店長の個人LINEで回している ― その危うさはどこにあるか
あなたの店では、客とのやり取りが店長や担当者の個人LINEに溜まっていませんか。気心の知れた客と直接つながれて、便利に見えます。困るのは、その人が辞めたり長く休んだりした瞬間です。客とのつながりは個人の端末ごと店から消え、ほかのスタッフは誰が客だったかすら引けません。
もう一つの危うさは、誰に何を送ったかが店に残らない点です。個人LINEのやり取りは台帳とつながらないので、「車検が近い人にだけ案内する」という使い方ができません。客とのつながりを個人ではなく店で持つために、店の名義で持てるLINE公式アカウントへ移します。これが切り替えの出発点です。
LINEは客層に直接届く ― 60代でも9割が使う
そもそもLINEで案内して届くのか、と迷うなら数字を見ます。LINEは全年代で利用率が91.1%、年代別でも10代から60代まで9割を超え、70代でも71.8%が使っています(総務省・2025年6月公表)。はがきやDMより、客の手元に直接届く連絡口です。
| 年代 | LINE利用率 | 店にとっての意味 |
|---|---|---|
| 全年代 | 91.1% | 主要な客層はほぼLINEを使っている |
| 10〜60代 | いずれも9割超 | 働く世代・車検の主力層に届く |
| 70代 | 71.8% | 高齢の客には電話・はがきを併用 |
注意点が一つあります。70代では3割近くがLINEを使っていません。高齢の常連客が多い店では、LINEに一本化せず、電話やはがきを残します。手段の選び分けは別の関連記事にゆずり、ここではLINEが届く層には強い、という前提で進めます。
LINE公式を「何に使い、何に使わないか」を先に決める
LINE公式アカウントを開いてから多くの人が迷うのは、「何を送っていいか分からない」ところです。先に用途を線引きしておくと、迷いも、客に嫌われる送り方も減ります。自動車店なら、こう分けます。
| 使う | 使わない |
|---|---|
| 車検・点検の時期が近い人への案内 | 登録者全員への一斉宣伝 |
| 入庫日・仕上がりのお知らせ | その場で値が決まらない複雑な見積もり |
| 引き渡し後の「調子はどうですか」の一報 | 夜間・休日の即レスを前提にしたやり取り |
| リコールや部品交換の必要連絡 | クレームの込み入った交渉(電話・対面へ) |
線引きの軸は単純です。時期と結びつく案内に使い、込み入った交渉や宣伝には使わない。LINEは届くからこそ、関係ない情報を送ると一気にブロックされます。込み入った話は電話と対面に戻すと、LINEは「案内の口」として長く生きます。
誰を登録に変えるか ― 来店のその場で増やす
LINE公式は、登録してくれた客にしか届きません。だから「どう増やすか」が最初の壁になります。広告で広く集めるより、すでに来ている客を一人ずつ登録に変えるほうが、自動車店には合っています。理由は、車検でほぼ全員が2年に1度は店に来るからです。
- 来店した客にその場でQRを見せる:会計や引き渡しのときに「車検の案内をLINEで送ります」と一言。その場が一番登録してもらえます。
- 個人LINEの客を移す:すでに店長の個人LINEでつながっている客に、公式アカウントを案内して移ってもらいます。つながりを店側に集めます。
- 登録の見返りを小さく一つ:次回点検の割引や洗車一回など、登録のきっかけを一つ用意します。大盤振る舞いは不要です。
- 台帳に印をつける:登録してもらったら、その客の台帳に「LINE登録あり」と記録します。これで案内の手段が客ごとに分かります。
一度に全員を登録に変えようとしなくて大丈夫です。車検が一巡する2年で、来店した客から順に登録が溜まっていきます。
台帳の次回車検日と結ぶ ― 全員でなく「近い人」に送る
LINE公式が顧客維持で効くか効かないかは、ここで決まります。登録者全員に同じ案内を一斉送信すると、関係ない案内が続いてブロックされます。台帳の次回車検日を見て、近い人だけに送る。これでブロックを避けつつ、案内がちょうどいい時期に届きます。
順番はこうなります。台帳で次回車検日を引き、来月・再来月が満了の客を抜き出す。そのうちLINE登録ありの客にはLINEで、登録なしの客には電話やはがきで案内する。送ったら台帳に記録を残す。LINEは送る手段の一つで、誰にいつ送るかを決めるのは台帳のほうです。
ブロックと個人情報 ― つまずきやすい2か所
最後に、LINEを顧客維持に使うときにつまずきやすい2か所を押さえます。どちらも、知っていれば避けられます。
ブロックされない送り方
客がブロックする一番の理由は、配信の多さです。月に何度も宣伝が届けば、関係ない客から順にブロックします。一斉送信を控え、車検・点検が近い人に絞れば、配信は客ごとに年に数回で済みます。届く相手を絞ることが、結局いちばんブロックされない送り方です。
個人情報の最低限
LINEのIDと氏名・車両を結びつけて持つ以上、台帳と同じく個人情報保護法の対象になります(事業者なら件数に関わらず対象です)。難しく考えなくて大丈夫ですが、最低限の2つは守ります。
- 何に使うか決めて客に分かるようにする:「車検・点検の案内に使う」と用途を決め、登録時に伝えます。集めた目的の外には使いません。
- 解除の求めに応じる:客が登録をやめたい・連絡を止めたいと言えば、すぐ応じます(出典:個人情報保護委員会)。
あなたが今日できる一手は小さくて済みます。台帳に「LINE登録の有無」の1列を足し、次に来店した客から登録してもらうところから始めます。送る中身と時期の決め方は案内の関連記事へ、電話・はがきとの使い分けは別の関連記事へ続きます。