Q.全国ランキングをそのまま仕入れると、なぜ外れるか

雑誌やサイトで「中古車販売台数1位はこの車種」と見て、よし次はこれを仕入れよう、と決める。一度はやった手です。ところが同じ考えで動く店は全国に大勢いて、人気上位の車は会場でも札が集まり、落札価格が上がります。高く仕入れた車は、そのぶん売価を上げるか粗利を削るしかありません。順位を追ったつもりが、利益の薄い在庫を抱える結果になりがちです。

全国ランキングが示すのは「全国でよく動いている車種」です。あなたの商圏でその車が売れるか、いま自店の店頭に並べて回るかまでは示しません。雪国で多く使われる四輪駆動車も、都市部の小型車も、全国で合算すれば1つの順位に丸められます。商圏の客層がほしがる車と、全国で一番動く車は、必ずしも一致しません。

売れ筋を読むとは、順位を覚えることではなく、自店で回る車を絞ることです。手がかりは3つあります。商圏の登録データ、季節の需要の山、そして自店の販売実績です。この3つを重ねれば、ランキングよりずっと当たる候補が見えてきます。

Q.商圏で何が使われているかを登録データで読む

まず、あなたの地域でどの車種が多く使われているかを押さえます。自動車検査登録情報協会は車種別・地域別の保有台数を、全国軽自動車協会連合会は軽自動車の地域別データを公表しています。これで、商圏でよく走っている車の傾向がつかめます。よく使われている車は、買い替え需要も中古での引き合いも生まれやすい車です。

地域差は小さくありません。たとえば積雪の多い地域では四輪駆動や背の高い車の比率が上がり、都市部では小回りの利く小型車や軽自動車が中心になります。全国では軽自動車の中古販売が伸びており、2025年の軽の中古車販売台数は前年比0.7%増の285万5689台でした(出典1)。ただ、この全国の傾向がそのまま自店の商圏に当てはまるとは限らないので、必ず地域のデータで確かめます。

読み方:地域データは「絶対値」より「自店の客層との重なり」で見ます。商圏で台数が多く、かつ自店が整備や保証で対応しやすい車種が、仕入れの第一候補です。台数が多くても、部品の手配や商品化が難しい車は候補から外します。

Q.売れる時期の山と、仕入れの前倒し

中古車の需要には、はっきりした季節の波があります。進学・就職・転勤が重なる1月から3月は、生活の都合で車を必要とする人が増える時期です。ボーナス後の6月から7月も購入意欲が高まります。販売店の決算にあたる3月と、中間決算の9月は、販売が伸びやすい月です(出典2)。逆に大型連休明けの4月から5月、年末商戦前の10月から11月は動きが鈍りがちです。

需要の山に「商品化が間に合う」状態を作る

売れる時期に売り場へ並んでいなければ、需要の山には乗れません。落札してから点検・整備・クリーニングを終えて店頭に出すまでには日数がかかります。3月の需要に間に合わせたいなら、仕入れと商品化は1月から前倒しで動かします。直前に慌てて仕入れると、相場が上がった時期に高く買うことにもなります。

時期需要の傾向仕入れ・商品化の動き
1〜3月進学・就職・転勤で需要の山。3月は決算で販売が伸びる前年12月〜1月から仕入れと商品化を前倒し
4〜5月連休明けで需要が落ち着く仕入れを抑え、滞留車の整理にあてる
6〜7月ボーナス後で購入意欲が上がる5月から人気車を仕込む
9月中間決算で販売が伸びやすい7〜8月に仕入れと商品化を進める
10〜11月動きが鈍りやすい仕入れを絞り、年明けの山に備える

季節の波の大きさは商圏や扱う車種で変わります。表は一般的な傾向なので、自店の販売台帳で「自分の店は何月に何が売れたか」を確かめ、実際の山に合わせて前倒しの時期をずらします。

Q.自店の販売台帳が一番当たる理由

地域データと季節の波は外枠です。その中で最も当てになるのは、あなたの店の販売台帳です。過去にどの車種・年式・色を、いくらで、何日で売ったか。これは立地と客層と接客をすべて反映した、自店だけの実績です。全国のどんなランキングよりも、自店で次に何が回るかをよく言い当てます。

台帳から、3つの軸で売れ筋を読みます。販売日数が短かった車種は、商圏で引き合いが強い車です。何度もリピートで売れた車種・グレードは、客層に定着している車です。問い合わせは多いのに在庫がなく逃した車があれば、それは仕入れの優先候補です。逆に、過去に長く滞留した車種・色・仕様は、安く出ていても慎重に見ます。滞留した車が店の現金をどう縛るかは 中古車の在庫が回らない店の数字の見方 で扱っています。

台帳に足したい1列:車種・年式・色・仕入額・売価のほかに「販売日数(店頭に出してから売れるまでの日数)」を1列足します。この日数が、季節データや地域データより先に、自店で回る車を教えてくれます。次の仕入れの判断材料はこの記録の積み重ねで増えていきます。

Q.高い仕入れ相場の中で台数をどう置くか

売れ筋を絞れても、何台仕入れるかは別の判断です。いまは仕入れ相場が高い局面にあります。2025年の中古車登録台数は648万7868台で前年比0.2%減と、3年ぶりに前年を下回りました(出典1)。背景には海外需要の強さと、コロナ禍の新車不足で「5年落ち」の中古車が不足している事情があり、競りの価格は通年で高い水準が続きました(出典3)。成約車両単価は2025年10月に130万5000円と過去最高を更新しています(出典3)。

