客のいる場所が紙から画面へ動いている

判断の前に、客がどこにいるかを確かめます。総務省の調べでは、スマートフォンを使う世帯は2024年で90.5%にのぼります。ネットにつなぐ機器としても、スマホの利用が74.4%でパソコンの46.8%を上回り、2017年にはパソコンを追い抜きました。車検が近づいた人の多くが、ポストの紙ではなく手元の画面で「近くの 車検」と探すように変わっています。

あなたの店の客層も静かに動いています。古い車ほど車検・整備が増えるのに、その車の持ち主が頼り先を画面で探す。自動車検査登録情報協会の調べでは、2025年3月末で乗用車の平均車齢は9.44年と、33年連続で上がり続けています。整備の需要そのものは細っていません。届け方だけが、紙から画面へずれているということです。

とはいえ「世の中はWeb」だけで予算を動かすのは乱暴です。あなたの地域、あなたの客に、いまチラシがいくらで効いているかを先に数えます。

チラシ1台あたりの費用を出す

チラシの良し悪しは「枚数」でも「反応率」でもなく、最後は1台あたりいくらで入庫を呼んだかで見ます。出し方はやさしい割り算です。

チラシの1台あたり費用
  1. 1回の費用を出す(印刷代+配布代)。例:1万枚で印刷5万円+配布3万円=8万円。
  2. そのチラシから来た入庫台数を数える(後述の記録で取る)。例:8台。
  3. 8万円 ÷ 8台 = 1台あたり1万円。これがチラシの単価です。
  4. 車検1台の粗利と並べる。粗利が下回るなら、その配り方は赤字で回しています。

ここで効いてくるのが反応の数え方です。配ったきり数えていないと、この割り算ができません。ポスティングの反応は一般に0.1〜0.3%前後と言われますが、地域・時期・中身で大きく振れるので、よその平均ではなく自店の実数で測ります。「このチラシを見た」と言ってもらう一言、専用の電話番号、チラシ限定の点検特典――どれか1つを入れて、来た人に必ず聞いて記録する。これだけで、配布数に対して何台つながったかが残ります。

Web側の費用を同じ式で並べる

Webも同じ「費用 ÷ 入庫台数」で出します。違うのは、Webには費用ゼロの土台があることです。Googleの地図情報(Googleビジネスプロフィール)は登録も手入れも無料で、ここを埋めるだけで「近くの 車検」で見つけてもらえます。無料分から1台でも入庫が来れば、その単価はチラシより必ず安くなります。

手段主な費用1台あたり費用の出し方
チラシ・ポスティング印刷代+配布代(撒くたびにかかる)1回の費用 ÷ そのチラシから来た入庫
地図情報(無料)0円。手入れする時間だけ0円 ÷ 入庫 = ほぼ0円/台
検索広告(地域を絞る)クリックされた分だけの広告費月の広告費 ÷ 広告から来た入庫
ホームページ制作費(一度)+更新の手間制作費を見込み年数で割り+月の費用 ÷ 入庫

地図情報・広告・ホームページのどれから入庫が来たかは、「どこで知ったか」をひと言聞けば分かります。Webの入庫も1台ずつ記録して、チラシの単価と横に並べる。役割は違っても、安く入庫を出しているほうが数字で見えてきます。

無料の土台から埋める

お金をかける前に、無料の地図情報を先に埋めてください。基本情報・口コミ・写真の手入れは費用ゼロで、検索から来店までいちばん近い。手順はGoogleマップ(MEO)の手入れの順番にまとめています。ここをやり切ってから、足りない分を有料に回します。

どちらに何枚分を回すか決める

2つの単価がそろえば、判断はもう機械的です。1台あたりの費用が高いほうの予算を、安いほうへ少しずつ移します。一気に全部を動かさないのは、月ごとに数字が振れるからです。

予算を移す手順(毎月)
  1. 先月のチラシの1台あたり費用と、Web(地図・広告)の1台あたり費用を並べる。
  2. 高いほうの予算を1割ぶん、安いほうへ回す。例:チラシが高ければチラシを1回減らし、その分を地域を絞った検索広告へ。
  3. 翌月また両方の単価を出して、効いた方向ならもう1割移す。逆に戻ったら止める。
  4. 3か月続けて、安いほうへ寄った配分で落ち着かせる。

この動かし方なら、判断を外しても痛手は1割です。「チラシを全部やめてWebに賭ける」と決め打ちして外したときの損は、これで避けられます。あなたの店の客にいま何が効くかは、あなたの入庫だけが知っています。

