車検前だけの連絡では、2年に一度しか客に会えない
あなたの店では、車検の満了が近づいてから案内を出していませんか。それ自体は正しいのですが、連絡がそこだけだと、お客さまと接するのが2年に一度の点になります。自家用乗用車の車検は新車で初回3年、その後は2年ごと。つまり何もしなければ、次に声をかける機会は2年後まで来ません(出典:国土交通省)。
その2年の間に、ディーラーの点検案内や他店のDMが届きます。前回どこで車検を受けたかは、お客さまの記憶ほどあてになりません。2年も間が空けば、店の名前は薄れます。車検案内を出しても返事が鈍くなるのは、案内が下手だからではなく、その2年が空白になっているからです。点でしか会えていない関係を、線に変える。これが年間の接点設計です。
長く通ってもらう価値は数字でも見えます。乗用車の平均使用年数は13.35年(令和7年3月末・軽自動車を除く)。1人のお客さまは1台を10年以上乗り、その間に車検は何度も巡ってきます。1回の車検で終わらせるか、次の車検へつなぐかで、1台から受け取れる仕事の量は大きく変わります(出典:自動車検査登録情報協会)。
設計の軸は「次回車検日」 ― そこから1年を逆算する
接点を設計するとき、思いつきで「そろそろ連絡しよう」と動くと、出す月がばらつき、結局抜けます。基準にするのは次回車検日の1点だけです。車検日が決まれば、ほかの接点は全部そこから逆算で置けます。
逆算の基本はこうです。継続検査は満了日の2か月前から受けられるので、案内の起点は満了2か月前。そこから車検は2年周期なので、ちょうど中間にあたる約1年後に法定12か月点検の時期が来ます。この点検は道路運送車両法で義務とされていますが、罰則がないため受けない人も多く、案内しなければ素通りされます。声をかける理由がはっきりある接点です(出典:国土交通省)。
車検と車検の間に置く接点 ― 点検・季節・引き渡し後
2年の空白を埋めるのは、3種類の接点です。どれも「用のある連絡」なので、出しても嫌がられにくく、店を思い出してもらえます。
- 法定12か月点検:車検の約1年後。義務だが受けない人が多いので、案内する意味があります。点検で不具合を早めに見つければ、次の車検費用の見通しも立ちます。
- 季節の連絡:夏前ならエアコン・タイヤ、冬前ならバッテリー・冬用タイヤ。その時期に困りやすい一点に絞ると、押し売りになりません。
- 引き渡し後のひと声:車検や整備で預かった車を返したあと、お礼と次回の予告を短く伝えます。ここで関係が一段深まります。
全部を毎回やろうとしなくて大丈夫です。まず車検案内と12か月点検案内の2つを外さずに出すだけで、年に2回は必ず接点ができます。季節の連絡と引き渡し後のひと声は、回しながら足していきます。
年間の接点を暦に固定する ― いつ・何を・誰が出すか
接点を決めても、頭の中に置いたままでは出し忘れます。次回車検日からの逆算を、月ごとの暦に落とすと、毎月やることが決まります。下の表は、ある1台の車検日を起点にした年間の設計例です。
| 時期(車検日から逆算) | 出す接点 | 中身 | 手段の例 |
|---|---|---|---|
| 満了2か月前 | 車検案内 | 満了日・概算費用・予約のお願い | はがき/LINE/電話 |
| 満了1か月前 | 車検の再案内 | 返事のない人へ重ねて連絡 | 電話/LINE |
| 車検直後 | 引き渡し後のひと声 | お礼・次回点検の予告 | LINE/一言メモ |
| 夏前・冬前 | 季節の連絡 | 冷房・タイヤ・バッテリーの一点 | はがき/LINE |
| 車検の約1年後 | 12か月点検案内 | 点検時期のお知らせ・入庫の提案 | はがき/LINE |
大事なのは、これを担当任せの記憶で回さないことです。誰が出すか・いつ出すかを決め、台帳の次回車検日から「今月案内する相手」を毎月頭に抜き出します。月初の30分を案内リストの確認にあてれば、出し忘れはほぼ消えます。
接点を増やしても嫌われない線引き
接点を増やすと聞くと、しつこく連絡して嫌われないか、と心配になるかもしれません。嫌われるのは回数ではなく、用のない連絡です。次の線引きを守れば、接点は多くてもうるさく感じられません。
- その車に必要な連絡だけにする:点検時期・部品の交換目安・車検のお知らせは、相手の車に用がある話です。一律のセール告知ばかりだと飽きられます。
- 時期を決め打ちする:思いついたときに送らず、暦で決めた月に出します。出す側のペースが安定すると、受け取る側も身構えません。
- 手段は相手に合わせる:高齢のお客さまにはがき、若い世帯にLINE、というように、台帳の連絡してよい手段に従います。
接点の数を競うのではなく、相手の車に合った中身を、決めた時期に届ける。これができていれば、お客さまは連絡を「気にかけてくれている」と受け取ります。
設計図を1枚にする ― 今日から書ける年間の暦
あなたの店で接点設計が続くかどうかは、立派な計画より、1枚にまとまっているかで決まります。頭の中や別々のメモに散らばっていると、結局その場の判断に戻ります。最後に、今日から書ける形でまとめます。
- 台帳から直近1年に車検が来る相手を抜き出す:次回車検日で並べ替え、これから1年ぶんを対象にします。
- 1台ごとに接点の月を書き込む:車検案内・12か月点検案内・季節の連絡を、車検日から逆算して暦に置きます。
- 担当と確認日を決める:誰が出すか、毎月いつリストを見るかを決め、月初の確認を習慣にします。
完璧な設計図でなくてかまいません。まず今日、直近1年に車検が来るお客さまを台帳から抜き出し、車検案内・12か月点検案内・季節の連絡の3つを暦に書き込むところから始めます。個々の案内文や手段の選び方、出した案内を予約につなぐ工夫は、関連記事へ続きます。