点検の入庫が少ないのは、案内していないからではない

あなたの店で、車検の入庫はあるのに定期点検の予約はぽつぽつ、という状態になっていませんか。点検の案内を出しても反応が薄い、思い出したときに声をかけるだけになっている。この入庫の少なさは、案内をさぼっているから起きるのではありません。点検は車検と違い、客の側に「受けないといけない期日」が見えないから起きます。

自家用乗用車の定期点検は、道路運送車両法で使用者の義務とされ、1年ごとに29項目を点検します(出典:国土交通省)。それでも、受けない客は珍しくありません。国の点検整備推進運動の調べでは、12か月点検を毎年必ず受けている人は半数ほどにとどまります。義務であっても罰則がなく、車検のように切れる日が来ないため、点検は客の中で後回しになります。だからこそ、店から先に声をかけるかどうかで入庫が変わります。

車検と定期点検は、案内の起点が違う

点検の案内がうまくいかない店ほど、車検の案内と同じ感覚で点検を出しています。車検は満了日という決まった期日が客にも見えるので、案内が遅れても客のほうから連絡が来ます。定期点検にはその期日がありません。起点が違うものを同じやり方で回すから、点検だけ抜けます。

項目車検定期点検(12か月点検)
案内の起点満了日(証書に書いてある)前回整備日(店しか知らない)
客から動くか切れるので自分から動く期日が見えず動かない
受けないと公道を走れないすぐ困らない(後回しになる)
店の役割取りこぼしを止めるこちらから思い出させる

つまり点検は、案内を出すこと自体が入庫の条件になります。前回いつ整備したかは店の台帳にしか残っていないので、その日付を起点に、店から時期を決めて声をかけます。次は、その案内が増えない原因を順に見ていきます。

原因1:誰に点検を出すか、台帳から出てこない

あなたの店では、来月に12か月点検の時期が来る客を、何分で一覧にできますか。車検満了日は車検証から拾えますが、点検の起点になる前回整備日は、整備伝票や記憶の中に散っていることが多いはずです。起点が引けないと、案内の相手がそもそも決まりません。

必要なのは、台帳に前回整備日の列を持ち、そこで並べ替えられる形にすることです。車検案内のために次回車検日を持っている店は多いですが、点検のためには前回整備日が要ります。両方を1台ごとに持っておけば、車検の谷にあたる時期の客を抜き出せます。

  • 台帳に「前回整備日」と「前回の整備内容」の2列を足します。点検案内はこの2列から始まります。
  • 前回整備日で並べ替えれば、11か月前後の客が固まりで出ます。そこが今月の点検案内の相手です。
  • 1人が複数台持つ場合は、車ごとに前回整備日が違います。人ではなく車で引ける形にしておきます。

台帳に何を持たせるかの全体は別の記事にまとめています。点検が出せない根は、前回整備日を引ける形で残していないことにあります。

原因2:出す時期が前回整備日から決まっていない

相手が決まっても、いつ出すかが毎回ばらつくと入庫は伸びません。点検には満了日がない分、時期を店のルールで固定します。前回整備日から数えて、12か月点検なら11か月目に1回目を出すのが目安です。1か月の余裕をみることで、客が日程を決める時間ができます。

出す時期(前回整備日から)ねらい
1回目11か月目点検の時期が来たと先に知らせる
2回目12〜13か月目(返事がない客)後回しにした客を電話で拾う
車検の谷車検と車検の中間1年間の空白に1回会う機会を作る

大切なのは、この時期を毎月そろえることです。点検は切れないので、今月忘れても誰からも催促されません。その分、店が時期を決めて回さないと、案内ごと消えます。前回整備日を起点に置く、という1点が点検案内の背骨になります。

原因3:「点検しませんか」だけでは、客が動かない

相手と時期を決めても、案内の中身が「そろそろ点検の時期です」だけだと、客は動きません。車検のように受けないと困る理由がないからです。ここで効くのが、その車に固有の理由を1つ添えることです。全員に同じ文面を送るのではなく、台帳の整備履歴から理由を変えます。

  1. 前回交換した部品の次の時期:「前回のバッテリーから2年が近い」など、履歴から具体的に書きます。
  2. 走行距離から見た消耗:「走行が多いのでブレーキの減りを点検で見ておきたい」と、その車の使い方に合わせます。
  3. 保証や次の車検への影響:点検を続けると保証が保てる、次の車検で大きな整備を避けられる、という先を示します。

客ごとに理由を変えるのは手間に見えますが、台帳に整備履歴があれば、文面の1行を差し替えるだけです。点検という言葉ではなく、その車のどこを見ておきたいかを伝えると、返事の数が変わります

点検は次の車検への橋渡しになる 点検で1回会えると、消耗品の交換や次の車検の相談が自然につながります。車検と車検の間が空くほど、客は別の店の広告に触れます。年に1回の点検で顔を合わせておくと、次の車検を取りこぼさない土台ができます。

毎月1回、車検の谷に点検を差し込む手順

台帳に前回整備日があれば、専用の道具を入れなくても始められます。次の手順を毎月同じ日に回すだけで、点検の入庫は積み上がります。

  1. 毎月決めた日に抜き出す:前回整備日で並べ、11か月前後に来る車を一覧にします。日を固定するのが肝心です。
  2. 理由を添えて1回目を出す:整備履歴からその車の理由を1行入れ、案内した日を台帳に書き込みます。
  3. 返事のない客を電話で追う:12〜13か月目に、つかまらなかった客へもう一度声をかけます。
  4. 結果を残す:入庫したか、見送りかを書き込みます。次の年の案内が同じ表から回せます。

この手順が回り始めると、車検と車検の間に1回、客と会う機会ができます。月の件数が増えて抜き出しがつらくなってきたら、前回整備日から点検時期が近い客を自動で知らせる道具を検討する段階です。まずは台帳に前回整備日の列を足し、11か月目の客を毎月抜き出すところから始めます。1年間の接点をどう設計するか、車検案内をどう取りこぼさないかは、下の関連記事で続けて読めます。