なぜ「効いている気がする」では止められないのか
集客を全部続けてしまうのは、止めて客が減るのが怖いからです。減るかどうかは数えていないので分かりません。怖さの正体は、効果が見えていないことそのものです。本当に困っているのは「チラシが効かない」ことではなく、「効いたかどうかを判断する数字がない」ことです。
整備・車検は、客が動く理由がはっきりした商売です。乗っている車が古くなるほど、点検と修理は増えます。自動車検査登録情報協会の調べでは、2025年3月末で乗用車の平均車齢は9.44歳と、33年連続で上がり続けています。需要そのものは目の前にある。問題は、その需要のうち何台が自店に流れ込んだかを、あなたが数えていないことです。数えれば、続けるか止めるかは感覚でなく引き算で決まります。
集客を4段に分ける ― 見た数・問い合わせ・来店・受注
順位が上がった、アクセスが増えた、という話だけでは入庫が増えたか分かりません。集客は上から下へ人がしぼられていく4つの段でできていて、どの段の数字なのかを区別するのが先です。
| 段 | 数えるもの | これだけ見ても足りない理由 |
|---|---|---|
| ①見た数 | チラシ配布枚数、地図やHPの表示回数・順位 | 見られても、声がかからなければ売上は1円も増えない |
| ②問い合わせ | 電話・ネット予約・問い合わせフォームの件数 | 問い合わせが来ても、来店につながらなければ取りこぼし |
| ③来店 | 実際に店に来た・車を持ち込んだ人数 | 来ても見積もりで帰られたら、受注にならない |
| ④受注 | 入庫し、売上になった台数と金額 | ここが増えて初めて、その集客は効いたと言える |
大事なのは、①の見た数だけが伸びても喜ばないことです。Google/イプソスの2014年の調べでは、スマホで近くの店を探した人の半数が1日以内に来店し、2割弱が1日以内に購入まで進んでいます(来店と購入はそれぞれ別の数字です)。つまり地図やHPで見られること自体には意味がある。けれど、そこから②③④へ何人がこぼれずに進んだかを見ないと、見られているのに取りこぼしているのか、そもそも見られていないのかが区別できません。段ごとに数えると、どこで客が抜けているかが分かります。
問い合わせを正しく数える ― ノート1冊から始める
4段のうち、整備工場が一番取りこぼしているのが②の問い合わせの記録です。電話は鳴って終わり、予約は受けて終わりで、後から「先月、新規は何件だった」と聞かれても答えられない。ここはお金も道具も要りません。ノート1冊で始められます。
- 電話・ネット予約・飛び込みを受けるたびに、新規かどうかと「何で当店を知ったか」を一言聞いて、正の字で付ける。
- 知ったきっかけは、チラシ・Googleマップ・紹介・以前から、の4つに分けるだけで十分。細かく分けすぎると続きません。
- 聞きにくければ、ネット予約フォームに「当店を知ったきっかけ」の選択肢を1つ足す。電話番号をチラシとHPで分ければ、どちらから来たかをさらに正確に分けられます。
この記録があると、月末に「チラシ経由の問い合わせは7件、うち受注4件」とまで分けられます。記録のない月は、どの集客が効いたかを誰にも判断できません。最初の1か月は数字が荒くてかまいません。続けるうちに精度が上がります。
1台いくらかかったか ― 続けるか止めるかの引き算
問い合わせと受注を数えられるようになったら、続けるか止めるかの判断は1つの引き算でできます。その集客にかけた費用を、そこから受注できた台数で割る。これが新規1台あたりの集客費用です。
- ある集客にかけた費用を出す。例:チラシ印刷・配布で月5万円。
- その集客から受注できた新規台数で割る。例:新規入庫4台なら、5万円 ÷ 4台 = 1台あたり1万2500円。
- 車検1台の粗利と比べる。粗利が上回れば続ける。下回り続けるなら、直すか止める。
たとえば車検1台の粗利が2万円なら、1台1万2500円の集客は元が取れています。これが1台3万円かかっているなら、その集客は赤字なので、配り方を変えるか止める判断になります。台数で割れない集客があるなら、それは②の問い合わせをまだ数えられていないということ。先にノートに戻ります。金額は店ごとに違うので、自店の数字で計算してください。
