Q.なぜ仕入れ資金は気づいたときには詰まっているのか

会場で良い車に出会う。相場より安く取れそうだから、つい手を挙げる。1台ずつの判断は間違っていないのに、月末になると支払いが重く、次の仕入れに回す現金が足りない。あなたの店でも、こういう詰まり方をしていないでしょうか。

原因は、仕入れを台数で見て、現金の戻りで見ていないことにあります。仕入れた車は、売れて入金されるまで現金が在庫に姿を変えたまま戻りません。在庫が1台増えるたびに、その仕入れ額ぶんの現金が手元から消え、棚の上で眠ります。店頭で台数が増えていくのは、現金が在庫に置き換わっていく姿そのものです。

冒頭の表のとおり、在庫10台の店でも、同時に1,000万円前後の現金が在庫に縛られていることは珍しくありません。この縛られた現金が大きくなるほど、次に良い車が出ても買えない。仕入れ資金の管理とは、台数を減らすことではなく、現金が戻ってくる速さを管理することです。

Q.月にいくらまで仕入れに回せるか ― 予算枠の決め方

仕入れ予算を「売上の何割」で一律に決めると、現金が薄い月でも枠どおりに買い、支払いで詰まります。枠は割合ではなく、手元の現金から逆算して決めます。

運転資金を先に取り分ける

まず、毎月必ず出ていく家賃・人件費・諸経費の数か月分を運転資金として取り分けます。ここに手をつけないと決めた額を引いて、残った現金が仕入れに回せる自己資金です。突発の出費や売れ行きの谷を吸収する余白を残すために、現金を1円残らず仕入れに回すことはしません。

予算枠は1台ごとの上限の積み上げで管理する

仕入れに回せる自己資金と、在庫融資で使える枠を足したものが、その月の仕入れ予算枠です。会場では、1台ごとに上限落札価格を決めて応札しますが、その上限の積み上げが予算枠を超えそうになったら、その時点で買うのをやめます。上限落札価格の出し方は オートオークションでの仕入れ で扱っています。1台の上限を守るだけでなく、月全体の枠で歯止めをかけるのが、資金繰りを守る二段目の守りです。

枠の決め方の順番:運転資金を取り分ける → 残った自己資金を出す → 使える在庫融資枠を足す → 月の仕入れ予算枠を決める → 1台ごとの上限の積み上げで管理する。台数の上限ではなく、金額の上限で枠を引きます。

Q.1台の資金が戻るまで何日かかるか

同じ100万円の仕入れでも、30日で売れて現金になる車と、120日棚に残る車では、資金繰りへの重さがまるで違います。現金が戻る速さは、次の3つで決まります。

  • 1台の仕入れ額 ― 高いほど、戻るまで縛られる現金が大きい
  • 売れるまでの日数(在庫日数) ― 長いほど、現金が在庫のまま動かない
  • 同時に持つ台数 ― 多いほど、店全体で寝かせる現金が積み上がる

この3つを掛けた額が、店が同時に寝かせている現金です。資金が回らないとき、台数を減らす前に、1台あたりの在庫日数を縮めるほうが効くことが多くあります。日数が縮めば、同じ現金がより速く戻り、次の仕入れに使い回せるからです。在庫日数の出し方と縮め方は 中古車の在庫が回らない店の数字の見方 で扱っています。仕入れ資金の管理と在庫回転の管理は、同じ現金を別の角度から見たものです。

滞留車が資金を二重に縛る:長く売れない車は、現金を縛り続けるうえに、保管と金利の費用も食い続けます。冒頭の表の滞留車1台が150日縛る110万円は、その間ほかの車を仕入れる元手になったはずの現金です。滞留しかけた車は、値を下げてでも早く現金に戻すほうが、次の仕入れの体力になります。

Q.仕入れの資金をどこから持ってくるか

仕入れの元手は、大きく自己資金・在庫融資・下取りの3つです。それぞれ性格が違うので、車のタイプで使い分けます。

資金の出どころ性格向く使い方
自己資金金利がかからず、いつでも動かせる。額には限りがある回転の速い定番車を素早く仕入れ、短い日数で現金に戻す
在庫融資(在庫を担保にした借入)自己資金を超えて仕入れられるが、売れるまで金利が発生する単価が高く、回転の見込める車。長期在庫には使わない
下取り車新たな現金を出さずに在庫が増える。販売とセットで入る自店で売れる下取り車を在庫に回し、外に流す車と仕分ける

在庫融資は、自己資金の不足を補う一方で、売れるまで利息が粗利を削り続けます。回転の見込めない車に融資を回すと、利息が積み上がり、安く仕入れたつもりが手元に残りません。融資は回転の見込める車に限り、滞留しそうな車にはそもそも資金を回さない。この線引きが、借入を体力に変えるか重荷に変えるかを分けます。

下取りは、新たな現金を出さずに在庫を増やせる仕入れです。ただ、自店の客層で売れない下取り車を在庫に抱えると、現金を出さずに滞留車を作ることになります。下取り車は、自店で売る車と、会場へ流す車に最初に仕分けます。下取りを仕入れにつなげる考え方は 買取の提示額、粗利から逆算して決める の延長で整理できます。

