割れる夫の車と妻名義の軽が別の行になる同じ家と分からず、案内が二重になる
乗る人と名義が違う名義は妻、来店するのは夫誰に声をかけるか毎回迷う
買い替えで車が変わる前の車の記録と新しい車が切れる整備履歴が引き継がれない
子が車を持つ同じ住所なのに新規客として増える家の全体像が見えなくなる

共通する原因は一つです。並べる軸を「人の名前」に置いているために、同じ家でも名義が違えば別物として散らばります。一方で、案内を出す単位は「車1台ごとの車検日」です。束ねたい単位(家)と、引きたい単位(車)が違うのに、名義という一つの軸で両方をやろうとするから、どちらも中途半端になります。

複数台は珍しくありません 自家用乗用車の世帯当たり普及台数は、令和7年3月末で全国平均1.009台です。平均は1台ほどでも、福井県1.670台・山形県1.617台のように、地方では1世帯1.5台を超える県が並びます。地方の店ほど、1つの家に複数台がある前提で台帳を組む必要があります(出典:自動車検査登録情報協会)。

世帯を親、車を子にする2階建ての持ち方

束ねたい単位と引きたい単位が違うなら、台帳も2階建てにします。上の階に「世帯」、下の階に「車」を置きます。

  • 上の階(世帯):家を一つに束ねる箱です。世帯番号・住所・主な連絡先・連絡してよい手段を持ちます。声をかける相手と請求は、ここでまとまります。
  • 下の階(車):1行1台で、車種・ナンバー・名義・次回車検日・整備履歴を持ちます。案内は、ここの車検日を見て1台ずつ出します。

そして、各車の行に「どの世帯か」を示す世帯番号を必ず入れておきます。これだけで、上から見れば家ごとに車が固まり、下から見れば車1台ずつを車検日で引けます。名義が夫・妻・子とばらけていても、同じ世帯番号でつながっているので、家まるごとを一度で出せます。

見たいことどこを見るか引き方
この家は何台あるか世帯番号世帯番号で並べ替えて固める
来月の車検は誰の車か次回車検日車検日で並べ替えて拾う
案内は誰に届けるか世帯の主な連絡先世帯番号から連絡先を引く
前回この車に何をしたか車の整備履歴ナンバーから1台を引く

あなたが普段する作業は、ほぼこの4つに収まります。世帯と車の2軸さえあれば、迷わず引けます。

世帯コードの振り方 ― Excelなら列を1つ足すだけ

2階建てというと専用のシステムが要りそうに聞こえますが、Excelやスプレッドシートのままでできます。やることは、いまの「1行1台」の表に、世帯番号の列を1つ足すだけです。順番はこうなります。

  1. 世帯番号の列を足す:表の左に1列足し、「世帯No」と名前をつけます。番号は H001、H002 と通し番号でかまいません。意味は持たせず、ただ家を見分けるための番号です。
  2. 同じ住所に同じ番号を振る:住所で並べ替えると、同じ家の車が隣り合います。同じ住所のかたまりに、同じ世帯番号を入れていきます。番地まで一致を確認します。
  3. 名義が違う車を拾う:苗字が同じで住所も同じなら、まず同じ世帯の候補です。来店時に「ご家族の車ですか」と一言確認して、同じ番号でつなぎます。
  4. 2軸で並べ替えて確かめる:世帯番号順にすると家が固まり、次回車検日順にすると案内する車が浮かびます。この2つの並びで見えれば、台帳は仕事をしています。

同姓同名や、同じアパートで別世帯、という紛らわしい例はあります。それでも、迷ったら「同じ家計か」で判断すれば、大きく外しません。完璧な突き合わせを最初から狙わず、来店のたびに一言確認して直していけば足ります。

近い車はまとめ、離れた車は分ける案内

世帯でまとまると、案内の出し方も変わります。やみくもに1台ずつ送るのではなく、同じ家の車検日が近いかどうかで分けます。

  • 近い車はまとめる:同じ世帯で車検日が1か月以内に並ぶなら、1通に「2台ともこの時期です」と書いて、まとめて声をかけます。同じ家に同じ月、別々のはがきが2通届く事態を防げます。
  • 離れた車は分ける:車検日が何か月も離れているなら、それぞれの時期にそれぞれ出します。無理に1通にまとめると、まだ先の車の案内が早すぎて流されます。

乗用車の車検は、新車で初回が3年、その後は2年ごとです(出典:国土交通省)。家ごとに3台あれば、車検日は年に何度か別々に来ます。世帯で束ねておくと、「この家は来月2台、半年後にもう1台」と先まで見渡せるので、案内をまとめる・分けるの判断がその場でつきます。世帯でまとめる狙いは、家ごとに案内する時期を先まで見渡せるようにすることです。

まず今日、同じ住所に番号を振るところから

複数台のまとめは、台帳を作り直さなくても始められます。いまの表に世帯番号の列を足して、住所で並べ替え、同じ家に同じ番号を振る。この最初の一歩だけで、同じ家の車がつながり始めます。

  1. 今日:世帯番号の列を1つ足し、住所で並べ替えて、目につく複数台の家から番号を振ります。
  2. 来店のたび:「ご家族で何台お持ちですか」と一言聞いて、つながっていない車を同じ番号で結びます。
  3. 案内のとき:世帯番号で家を確かめ、車検日が近い車をまとめて出します。

全部の家を一度に片づけようとすると、いつまでも始まりません。これから車検が近い家から手をつければ、振った番号がすぐ案内で役に立ちます。車1台ずつの情報の持ち方は車両情報の関連記事へ、客全体の分け方は顧客の分け方の関連記事へ続きます。