1台あたりの仕入れ額が膨らむときに、回転の遅い車を多く抱えると、保管費と金利の負担が利益を削ります。だからこそ、売れ筋の中でも販売日数の短い車に台数を寄せ、相場の読めない車は1台でも見送ります。売れ筋だから、人気だからと台数を増やすのではなく、自店で短い日数で売り切れる範囲に在庫を抑えます。仕入れていい車・避ける車の線引きは 仕入れで不人気車を掴まない見極め方 でも整理しています。

相場が高い時の置き方:相場が高い局面では、薄く広く揃えるより、自店で確実に回る車種を厚めに、それ以外は最小限にします。1台に縛られる現金が大きいぶん、売れる確証のある車に絞るほど資金の傷みが小さくなります。

Q.3つを重ねて仕入れと展示を決める

地域・季節・台帳の3つがそろったら、仕入れと展示の両方に落とします。3つすべてで上位に来る車が、最優先の仕入れ候補です。地域で多く、季節の山に合い、自店で短い日数で売れた実績がある車は、外れにくい候補です。

  • 3つすべてで上位 ― 最優先で仕入れ、店頭の見やすい位置に置く
  • 地域・台帳で強いが時期が外れる ― 次の需要の山に合わせて仕込む
  • 全国では人気だが商圏・台帳で実績が薄い ― 1台だけ試し、売れ行きを台帳で確かめる
  • 過去に滞留した車種・仕様 ― 安く出ても見送る

展示でも、3つで上位の車を入口や通路側の目につく場所に置き、回転の速い車から見てもらえるようにします。並べ方を変えるだけでも、売れ筋の車に客の視線が集まります。展示と在庫の見せ方は 中古車の在庫回転を上げる打ち手 でも扱っています。

Q.次の仕入れでやること

次に会場へ行く前に、この順で準備します。

次の仕入れの手順

やることいつ狙い
商圏の地域別登録・保有データで多い車種を確かめる月初商圏の需要の外枠をつかむ
自店の販売台帳で販売日数の短い車種を抜き出す月初自店で実際に回る車を特定する
次の需要の山から逆算して仕込む車種を決める山の1〜2か月前商品化を需要に間に合わせる
相場の高い局面では台数を回転の速い車に寄せる仕入れ前現金を縛りすぎない
仕入れた車の販売日数を台帳に記録する販売後次の売れ筋の読みを正す

売って終わりにせず、その車が何日で売れたかを台帳に残します。読みと実績のずれが見えれば、次の仕入れで車種の選び方がぶれなくなります。売れ筋を読む力は、全国ランキングを覚えることではなく、この記録を重ねた回数で上がっていきます。

Q.よくある質問

全国の中古車販売ランキングをそのまま仕入れの基準にしてはいけませんか
ランキングは「全国でよく動いている車種」を示すだけで、あなたの商圏でその車が売れるか、いま店頭に並べて利益が残るかまでは示しません。全国上位の人気車は仕入れの競合も多く落札価格が上がりやすいため、順位だけで追うと高値掴みになりがちです。商圏の登録データ・季節の需要の山・自店の販売実績の3つを重ねて、自店で実際に回る車を絞ります。
自分の商圏で何が売れているかは、どこで調べられますか
自動車検査登録情報協会や全国軽自動車協会連合会が、車種別・地域別の保有台数や新車・中古車の登録台数を公表しています。これで地域でどの車種が多く使われているかの傾向がつかめます。ただし最も当てになるのは自店の販売台帳です。過去にどの車種・年式・色が何日で売れたかを地域データと突き合わせると、商圏で回る車が見えてきます。
中古車が売れる時期と売れない時期はいつですか
進学・就職・転勤が重なる1月から3月と、ボーナス後の6月から7月が需要の山になりやすく、自動車販売店の決算期にあたる3月と中間決算の9月は販売が伸びやすい時期です。逆に大型連休明けの4月から5月、年末商戦前の10月から11月は動きが鈍りがちです。売れる時期に間に合うよう、その1〜2か月前から仕入れと商品化を前倒しで進めます。
仕入れ相場が高いいまは、売れ筋でも台数を絞るべきですか
2025年の中古車登録台数は前年比0.2%減と3年ぶりに前年を下回り、海外需要と新車不足の影響で仕入れ相場は高い水準で推移しました。相場が高いときは1台あたりの仕入れ額が膨らむため、売れ筋でも回転の遅い車を多く抱えると保管費と金利の負担が重くなります。販売日数の短い車に台数を寄せ、相場が読めない車は見送るのが安全です。

出典

  1. 2025年の中古車登録台数(648万7868台・前年比0.2%減、3年ぶり前年割れ)/軽中古車販売台数(285万5689台・前年比0.7%増)― 日本経済新聞「2025年中古車登録・届け出、3年ぶりマイナス 取引相場は高値で推移」(自販連・全国軽自動車協会連合会の発表に基づく報道)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC152X10V10C26A1000000/(取得日 2026-06-04)
  2. 中古車登録台数の月別統計(需要の季節変動の確認)― 一般社団法人 日本自動車販売協会連合会(自販連)「中古車統計データ」https://www.jada.or.jp/pages/114/(取得日 2026-06-04)
  3. 仕入れ相場の高値推移・成約車両単価(2025年10月 130万5000円で過去最高更新)・海外需要と新車不足による在庫逼迫 ― 日本経済新聞「2025年中古車登録・届け出、3年ぶりマイナス 取引相場は高値で推移」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC152X10V10C26A1000000/(取得日 2026-06-04)
地域別の保有・登録台数は自動車検査登録情報協会および全国軽自動車協会連合会が公表しています。商圏の数字は自店の所在地域のデータを確認してください。季節の需要の傾向は中古車登録台数の月別の動きと販売現場の一般的な傾向に基づくもので、波の大きさは商圏・扱う車種で異なります。自店の販売台帳の実績と突き合わせて判断してください。
編集部より

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