Q.相場が高値圏のいま、資金繰りで気をつけること

仕入れ資金の重さは、相場の動きでも変わります。直近は、1台あたりの仕入れ単価が高い水準で動いています。

USS 2025年度 平均成約単価
125.5万円(前年比+4.1%)
オートオークション最大手USSの2025年度実績。成約率67.0%(出典1)
2025年 中古車登録台数(自販連)
363.2万台(前年比−0.8%)
3年ぶりの前年割れ。小型乗用車118.1万台は過去最低(出典2)

会場の落札単価が上がると、同じ台数を仕入れるのにより多くの現金が要ります。一方で、国内の中古車登録台数は前年を割り込みました。仕入れは高くつき、売れる台数は増えにくい。この組み合わせのとき、無理に台数を追うと、現金を在庫に縛られたまま売り先が見つからない、という詰まり方をします。高値圏では、台数を広げるより、回転の見込める車に資金を集中させ、1台ずつ確実に現金へ戻すほうが、資金繰りは安定します。

数字の見方:USSの平均成約単価は会場全体の平均で、自店が狙う価格帯とは異なります。自店の仕入れ単価が上がっているかは、過去の落札記録と突き合わせて確かめてください。相場のつかみ方は 中古車の相場のつかみ方 で扱っています。

Q.資金が詰まりかけたときの止め方

資金繰りは、底をつく前に必ずサインが出ます。決算を待たず、月のうちに見える兆しで早めに手を打ちます。

  • 在庫日数が長い車が、店頭に何台も並んでいる ― 現金が在庫のまま動いていない
  • 支払いのために、回転の速い車を相場より安く急いで売っている ― 現金を作るための投げ売り
  • 良い車が会場に出ても、現金がなくて見送る回が増えた ― 縛られた現金が枠を食っている

このサインが出たら、新しい仕入れをいったん止め、手元の在庫を現金に戻すことを先にします。値を下げてでも滞留車を売り、戻った現金で運転資金の余白を立て直します。詰まりかけのときに新しい車を足すのは、火に薪をくべるのと同じです。仕入れを止めて在庫を現金に戻す。順番を逆にしないことが、資金繰りを立て直す要です。

Q.次の仕入れ前にやること

次に会場へ行く前に、この順で資金の側を固めます。

仕入れ資金を管理する手順

やることいつ狙い
運転資金を取り分け、仕入れに回せる現金を出す月初支払いで詰まらない余白を確保する
自己資金+在庫融資枠で月の仕入れ予算枠を決める月初金額の上限で歯止めをかける
在庫の縛られている現金(仕入れ額の合計)を出す毎週同時に寝かせている現金を把握する
在庫日数の長い車を1台選び、現金化の手を打つ毎週縛られた現金を戻し、枠を空ける
落札車の仕入れ額・販売日数・回収日を記録する販売後現金が戻る速さを車種ごとに見える化する

記録を重ねると、どの車種が速く現金に戻り、どの車種が現金を縛りやすいかが見えてきます。速く戻る車に資金を集中し、縛りやすい車は枠を絞る。仕入れ資金は、この記録の回数だけ回り方が良くなります。

Q.よくある質問

仕入れ予算は売上の何割を目安に決めればいいですか
一律の割合より、手元現金から逆算するほうが安全です。当面の運転資金(家賃・人件費・諸経費の数か月分)を先に取り分け、残った現金と、在庫融資で使える枠の合計が仕入れに回せる上限です。この上限を月の仕入れ予算枠として決め、1台ごとの上限落札価格の積み上げがこの枠を超えないように管理します。台数でなく、戻ってくる現金の総額で考えます。
在庫を持つほど資金が詰まるのはなぜですか
仕入れた車は売れて入金されるまで現金が在庫に変わったまま戻りません。1台ごとの仕入れ額に在庫日数を掛けた合計が、店が同時に寝かせている現金です。在庫が増えるほど、また1台が売れるまでの日数が延びるほど、次の仕入れに回せる現金が減ります。仕入れ資金の管理は、台数の管理ではなく現金が戻る速さの管理です。
自己資金と在庫融資はどう使い分ければいいですか
回転の速い定番車は自己資金で素早く仕入れて短い日数で現金化し、単価が高く資金の拘束が長い車は在庫融資の枠を使うと、自己資金を寝かせずに済みます。在庫融資は売れるまで金利が発生するため、長期在庫に使うと利息が粗利を削ります。融資は回転の見込める車に限り、滞留しそうな車にはそもそも資金を回さない、という線引きが要です。

出典

  1. USS 2025年度の出品・成約実績(平均成約単価125万5000円・前年比4.1%増、成約率67.0%)― 日本自動車会議所「USSの出品台数、2025年度は4年連続で過去最高」(USS 2026年4月6日発表)https://www.aba-j.or.jp/info/industry/26434/(取得日 2026-06-04)
  2. 2025年 中古車登録台数(自販連分363万2179台・前年比0.8%減、小型乗用車118万970台で過去最低)― 日本経済新聞「2025年中古車登録・届け出、3年ぶりマイナス」(自販連 2026年1月15日発表)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC152X10V10C26A1000000/(取得日 2026-06-04)
平均成約単価・登録台数は会場全体・全国の値で、自店が狙う価格帯や地域の実勢とは異なります。本記事の数字は資金繰りの背景を示すためのもので、自店の仕入れ単価・在庫日数は過去の記録から確かめてください。在庫融資や税務の個別の判断は、取引先の金融機関・信販会社や顧問の税理士にご相談ください。
編集部より

仕入れ予算と在庫の現金を、店の仕組みで管理したいときは

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