地図の表示回数やHPのアクセス数しか分からない集客もあります。その場合は、来店時に必ずきっかけを聞いて受注台数に紐づけます。表示が増えたのに問い合わせが増えないなら、見られてはいるが選ばれていない。ホームページの中身や見せ方の問題で、反応の出るホームページの側を直す段です。
新規より先に守る数字 ― 再来店(継続率)
新規を1台取る費用は、前の客にもう一度来てもらう費用よりずっと高くつきます。だから新規の数字を追う前に、まず守るべき数字があります。前回の車検客のうち、何台が次の車検で戻ったか。この継続率です。
2年前に車検をした客のうち、今年も戻ってきた台数を数えて割るだけです。たとえば100台のうち70台が次の車検に来たら継続率70%。これが落ちているのに新規広告を増やしても、出ていく客が増える分だけ相殺され、台数は残りません。新規集客に走る前に、車検の案内ハガキや次回の予約うながしで継続率を上げるほうが、同じ手間で残る台数が多くなります。車検の案内をいつ出すかは車検案内のタイミングにまとめました。
競合は減っていません。整備事業場はむしろ増えていて、JASPAの令和6年度調査では全国9万2384事業場、総整備売上は6兆2,561億円と3年連続で伸びています。需要も市場も伸びる中で、戻ってくるはずの客を取りこぼさないことが、新規を追うより先に効きます。
月末5分の集計 ― この数字をこの順で見る
難しい表は要りません。月末に5分、ノートの正の字を数えて、次の順で並べるだけです。多くの数字を一度に見ようとすると続かないので、見るのはこの最小限にします。
- 新規の問い合わせ件数(きっかけ別:チラシ/地図/紹介/以前から)。
- そのうち受注になった新規台数。
- 集客ごとの新規1台あたり費用(費用 ÷ 受注台数)。
- 年に一度、車検の継続率(戻った台数 ÷ 前回の台数)。
この4つを3か月並べると、伸びている集客と、お金だけ出ていく集客がはっきり分かれます。あとは弱い段に手を入れるだけです。問い合わせは来るのに受注が薄いなら見積もりや接客、見られているのに問い合わせが来ないならホームページの中身、そもそも見られていないなら地図やチラシ。数えれば、勘で続けてきた集客に白黒がつく。これが、集客の成否を見る一番安い道具です。どこに予算を寄せるかは集客予算の配分で続けて見てください。
よくある質問
集客で最初に追うべき数字はどれですか。
問い合わせの数を正しく数えるにはどうすればいいですか。
1台あたりの集客費用はどう計算しますか。
再来店の数字も見たほうがいいですか。
- 一般財団法人 自動車検査登録情報協会「わが国の自動車保有動向」(2025年3月末現在。乗用車の平均車齢9.44歳で33年連続上昇)
https://www.airia.or.jp/publish/statistics/trend.html - 一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会(JASPA)「令和6年度 自動車特定整備業実態調査結果の概要」(事業場92,384・総整備売上6兆2,561億円・3年連続増)
https://www.jaspa.or.jp/Portals/0/resources/jaspahp/member/data/pdf/R06jittaityousa.pdf - Google/Ipsos「Understanding Consumers' Local Search Behavior」(2014年調査。スマホで近くを検索した人の50%が1日以内に来店、18%が1日以内に購入。PC/タブレットでは34%が1日以内に来店。一次ページは現在閉鎖済みのため、数値は二次情報で確認)
自店の集客の数字を見てほしい
「どの集客から入庫が来ているか分けたい」「1台あたりの費用を出して続けるか決めたい」など、数字での見方の相談を受け付けます。
相談する(準備中)お問い合わせ窓口は近日開設します。