チラシを残したほうがいい場面

数字を出すと、Webへ全部移さないほうがいい店も見えてきます。チラシには紙でしか届かない強みがあるからです。次に当てはまるなら、チラシの枠は残して中身を磨きます。

チラシは「まだ探していない人に知らせる」、地図と検索は「いま探している人に見つけてもらう」。役割が違うので、勝ち負けではなく組み合わせます。残すチラシは、配布範囲を効いた地域だけに絞り、1台あたり費用を下げていく。やめるのではなく、効くところに集める発想です。

数えずに続けるのがいちばん高い

反応を記録しないまま「ずっとやっているから」で配り続けると、効かないチラシに毎月お金が消えます。逆に「もう紙は古い」と感覚でやめると、効いていた地域の入庫まで落とします。どちらも、自店の数字を見ていないことが原因です。判断材料は外の平均ではなく、あなたの入庫1台ずつの記録にあります。

今月やること ― 入庫の記録から

難しい仕組みは要りません。今月の入庫から「どこで知ったか」を取り始めれば、来月には最初の比較ができます。

今月の入庫で始める記録
  1. 受付の台帳かスマホのメモに「チラシ/地図/検索/紹介」の欄を1つ足す。
  2. 点検・車検で来た人に「何で当店を知りましたか」とひと言聞いて記録する。
  3. 次に撒くチラシに専用番号かチラシ限定特典を入れ、チラシ経由を見分けられるようにする。
  4. 無料の地図情報を埋め、「近くの 車検」で自店が出るかを自分のスマホで確かめる。
  5. 1か月後、チラシとWebの1台あたり費用を出して、高いほうから1割を移す。

この記録さえ回り出せば、チラシかWebかの議論は終わります。あとは毎月、安く入庫を出すほうへ配分を移すだけです。予算を増やすのではなく、同じお金を効くほうへ動かすのが、いちばん確実な打ち手です。何にいくら振るかの全体像は、整備工場の集客予算、どこからでまとめました。

よくある質問

チラシはもうやめたほうがいいですか。
やめる話ではありません。チラシで1台を呼ぶのにいくらかかったかを、配布数・反応・客単価から出してください。その金額が、地図や検索で1台を呼ぶ金額より高ければ、高い分だけWebへ回す。チラシが効いている地域や年齢層が残っていれば、そこは残します。全部やめる・全部移すではなく、1台あたりの費用が安いほうへ少しずつ移すのが安全です。
チラシの反応はどう数えればいいですか。
次に撒くチラシに「このチラシを見た」と言ってもらう一言や、専用の電話番号、チラシ限定の特典を入れます。来店時にどこで知ったかをひと言聞いて記録するだけでも、配布数に対して何台つながったかが見えます。配ったきり数えていないと、効いているかどうかを判断できないまま予算だけ続けることになります。
Webに移すなら、まず何にお金を使えばいいですか。
お金をかける前に、無料のGoogleビジネスプロフィール(店の地図情報)を埋めてください。「地名 車検」で探す人は今日明日に動きます。基本情報・口コミ・写真の手入れは費用ゼロです。そこをやり切ってから、足りない分を地域を絞った検索広告やホームページに回します。いきなり有料広告から入ると、土台の弱いまま費用だけ増えます。
高齢のお客さんが多いので、チラシのほうが届く気がします。
その実感は正しいことが多いので、年齢層で分けて考えます。チラシで来た客の年齢を記録すれば、どの層に効いているかが分かります。スマートフォンを使う世帯は2024年で9割を超えていて、車検前に「近くの車検」と調べる人は増え続けています。高齢層に効くチラシは残し、調べてから動く層にはWebで届く、と両方を役割で分けるのが現実的です。
出典(取得日:2026年6月4日)
  1. 総務省「令和7年版 情報通信白書」情報通信機器・端末(スマートフォンの世帯保有率90.5%/2024年)
    https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd21b110.html
  2. 総務省「令和7年版 情報通信白書」インターネット接続端末(接続端末としてスマホ74.4%がパソコン46.8%を上回る・2017年に逆転)
    https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd111110.html
  3. 一般財団法人 自動車検査登録情報協会「わが国の自動車保有動向」(2025年3月末。乗用車の平均車齢9.44年で33年連続上昇)
    https://www.airia.or.jp/publish/statistics/trend.html

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